著者
岡林 寿人 横山 秀徳 田名部 雄一
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.116-122, 1999-03-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
6

日本在来アヒルのアオクビアヒルとナキアヒルの血液タンパク質多型について分析し,その遺伝子構成を他のアジア在来アヒル(ペキン,白色ツァイヤ,改良大阪,インドネシア在来アヒル,ベトナム在来アヒル)やマガモと比較した。水平式デンプンゲル電気泳動法ならびに水平式ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により多型を分析した血液タンパク質はこれまでに多型が見いだされている次の10種類である。血漿エステラーゼ-1(Es-1),血球エステラーゼ-3(Es-3),血球エステラーゼ-4(Es-4),血球エステラーゼ-D2(Es-D2),血漿ポストアルブミン-1(Pa-1),血漿ポストアルブミン-4(Pa-4),血漿ポストアルブミン-1(Ptf-1),血漿ホスフォヘキソースイソメラーゼ(PHI),血球酸性ホスファターゼ-2(Acp-2)および血漿ロイシンアミノペプチダーゼ-2(LAP-2)。ナキアヒルにおいては他のアヒルに比べて,Pa-1BおよびLAP-2Aの頻度がやや高い傾向を示し,Ptf-1BおよびEs-4Aが低い傾向を示した。アオクビアヒルにおいても他のアヒルに比べて,LAP-2Aが高い傾向を示し,PHIAおよびEs-4Aが低い傾向を示した。品種間の遺伝的距離を基に枝分かれ図を描いた。また遺伝子頻度の分散共分散行列による主成分分析を行い,第一~三主成分得点による三次元の散布図を描いた。これらにより,アオクビアヒル,ナキアヒルともにペキン種,白色ツァイヤ,改良大阪種などで構成される東北アジア在来アヒルのクラスターに属することが示された。また,アオクビアヒルはこのクラスターの中の白色ツァイヤと特に近く,ナキアヒルとは比較的遠い関係にあり,一方ナキアヒルはこのクラスターの中ではマガモ(1)やペキンと比較的近い関係にあることが示された。
著者
田名部 雄一 岡林 寿人
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.インドネシアの在来件犬について調査した。バリ島で3ケ所から100頭、カリマンタン島で5ケ所から100頭を採血し,血液タンパク質の多型を主に電気泳動法により調査した。また外部形態についても調べた。インドネシア在来犬の外部形態は一定していない。赤、黒、白などの単色の他、赤虎、黒虎、黒ゴマなどが多い。全て立耳で殆ど差尾であった。吻は長く、ストップは極めて浅い。舌斑はカリマンタン島では61.6%と高く、バリ島では7.2%と少ない。小型で体高36〜41cm、体長39〜44cmであった。血球グルコースホスフェイトイソメラーゼ(GPI)に今までに知られていないGPI^C、GPI^Dの多型がかなり高い頻度で認められた。GPI^Dはモンゴル在来犬にも低い頻度で存在する。東北アジア犬に独特の遺伝子であるとみられていたヘモグロビンA(Hb^A)は、インドネシア在来犬ではHb^Aに固定されていた。もう1つ東北アジア犬に独特の遺伝子ガングリオシドモノオキシゲナーゼg(Gmo^g)インドネシア在来犬では極めて低く、カリマンタン島の犬では皆無であった。このようにインドネシア在来犬には、東北アジア犬の特色をも持っていた。主成分分析を行った所、インドネシア在来犬はモンゴル在来犬と近く、韓国在来犬とは遠い距離にあった。このことからインドネシア在来犬が直接琉球列島を経て日本列島に入った可能性は低い。インドネシア在来犬とモンゴル在来犬の間には、かつて相互に遺伝子の交流があった可能性がある。2.モンゴルに生息するオオカミのさらに追加して調べた所、Hb^Aの頻度は0.875、Gmo^gの頻度は0.293となった。この2つの遺伝子はアジア犬に高い頻度で見出される遺伝子であるが、ヨーロッパ犬では低い。また、インドオオカミやヨーロッパオオカミには見出されない。このことからアジア犬の成立には、東アジアにいるオオカミ(Canis lupus chanco)の遺伝子の流入の可能性が高い。