著者
大貫 雅子 橋本 洋子 堀尾 武
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.505-510, 1996 (Released:2010-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

42歳, 男性。体温上昇時, 精神的緊張時に強度の痛みとともに生じる皮疹を主訴に受診した。温熱負荷および運動負荷により紅斑と粟粒大の膨疹が誘発され, 皮疹出現時の発汗低下が確認されたことより, 減汗性コリン性蕁麻疹と診断した。組織学的には発汗低下の要因となるような機質的変化はみとめられず, 連日の運動負荷による発汗の促進誘発により症状の軽快が得られた。本疾患の病態形成機序は十分解明されていない。自験例では, 誘発時の血中ヒスタミン値の有意な上昇はみられなかった。また, 内服PUVA療法により皮疹形成は抑制されたが痛みは改善しなかったことから, 両者に関与するメディエーターは異なる可能性が示唆された。
著者
北村 浩之 井関 宏美 三家 薫 堀尾 武
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.1465, 1998 (Released:2014-08-19)
被引用文献数
1

分娩に際してゴム手袋を使用した医師の内診を受け,アナフィラキシーショックをおこした29歳女性の症例を報告する.内診直後より,全身に痒み,紅斑,膨疹を生じ,悪心,嘔吐,血圧低下,胎児徐脈を認め緊急帝王切開にて出産した.精査の結果,腟粘膜より吸収されたラテックスによるアナフィラキシーショックと判明した.ラテックスの水溶性蛋白によるIgE-mediated allergyにより引き起こされる即時型アレルギーは多彩な症状を示し,なかでもアナフィラキシーショックのような重篤な症例も多数報告されている.本症が分娩中に起こることは,母体のみならず胎児にも大きな影響を及ぼすためその予防は重要な課題である.分娩中の発症は,海外では数例の報告をみるが本邦ではわれわれが調べ得る限り第1例であったので報告する.
著者
速水 淳史 山脇 光夫 堀尾 武
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.175-178, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
16

炎症性辺縁隆起性白斑は尋常性白斑の1症状または1亜型と一般的に考えられており, 発症機序に関してはいまだ定説はないが, 細胞性免疫の関与が強く示唆される。症例は61歳, 男性。前胸部に環状紅斑が出現し拡大傾向にあったため受診された。初診時, 左頚部に不整形脱色素斑とそれを取り囲むように境界不明瞭な浮腫性紅斑及びその近縁に白斑を伴わない淡い紅斑も認めたため, 炎症性辺縁隆起性白斑と診断した。ステロイド内服, 外用にて治療を行い, 治療開始後約3週間で白斑辺縁部の紅斑は消失し, 白斑の辺縁も不鮮明となってきた。このことより早期に炎症症状を消退させることが白斑の新生を抑える上で重要であると思われる。
著者
加藤 典子 河本 慶子 橋本 洋子 為政 大幾 岡本 祐之 堀尾 武
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.244-248, 2005 (Released:2011-05-17)
参考文献数
41

64歳,女性。合併症として橋本病があり,平成14年3月より両手掌に鱗屑を伴う紅斑が出現した。尋常性乾癬と診断されエトレトナート内服,マキサカシトール軟膏の外用を開始したが,皮疹は拡大し、5月末には頭部に脱毛斑が出現した為,当科を受診した。入院の上,PUVA療法を開始し,内服PUVA療法を計28回,計130.5J/cm2照射し,終了時には乾癬,円形脱毛症ともに略治状態となった。尋常性乾癬の病態形成にT細胞性自己免疫が関与することが注目されており,他の自己免疫疾患との合併例が報告されている。本症例は橋本病と円形脱毛症を合併しており,異なる自己抗原に対する細胞性免疫が惹起された結果,3疾患を発症した可能性が考えられた。