著者
橋本 卓也 岡田 進一 白澤 政和
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.105-117, 2008-02-29

障害者の生活史を通してセルフ・エンパワメントの生成要因を分析している研究は少ない.この論文では,自立生活を送る(計画している障害者1人を含む)6人の重度障害者の生活史に焦点をあてた質的研究に基づき,彼らのポジテイヴな心理的変容と内的成長の視点からセルフ・エンパワメントの生成要因について分析を行った.その結果,(1)価値の転換,(2)感情の共有,(3)自尊感情の醸成,(4)問題解決能力の獲得,(5)自己の障害と向き合う力の獲得,(6)物事の遂行能力に関する自信,(7)物事を相対的にとらえる力が析出された.また,これらの要因は,環境との相互作用を通して獲得されたセルフ・エンパワメントの個人的・心理的生成要因であり,社会的・政治的パワーを獲得していく促進要因でもあることが明らかになった.重度障害者
著者
岡本 秀明 岡田 進一 白澤 政和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.504-515, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
33
被引用文献数
28

目的 大都市に居住する高齢者の社会活動に関連する要因を,身体,心理,社会・環境的な状況から総合的に検討することを目的とした。方法 大阪市に居住する65~84歳の高齢者1,500人を,選挙人名簿を用いて無作為に抽出した。調査は,自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。有効回答数771人(51.4%)のうち,代理回答および IADL 得点が 0 点の者を除外したため,分析対象者は654人となった。社会活動は,個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動,仕事という 4 側面を捉える社会活動指標を用いて測定した。分析は,社会活動の 4 側面それぞれを従属変数,基本属性,身体,心理,社会・環境的な変数を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。結果 ロジスティック回帰分析を行った結果,個人活動が活発な者の特性は,外出時のからだのつらさがない,親しい友人や仲間の数が多い,活動情報をよく知っている,活動情報を教えてくれる人がいる者であった。社会参加・奉仕活動では,地域社会への態度の得点が高い,平穏でのんびり志向の得点が高い,親しい友人や仲間の数が多い,外出や活動参加への誘いがある,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。学習活動では,地域社会への態度の得点が高い,外出や活動参加への誘いがある,活動情報をよく知っている者であった。仕事では,変化や新しさを伴う活動的志向の得点が高い,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。結論 高齢者の社会活動には,身体,心理,社会・環境的な要因が幅広く関連していた。高齢者が社会活動に参加しやすい社会を構築していくためには,地域における仲間づくりや共通の関心を持つ者同士が出会ったり共に活動したりしやすいような支援や,地域の委員等が活動参加を適度に促すことなどが求められる。また,個人の側も高齢期以前から地域の活動に関心を持つなどの努力が必要であろう。
著者
蘇 珍伊 岡田 進一 白澤 政和
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.124-135, 2007-02-28 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
3

介護職員の仕事の有能感に関連する要因について人間関係に焦点をあてて検討した.調査対象は,介護職員400人であり,自記式調査票を用いた郵送調査を待った.人間関係は,利用者との関係や職場内のソーシャルサポート,職場内の全体的な人間関係を設定し,仕事の有能感は,業務の達成,能力の発揮・成長,仕事上の予測・問題解決の領域でとらえた.重回帰分析の結果,介護職員の仕事の有能感の3つの領域すべてにおいて,利用者との肯定的関係との強い関連が示された.また,業務の達成は,職場内の全体的な人間関係がよいほど高く,能力の発揮・成長は,上司と同僚からのサポートを受けているほど高かった.さらに仕事上の予測.問題解決は,勤務年数が長く,上司からのサポートを受けているほど高かった.これらのことから,介護職員が利用者との良好な関係づくりや職員同士で支え合うサポート関係づくりができるように支援することが求められる.
著者
岡田 まり 栄 セツコ 前田 信彦 三品 桂子 岡田 進一 大山 博史
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成18年度には、精神障害者のQOL等を大学生との比較を通して把握し、それに影響を及ぼす要因を明らかにするために平成17年度に実施した量的調査のデータを再分析した。これは、調査票の回収が遅れた27名分(精神障害者20名、大学生7名)のデータが平成17年度の分析に含まれていなかったため、これらのデータを追加して改めて分析を行ったものである。結果は、17年度の結果と同じで、精神障害者のQOLや生活満足度等は、不安や怖れなど一部の質問をのぞき、ほとんど大学生よりも低く、生活満足度、自己決定、希望がQOLに有意に関連していることが明らかになった。また、平成17年度に、QOL向上のきっかけやプロセス等を明らかにするために精神障害者、家族、専門職を対象に行った面接調査の結果についても、平成16年度より行ってきた国内外の専門職へのヒアリングや視察、ワークショップで得られた情報を加えて、再度、整理しなおした。これら当事者、家族、専門職ら計50名以上の経験や研究によると、重度の精神障害者であっても、適切な支援があれば地域での生活が可能であり、回復の可能性があること、必要な支援の内容としては、住居の確保、経済援助、就労支援、日常生活支援、家族支援、近隣の人々の理解と良好な関係維持のための支援、ピアサポート、新たな体験や活動のための支援と意欲・希望・自信を支えることなどである。これらの結果から、精神障害者のQOL向上のための取り組みがもっと必要であり、そのためには、個別支援および環境への働きかけなど、さまざまな支援を重層的におこなう必要があるとの結論に達し、サービス提供のあり方についての提言を行った。