- 著者
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谷出 康士
田坂 厚志
甲田 宗嗣
長谷川 正哉
島谷 康司
金井 秀作
小野 武也
田中 聡
大塚 彰
沖 貞明
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C3P1368, 2009 (Released:2009-04-25)
【目的】イメージトレーニングによる運動学習や運動習熟に関する研究は数多く報告されている.しかし,イメージトレーニングの筋力増強効果についての研究は少ない.そこで本研究では大腿四頭筋を対象とし,イメージトレーニングによる筋力増強効果を検討した.また,イメージ能力の高い被験者群とイメージ能力の低い被験者群との2群を設け,イメージ能力の差が筋力増強効果にどのような影響を与えるかを調べることとした.【方法】研究の実施にあたって対象者には十分説明を行い,同意を得た.対象は健常学生24人とし,筋収縮を伴う筋力増強運動群(以下,MS群),イメージ能力の低いイメージトレーニング群(以下,Ns群),イメージ能力の高いイメージトレーニング群(以下,PT群)に分類した.Biodexを用いて,膝関節屈曲60°での膝関節伸展筋力を計測した.MS群には大腿四頭筋の等尺性最大収縮をトレーニングとして行わせた.一方Ns群とPT群にはトレーニング前に運動を想起させる原稿を読ませ,上記のトレーニングをイメージさせた.4週間のトレーニング実施前後に等尺性収縮を5秒間持続し,最大値を記録した.また,全被験者に自己効力感についてのアンケート調査を実施した.統計は各群内の筋力差にt検定を,3群間の筋力上昇率の差に一元配置分散分析を行い,有意差を5%未満とした.【結果】1)筋力測定の結果:初期評価と最終評価における筋力平均値の変化は,MS群(p<0.01),Ns群(p<0.05),PT群(p<0.01)で有意に増加したが,各群間での筋力上昇率に有意差は認められなかった.2)アンケート:「トレーニングにより筋力は向上したと思うか」という問いと筋力上昇率との間に,MS群は正の相関が認められたのに対し,Ns群およびPT群では負の相関が認められた.【考察】筋力測定の結果,3群全てにおいて筋力が向上した.イメージトレーニングのみ行ったNs群とPT群においても筋力増強が認められた理由として,運動イメージを繰り返すことにより筋収縮を起こすためのプログラムが改善されたためと考える.次に,Ns群・PT群間の筋力上昇率に有意差は認められない理由として,イメージの誘導に用いた原稿が影響したと考えられる.この原稿によってイメージ能力が低いと想定したNs群でも,一定の水準でイメージを持続できていたと考えられる.原稿によるイメージのし易さは,PT群に比べてNs群で高く,Ns群は原稿の誘導を頼りにイメージを想起し,PT群とのイメージ能力の差を補った可能性が示唆された.最後に,MS群では筋力上昇率と自己効力感との間に正の相関があったが,Ns群・PT群では負の相関が認められた.イメージトレーニングのみ行ったNs群・PT群では,フィードバックが無いことで,「この練習で筋力は向上するのか」という懐疑心が強くなったと考えられる.