著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-31, 2017-03-31

本稿では主として大学における社会福祉教育とそのもとでの社会福祉専門職教育とともにその中核をなすソーシャルワーク教育の相互関係を福祉臨床論の視点から取り上げる。とくにわが国の大学教育としての社会福祉教育の歴史的な蓄積は、1987 年及び1997 年の両国家資格制度の導入以後、職業教育としての社会福祉専門職教育が「読み替え」を通し、大学教育の中核に導入されることによって大きな変容を見せている。そこでは国家試験出題基準を強く意識した指定テキスト教育の強化によりあたかもテキスト科目の知識の取得がカリキュラムを通してソーシャルワーカーになるかも知れない学生の唯一の目標になりかねない危惧を見せている。そこには歴史的に形成発展してきた社会福祉の社会的機能やそれらの基礎となる社会福祉の哲学、思想や社会や人への理解を深める学問の軽視がある。ここではそうした現実を踏まえ、特にわが国での「不幸な出会いともいえる社会福祉教育とソーシャルワーカー教育」1)のもと、いかに大学での社会福祉教育の一環としてのソーシャルワーク教育を進めていくのか、ソーシャルワークプロセス構造を取り上げ検証する。その際、「物語の中のソーシャルワーク」という視点、方法をとる。物語(ナラティブ)ソーシャルワークプロセス福祉臨床論福祉援助専門職教育
著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.14, pp.75-95, 2018-03

本論文はわが国の精神保健医療福祉領域において1970年代以後,喫緊に求められる法制度改革について,国際的な脱施設化を軸とする精神科医療改革の進展を踏まえ,その基底となる目指す社会の構成について「多元的循環型社会」の視点から「暮しの場所とその質」を問う,まちなかケアについて明らかにしようとするものである。これらは筆者らがこの数年,取り組んできた「精神保健医療福祉領域におけるシステム要素の変更と軸の移動」という研究課題の次なる課題設定であり,いわゆる「脱施設化」から「脱制度化」論への進展を踏まえ制度,政策議論としては課題の緊急性の中,多様な参加者のもとなかな進まないわが国での議論の閉塞状態への新たな提案をもつものである。それは歴史的展開での諸外国における新たな精神保健医療福祉領域での「内」と「外」の議論と意味の解明であり,同時に後期近代における新たな価値,文化としての多様性や共生,包摂に関わる検討でもありその根底には近代社会の発展と共に常に内包される排除の論理をいかに克服するのかといった意図をもつものである。多元的循環型社会脱制度化排除の論理政治の時代まちなかケア
著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.69-84, 2016-03-31

1970年代における急速なグローバル化と経済的危機の進展以後、財政的赤字を背景に「大きな政府」から「小さな政府」への移行が求められてきた。いわゆる後期近代における「福祉国家の近代化」にどう対応していくのか。社会福祉の社会的機能の見直しが求められている。ここでは2014年ソーシャルワークのグローバル定義の見直しの中、ヨーロッパを中心に語られるソーシャルワークの危機を手がかりに新しい多元的な福祉供給体の位置づけと、そのもとでの方法としてのソーシャルワークの機能と手続きについて検証をしてみたい。その際、福祉臨床という視点と立場をとることを通して「福祉臨床論」構築の足がかりとしたい。福祉臨床論福祉国家の近代化多元的福祉国家ソーシャルワーク