著者
野村 祐輝 夏秋 優 岡本 祐之
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.436-440, 2017 (Released:2018-06-28)
参考文献数
23

70歳代,女性。6月下旬,頸部にかゆみのある発疹が出現し,刺したと思われるアリを持参して当科を受診した。初診時,頸部にそう痒を伴う紅色丘疹が孤立性に4ヶ所認められた。そのアリは体が黒褐色,脚が赤褐色で,形態的な特徴からオオハリアリと同定し,自験例をオオハリアリ刺症と診断した。オオハリアリは尾端部に毒針を有するアリで,中国や朝鮮半島,北海道を除く日本全国に分布している。わが国でオオハリアリ刺症と診断された報告はこれまで11例あり,うち7例はアナフィラキシー症状を生じている。韓国でも在来種として,米国では外来種としてオオハリアリ刺症によるアナフィラキシーが報告されている。最近,特定外来生物であるヒアリが日本国内で発見され,その毒性や危険性が問題になっている。自験例はアナフィラキシー症状を認めず,ステロイド外用のみで軽快したが,オオハリアリは刺されるとアナフィラキシーを起こす可能性のある身近なアリであると認識することが重要である。(皮膚の科学,16: 436-440, 2017)
著者
岡本 祐之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

ヒトおよびラット皮膚においてiNOSが誘導されNOが産生されることが明らかとなった。乾癬をはじめ、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、水疱症、膠原病などの炎症性皮膚病変においてiNOSが表皮ケラチノサイトに発現されていることが認められたが、iNOSの発現様式は疾患によって異なっていた。乾癬ならびにアトピー性皮膚炎の表皮におけるiNOS発現の推移を調べると、ステロイド外用剤による治療によって皮膚症状の改善とともにiNOS発現の低下が観察された。2種類の実験的接触皮膚炎、すなわちアレルギー性および一次刺激性皮膚炎では、表皮におけるiNOS発現に明らかな差は観察されなかった。紫外線皮膚炎におけるNO関与では、少量の紫外線(UVB)照射によりケラチノサイトはNOの産生上昇を示した。マウスに紫外線照射を行い、照射前または照射後にNOSの阻害剤であるL-NAMEを腹腔投与し耳介腫脹を日焼け細胞数を測定すると、腫脹の程度および日焼け細胞数ともL-NAMEの投与により抑制された。一方、紫外線のマウス接触アレルギー反応抑制作用に対する効果を検討すると、L-NAME投与は紫外線の抑制作用に影響を示さなかった。今回の研究において、NOは紫外線の皮膚に対する直接障害に関与するものの、紫外線が及ぼす免疫反応には効果が認められないことが示された。アトピー性皮膚炎患者よりリンパ球を採取し、ケラチノサイトと混合培養しそのNO産生への影響を調べると、ケラチノサイトからのNO産生がアトピー性皮膚炎患者リンパ球では正常人リンパ球に比べて有意に増強することが認められた。以上の実験結果より、紫外線をはじめとする種々の起炎刺激に対して生じる皮膚炎や炎症性皮膚疾患にNOが関与していることが示唆された。
著者
岡本 祐之
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.47-51, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
24

サルコイドーシスの皮膚病変の基本的治療は副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)の外用であるが,強力な薬剤でも効果がないことがある.そのため,ステロイド以外の局所あるいは全身療法が試みられている.タクロリムス軟膏はステロイド外用薬の副作用が出やすい顔面の皮疹に対し推奨されたアトピー性皮膚炎治療薬であり,顔面に好発するサルコイドーシスの皮膚病変に対しても有用な症例が経験される.光線療法ではnarrow band UVB療法やターゲット型エキシマライト,光線力学療法が多くの肉芽腫症に有効であることが報告されている.一方,全身療法ではミノサイクリンの有効例が蓄積されているが,皮膚病変に対する有効性が他の臓器病変に対する有効性よりも高いと認識されている.TNF-α阻害薬は諸外国でサルコイドーシスに対する有効性が報告されているものの,paradoxical reactionによって関節リウマチ,Crohn病などの治療中にサルコイドーシスが誘発されることがあり,その誘発機序の解明が待たれるところである.皮膚病変の主な治療に関する最近のトピックスについて概説した.
著者
加藤 典子 河本 慶子 橋本 洋子 為政 大幾 岡本 祐之 堀尾 武
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.244-248, 2005 (Released:2011-05-17)
参考文献数
41

64歳,女性。合併症として橋本病があり,平成14年3月より両手掌に鱗屑を伴う紅斑が出現した。尋常性乾癬と診断されエトレトナート内服,マキサカシトール軟膏の外用を開始したが,皮疹は拡大し、5月末には頭部に脱毛斑が出現した為,当科を受診した。入院の上,PUVA療法を開始し,内服PUVA療法を計28回,計130.5J/cm2照射し,終了時には乾癬,円形脱毛症ともに略治状態となった。尋常性乾癬の病態形成にT細胞性自己免疫が関与することが注目されており,他の自己免疫疾患との合併例が報告されている。本症例は橋本病と円形脱毛症を合併しており,異なる自己抗原に対する細胞性免疫が惹起された結果,3疾患を発症した可能性が考えられた。