著者
矢守 克也 岡田 夏美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2217, (Released:2023-05-18)
参考文献数
31

本研究は,既存の質問紙調査研究やそのデータをメタレベルの視点から考察する立場に立って,防災・減災に関する実践・実務に対して,これまで欠落・不足していた長期的かつ俯瞰的な観点を与え,あわせて,質問紙調査法に新たな視点を提供することを目的とした。特に,単一の調査研究から得られた結果だけではなく,複数の調査研究の方法や結果を俯瞰的に総覧することで,新たな洞察が得られる場合があることを指摘した。具体的には,第1に,日本社会における家庭での防災対策を具体的なトピックとして取りあげ,質問紙調査から得られるデータを読み解く際の〈ベンチマーク〉や〈ベースライン〉の重要性について論じた。第2に,「自助・共助・公助」というフレーズを取りあげ,「自助・共助・公助」をめぐる葛藤や矛盾を十分に把握するためには,一つには,調査の結果ではなく,調査の形式(設問の立て方)に注目する必要があること,また,もう一つには質問紙調査を通して主として〈平均化〉の論理によって得た知見を,それ単体としてではなく,〈極限化〉の論理を通して別途得た知見とリンクさせて総合的に理解することが重要であることを明らかにした。
著者
岡田 夏美 矢守 克也
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.241-256, 2019 (Released:2019-12-23)
参考文献数
39

近年,わが国では,学校防災教育への期待が高まっている。学校防災教育の推進のための議論には,“何を教えるべきか”,という政策的な“規範論”と,教師の側の“現実論”が存在する。 そうした議論をさらに整理すると,4つのフレームワークが存在することがわかった。すなわち,1防災の教科化,2総合的な学習の時間での実施,3既存の教科での実施,4教科横断的な実施,である。本稿では,それら4つのフレームワークに対して行われている議論や,調査の結果などをもとにして,それぞれのフレームワークが,防災教育の“規範論”と“現実論”の 共存を目指す中で,どのように評価できるかを考察した。本稿では,クロスカリキュラムの概念のもとでの防災教育の展開が,今後の学校教育現場において必要であることを結論とした。