著者
岡村 逸郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.110-123, 2013-10-15

本論は,犯罪被害者を「こちら側」だとし「自分が犯罪被害者になりえる」という形で人々の不安を表象する新聞報道の言説に注目する.そして,その言説がどのような過程で成立したのかについて明らかにする.この言説の成立過程には,「犯罪被害者等給付金の支給に関する法律」が成立するまでの通り魔言説が大きく関わっていた.本論はその過程を分析することを通して,三菱重工ビル爆破事件と「通り魔的」という言葉の誕生が現在の犯罪被害者問題の起源であることを明らかにする.
著者
岡村 逸郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.87-99, 2015-10-30

本稿の目的は,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説が,犯罪被害者救済に従事してきた被害者学者によってなぜ形成されたのか明らかにすることである.分析の対象は,被害者学,刑事法学,ないし刑事政策を専門とする学者の論文・著書である.精神科医は,「専門家」が救済対象を選別することによって,救済者-被害者関係を「対等」でないものとして捉えることが,さらなる2次被害ひいては3次被害を被害者に与える加害行為だと批判した.2次被害の概念は,被害者学者がこれまでおこなってきた救済の活動を加害行為に反転させてしまうという意味で,かれらにとってネガティブな側面をもった.被害者学者は,このネガティブな側面が精神科医の対抗クレイムによって顕在化したために,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説を形成した.
著者
岡村 逸郎
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.27, pp.25-36, 2014-09-10 (Released:2015-09-01)
参考文献数
38

This paper's two questions are: (1) How the discourse of Oya Minoru, who tried to establish crime victims as subjects of rights for the first time, constituted a way of thinking that connected the rights of crime victims to those of potential crime victims, and (2) how his discourse created a field of discourse around crime victim relief.Oya Minoru's discourse produced a field of discourse, in which, on the one hand, all civilians, as potential crime victims, were to be involved in the problems of crime victims, while, on the other hand, the people who had the right to receive crime victim relief were to be screened on an urgent basis. Finally, this discourse became the starting point for the discourse about crime victim relief and support that followed.
著者
岡村 逸郎
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.31, pp.12-23, 2018-08-25 (Released:2019-08-29)
参考文献数
45

This paper reveals two specializations of legal scholars engaged in crime victims support in Japan by examining how their specializations are formed through their practice of restorative justice, and the dilemmas in their specializations. The first specialization, which is based on restorative practices, held dilemma in both theory and practice. The second specialization was found in the institutionalization of criminal justice. This specialization held dilemma in both a moderate degree of institutionalization and a strong degree of institutionalization. Both of these specializations were formed through multiple commitment of legal scholars to restorative justice with the above two dilemmas.
著者
岡村 逸郎
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.132-153, 2016-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
53

本稿の目的は,小西聖子が犯罪被害者支援に携わる精神科医としての「専門性」をいかにして形成したのかを,精神的被害の管轄権とケアの非対称性に注目して明らかにすることである. 小西は,第1 に,法学者や法律の実務家というほかの領域の専門職が2 次被害を予防するために精神的被害を理解する必要があるとしたうえで,法的な枠組みにおいてとりこぼされる精神的被害を測定することによって,「専門性」を担保しようとした.第2 に,精神科医―クライエント間の関係の非対称性が露呈することによって生じる2 次被害を予防しながらも同時に治療効果のある,有効な治療法を洗練することによって,「専門性」を担保しようとした. 以上の2 つの「専門性」は,誰に対する「専門性」なのかという点と,精神科医の加害者性が問題になるか否かという点において,異なる水準のものだった.しかしそれらが組み合わさることによってこそ,カウンセリングの実務に従事しつつも法制定を求めるかたちで犯罪被害者支援に携わる,精神科医の「専門性」が形成された. 本稿は,これらの2 つの「専門性」に注目することで,犯罪被害者支援の基盤をつくった精神科医の活動がいかにして可能になったのか明らかにした.そのことによって,先行研究によって十分に検討されてこなかった,犯罪被害者を対象にする福祉実践の基盤の歴史的な形成過程を明らかにした.
著者
岡村 逸郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.87-99, 2015-10-30 (Released:2017-04-30)

本稿の目的は,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説が,犯罪被害者救済に従事してきた被害者学者によってなぜ形成されたのか明らかにすることである.分析の対象は,被害者学,刑事法学,ないし刑事政策を専門とする学者の論文・著書である.精神科医は,「専門家」が救済対象を選別することによって,救済者-被害者関係を「対等」でないものとして捉えることが,さらなる2次被害ひいては3次被害を被害者に与える加害行為だと批判した.2次被害の概念は,被害者学者がこれまでおこなってきた救済の活動を加害行為に反転させてしまうという意味で,かれらにとってネガティブな側面をもった.被害者学者は,このネガティブな側面が精神科医の対抗クレイムによって顕在化したために,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説を形成した.