著者
岡本 秀明 岡田 進一 白澤 政和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.504-515, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
33
被引用文献数
28

目的 大都市に居住する高齢者の社会活動に関連する要因を,身体,心理,社会・環境的な状況から総合的に検討することを目的とした。方法 大阪市に居住する65~84歳の高齢者1,500人を,選挙人名簿を用いて無作為に抽出した。調査は,自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。有効回答数771人(51.4%)のうち,代理回答および IADL 得点が 0 点の者を除外したため,分析対象者は654人となった。社会活動は,個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動,仕事という 4 側面を捉える社会活動指標を用いて測定した。分析は,社会活動の 4 側面それぞれを従属変数,基本属性,身体,心理,社会・環境的な変数を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。結果 ロジスティック回帰分析を行った結果,個人活動が活発な者の特性は,外出時のからだのつらさがない,親しい友人や仲間の数が多い,活動情報をよく知っている,活動情報を教えてくれる人がいる者であった。社会参加・奉仕活動では,地域社会への態度の得点が高い,平穏でのんびり志向の得点が高い,親しい友人や仲間の数が多い,外出や活動参加への誘いがある,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。学習活動では,地域社会への態度の得点が高い,外出や活動参加への誘いがある,活動情報をよく知っている者であった。仕事では,変化や新しさを伴う活動的志向の得点が高い,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。結論 高齢者の社会活動には,身体,心理,社会・環境的な要因が幅広く関連していた。高齢者が社会活動に参加しやすい社会を構築していくためには,地域における仲間づくりや共通の関心を持つ者同士が出会ったり共に活動したりしやすいような支援や,地域の委員等が活動参加を適度に促すことなどが求められる。また,個人の側も高齢期以前から地域の活動に関心を持つなどの努力が必要であろう。
著者
坂田 実花 岡本 秀明 MIKA SAKATA Hideaki OKAMOTO
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.67-79, 2009-03

本研究では、市川市の高齢者が現在の居住している住宅に対してどのような意識を持っているのか、高齢者が感じる住生活上の問題点および住宅改善の希望内容を整理することで、全体的な傾向を明らかにすることを目的とした。分析対象は、市川市で実施したアンケート調査で「現在お住まいの住宅で、年齢を重ねるにつれ、使いづらくなった点や困っている点、改善したい点を、ぜひ教えて下さい」と自由記述により回答を求め、この質問に関係する回答が記入されていた134票とした。 調査の結果、市川市の高齢者は自宅に対して①「住宅、設備による問題点と改修希望」と、②「その他の住環境に関連した問題点と改善希望」を有していることが明らかとなった。「住宅、設備による問題点と改善希望」では、「階段」、「浴室」、「居室・廊下」で問題点と改善希望が多くあげられた。問題点と改善希望の主な内容は、「階段昇降の負担」、「段差解消」、「手すり取付け」であった。「その他の住環境に関連した問題点と改善希望」については、「日照」、「防災・防犯」、「改修困難」、「生活継続不安」の4点があげられた。 以上のことから、市川市の高齢者が住み慣れた自宅で可能な限り安全かつ安心な生活を継続するためには、第1に普遍的な住宅のバリアフリー化を進めるとともに、個々人の身体状況や住宅状況に適した住宅改修の推進を行うこと。第2に介護保険などのバリアフリー化を進める住宅改修制度で対応することが出来ない問題点については、ニーズに合致した制度の充実、情報提供、利用促進が必要とされる。