著者
岡崎 由佳子 片山 徹之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.151-156, 2005-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
46
被引用文献数
4 8

フィチン酸は, ミオイノシトールに六つのリン酸基が結合した化合物であり, そのリン酸基が無機質の吸収抑制に関与すると考えられ, 一般的に抗栄養因子と位置付けられている。一方, ビタミン様物質であるミオイノシトールは, 抗脂肪肝作用を有することが知られている。著者らは, フィチン酸のイノシトール骨格に着目し, フィチン酸がミオイノシトールと同様に抗脂肪肝作用を有することや, フィチン酸によるこの効果が現実に摂取しているレベル付近で発揮されることを明らかにした。また, ミオイノシトールとフィチン酸が共通して抗がん作用を有することも報告されている。さらに, 最近の研究からフィチン酸が哺乳動物細胞内における常成分で, 哺乳動物の脳に結合タンパク質が存在し, 細胞内小胞輸送に関与している可能性が考えられている。著者らは, これらの結果からフィチン酸が栄養的にみてビタミン様物質の前駆体あるいはビタミン様物質そのものとして機能しうるのではないかと考えている。
著者
岡崎 由佳子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.9-14, 2021 (Released:2021-02-27)
参考文献数
22

本研究では, 大腸内の細菌叢, 発酵産物, ムチン, 免疫グロブリンA (IgA) およびアルカリホスファターゼ (ALP) 等の因子を調節する食品因子について検討を行った。著者らは, 北海道産食品のユリネの研究をもとに, ユリネに含まれるグルコマンナン等の水溶性食物繊維や難消化性オリゴ糖が共通して, 大腸特異的にラットALP活性を増加させ, この作用に腸型ALP遺伝子 (IAP-I) の発現誘導が関与することを見出した。また, 難消化性糖質摂取による大腸ALP増加と栄養条件との関連性について検討を加え, オリゴ糖摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現上昇作用は, 摂取する脂質の種類により異なることを見出した。さらに, 難消化性糖質摂取による大腸ALP活性上昇は, これまでその増加作用が報告されていた糞中ムチン含量, Bifidobacterium spp.の割合および酪酸含量といった, 腸内環境の機能維持に関わる因子と正の相関関係にあることを明らかにし, 大腸ALP活性増加の大腸内環境機能維持への関与について考察した。
著者
岡崎 由佳子 片山 徹之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.151-156, 2005-06-10
参考文献数
46
被引用文献数
1 8

フィチン酸は, ミオイノシトールに六つのリン酸基が結合した化合物であり, そのリン酸基が無機質の吸収抑制に関与すると考えられ, 一般的に抗栄養因子と位置付けられている。一方, ビタミン様物質であるミオイノシトールは, 抗脂肪肝作用を有することが知られている。著者らは, フィチン酸のイノシトール骨格に着目し, フィチン酸がミオイノシトールと同様に抗脂肪肝作用を有することや, フィチン酸によるこの効果が現実に摂取しているレベル付近で発揮されることを明らかにした。また, ミオイノシトールとフィチン酸が共通して抗がん作用を有することも報告されている。さらに, 最近の研究からフィチン酸が哺乳動物細胞内における常成分で, 哺乳動物の脳に結合タンパク質が存在し, 細胞内小胞輸送に関与している可能性が考えられている。著者らは, これらの結果からフィチン酸が栄養的にみてビタミン様物質の前駆体あるいはビタミン様物質そのものとして機能しうるのではないかと考えている。
著者
岡崎 由佳子
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,腸内環境改善作用のある水溶性食物繊維やオリゴ糖等の発酵性難消化性糖質が共通して,高脂肪食摂取ラットの大腸ALP活性を特異的に増加させ,この増加にIAP-I遺伝子発現の誘導が関与していることを明らかにした。一方で,β-グルコシダーゼ活性については共通した影響は認められなかった。大腸ALP活性については,腸内環境改善に関わる腸管の種々の因子と正の相関関係にあることが認められた。これらの結果より,発酵性の難消化性食品因子による大腸ALP活性の増加は,大腸内環境の保全に関与する可能性が示された。