著者
岡 秀宏 河島 雅到 清水 曉 宇津木 聡 大澤 成之 佐藤 公俊 藤井 清孝 Albert L. Jr. Rhoton
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.418-423, 2011-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,側脳室病変に必要な微小外科解剖と種々の手術アプローチについて解説した.側脳室の部分は前角,体部,三角部,後角,下角に大別され,それらの構造とともにvelum interpositumの微小解剖についても解説した.主な側脳室各部への手術アプローチは以下のとおりである.前角部および体部への手術アプローチは経前頭皮質到達法と前方経脳梁到達法である.三角部へのアプローチは主に4種類あり,lower posterior parietal lobe approach,high superior parietal lobe approach,occipital transcortical approach,そしてtranssylvian approachである.これらの中で優位半球の高次脳機能障害を防ぐために最も推奨されるアプローチは,high superior parietal lobe approachである.下角へのアプローチには経脳溝到達法や経脳回到達法がある.以上,側脳室病変に必要な微小外科解剖と各部への種々の手術アプローチについて解説した.この知識は顕微鏡手術のみでなく最近進歩している神経内視鏡手術にも重要である.
著者
田中 聡 小林 郁夫 岡 秀宏 宇津木 聡 安井 美江 藤井 清孝 渡辺 高志 堀 智勝 竹内 正弘
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.694-700, 2004-10-20

難治性の悪性グリオーマに関しては高レベルの治療上のevidenceは少ない.1997年より,広義のグリオーマ90例(low grade glioma 12 例, GradeIII glioma 30 例, glioblastoma multiforme 42 例,medulloblastoma 6例)に対してACNU耐性遺伝子であるMGMTのRT-PCRによる検出に基づいた103回の個別化補助療法(individual adjuvant therapy ; IAT)を行った.手術により摘出した-70°C凍結検体よりtotal RNA を抽出し,最初の51回は通常のRT-PCR,最近の52回はreal-time RT-PCRに代表される定量的RT-PCRによるMGMTmRNAの検出・定量を行った.MGMTの発現量が少なかった68回はACNUを,MGMTが高発現であった35回は白金製剤を治療の中心に用いた.ACNUを用いた治療群と白金製剤を用いた治療群との問に治療成績の有意差は認められなかった.全体の有効率(partial response + complete response率)は53.3%, glioblastoma 42例の2年生存率は51.1%であった.2002年4月以降にreal-time RT-PCRの結果に基づいてACNU-vincristin-interferon-β-radiationまたはcis-platinum-etoposide-interferon-β-radiationによる補助療法を行ったGradeIIIとglioblastomaで,年齢3歳以上70歳未満, Karnofsky's performance scale が50以上の初発20症例の有効率は60.0%であった.IATが高レベルのevidenceを獲得するためには,症例を選択し,統一された治療法によるrandomized controlled trialを行う必要がある.
著者
岡 秀宏 川野 信之 諏訪 知也 矢田 賢三
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.324-328, 1994-07-20
被引用文献数
1

われわれは,稀な症候性ラトケ裂嚢胞を7例経験し,それらの罹病期間と神経症状,内分泌症状および画像所見について検討した.平均年齢は46.1歳で,性別は女性が4例,男性が3例であった.臨床症状は,頭痛6例,視力・視野障害4例,下垂体機能低下を認めたもの3例であった.視力・視野障害や下垂体機能低下症状は罹病期間の長い症例に認められる傾向にあった.術前の視力・視野検査では視力・視野の異常を認めたものが5例であった.術前の内分泌検査の基礎値は,高プロラクチン血症が4例,ADHの低下が1例,部分あるいは全般的に基礎値の低下したものは2例のみに認められ,罹病期間の長い症例ほど下垂体ホルモン異常をきたしやすい傾回にあった.画像所見は,CTで等〜高吸収域を示すものが多く,MRIでは嚢胞の大きい症例ほどT_1強調画像で高信号を呈する傾向にあった.以上の結果から,罹病期間が長い症例ほど視力・視野障害および下垂体機能低下症状をきたしやすい傾向にあったことを考えると,臨床症状を有し,画像上でラトケ裂嚢胞が考えられる場合は,早期に手術操作を加え,嚢胞の開放を施行することが必要と考える.
著者
岡 秀宏 SCHEITHAUER Bernd W.
出版者
日本脳神経外科学会
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.510-518, 1999-07-15
被引用文献数
9 54

我々は、Medulloblastoma-PNETやgerm cell tumorと鑑別を要する新しい小児中枢神経系腫瘍であるAtypical Teratoid/Rhabdoid Tumor (AT/RT)の臨床病理学的特徴を検討した。AT/RTは組織学的にしばしばrhabdoid, PNET,上皮性あるいは間素系成分等の多様な組織像を示す悪性腫瘍であるため、主にPNET成分で構成されたAT/RTが後頭蓋窩に発生した場合はmedulloblastomaと、大脳半球に発生した場合はPNETと診断が困難な場合がある。一方、組織学的に上皮性あるいは間素系成分を含むgerm cell tumorとの鑑別も重要である。AT/RTの予後はmedulloblastoma-PNETやgerm cell tumorの予後より不良であるため、これらの小児中枢神経系腫瘍からAT/RTを鑑別することは重要と考え報告した。