著者
篠崎 史郎 松沢 幸範 須沢 和美 山口 伸二 岡田 和義 早野 敏英 吉川 佐知子 藤本 佳作 小林 俊夫 関口 守衛
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.1034-1039, 1993-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は37歳の男性. 昼間の傾眠および家人に睡眠時呼吸停止を指摘され, 精査目的で入院した. 終夜睡眠ポリグラフの結果無呼吸指数 (Apnea Index, AI) は57.5と高値を示し, 混合型と閉塞型無呼吸が優位の上部気道閉塞型の睡眠時無呼吸症候群 (SAS) と診断された. 背臥位と側臥位における体位別の検討を行った結果, AIは背臥位82.4に比べ, 側臥位では5.9と著明に低く, 無呼吸時間, SaO2の最低値, 睡眠の質はいずれも側臥位で著明に改善していた. 7kgの減量後の終夜ポリグラフの再検の結果, AIは33.2と著明な改善を示した. しかし体位別には背臥位77.3側臥位3.8とそれぞれ軽度の改善にとどまっており, AIのみかけ上の改善は側臥位睡眠時間が相対的に増加したための結果と考えられた. 上部気道閉塞型のSASには, その診断および治療効果判定に, 睡眠体位を考慮すべき症例が存在すること, また側臥位睡眠そのものが治療の一つになり得る可能性を示す重要な症例と考えられる.
著者
保本 孝利 中 徹 實延 靖 北川 雅巳 中村 晋一郎 岡田 和義 横山 大輔 速水 明香 谷山 貴宏 中嶋 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3145, 2009

【目的】スパズムが生じた筋に対して圧迫によるストレッチ(PS)を加えると,スパズムが緩和することはよく経験するところである.しかし PSを施行する際の有効な施行時間についてはあまり明らかではない.そこで今回,筋スパズム緩和に有効なPS施行時間について,筋硬度,筋組織酸素飽和度(StO<SUB>2</SUB>)などの諸点から比較検討したので報告する.<BR><BR>【方法】対象は立ち仕事の多い健常成人男性6名(29.0±4.2歳)とし,就業後に同一施術者が被検者の腓腹筋中央部に対してPSを腹臥位にて行った.PS時間は10,20,30,60秒とし,各施行は異なる日に行った.各施行の直前,直後,一時間後に,筋硬度,StO<SUB>2</SUB>,組織内ヘモグロビン量(Total Hb)を測定した.筋硬度はASKER社製・DUROMETERを,StO<SUB>2</SUB>およびTotal Hbは近赤外線分光器(オメガウェーブ社製,BOM-L1TR)を用いた.併せて,足関節の背屈のROMを用手計測,筋疲労度(MF)を主観的評価VASにて調べた.統計処理にはフリードマン検定を使用し有意水準5%とした.なお,全ての被験者には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で実施した.<BR><BR>【結果】筋硬度については10,20秒では変化がなく,30秒では,直後で減少(p<0.05)し,一時間後は直前の状態に戻った.60秒の場合は,直後で減少(p<0.01)し,一時間後は直前よりも減少傾向(直前や直後との間に有意差が無い状態)にあった.StO<SUB>2</SUB>は全ての施行時間で直後に増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後は直前の状態に戻った.Total Hbは全ての施行時間で変化は無かった.ROMは直後で増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後では直前の状態に戻る傾向にあった.MFは全ての施行時間で直後のみ減少(10,20,60秒:p<0.01,30秒:p<0.05)した.<BR><BR>【考察】筋スパズム緩和に有効なPS施行時間としては,筋の柔軟性を短期的に向上させるには30秒間が必要であること,60秒間では施行直後に筋の柔軟性を持続させる可能性があることが今回の研究により示唆された.また,結果は以下についても示唆している.1-筋の柔軟性の変化は血流動態のみで規定されない.2-下腿三頭筋へのPSは短期的に足関節背屈の可動域を増加させる可能性はあるが,持続効果は無い.3-PSは刺激時間に関係なく施行直後に心的なリラクセーションを与える.