- 著者
-
山田 邦夫
乘越 亮
鈴木 克己
西島 隆明
今西 英雄
市村 一雄
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
- 雑誌
- Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.3, pp.356-362, 2009 (Released:2009-07-28)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
-
26
38
開花は園芸学的に重要な現象であるにもかかわらず,その形態学的研究に関する報告は限定されている.バラ花弁の成長発達において,いつ細胞分裂が停止し,また細胞の形態がどのように変化するのかなどは明らかとはなっていない.本研究では,バラ花弁の発達にともなう細胞形態の変化を詳細に明らかにすることを目的とした.バラ(Rosa hybrida L. ‘Sonia’)花弁を 6 つの開花ステージごとに採取した.細胞の形態の変化は,花弁横断切片を光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察し,表皮細胞数はノマルスキー微分干渉顕微鏡を用いて測定した.表皮細胞の数は開花にともない増加したが,背軸側の表皮細胞数の増加速度は向軸側に比べより早い時期から緩やかとなった.表皮細胞の面積は,開花後期のステージで,細胞数の増加と比較して著しく急激に増大していた.これは,開花後期のステージでは花弁成長は主に細胞肥大によるものであることを示唆している.開花にともない,花弁における海綿状組織の細胞は独特の肥大成長によって多くの空隙を作りだしていた.また花弁頂部側の表皮細胞では水平方向への肥大成長が著しく,特に向軸側の表皮細胞では液胞の巨大化がともなう細胞肥大が観察された.細胞肥大のパターンが花弁内の組織によって異なっていることが,バラ花弁の開花に伴う反転に寄与していると思われる.