著者
福島 道広 中村 有美 李 スルギ 土平 洋彰 小林 由佳 川上 秋桜 岡田 朋子 島田 謙一郎 韓 圭鎬 Fukushima Michihiro Nakamura Yumi Lee Seulki Tsuchihira Hiroaki Kobayashi Yuka Kawakami Sakura Okada Tomoko Shirmada Ken-ichiro Han Kyu-Ho
出版者
日本消化吸収学会
雑誌
消化と吸収
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.202-215, 2011-03-31

今回、我々は北海道十勝で生産された豆類やジャガイモ、新規作物として栽培開発を行っているチコリから難消化性糖質を分離、そのプレバイオティクス効果について検証した。豆類では、澱粉の構造がレジスタントスターチタイプ2であり、この澱粉が加熱調理加工過程でタイプ3の老化澱粉とタンパク質の被膜が形成されることにより、消化性が低下する可能性が見い出された。その結果、ラットの盲腸内で酸発酵が増進し、短鎖脂肪酸の上昇とpHの低下が認められ、腸内環境を改善させることが明らかとなった。さらに、十勝の特産物であるジャガイモもエステル結合したリン酸基を持つ澱粉であり、レジスタントスターチタイプ2に分類される。この澱粉も加熱調理加工することによりタイプ3の老化澱粉が増加する可能性がある。このジャガイモ澱粉がラット盲腸内で短鎖脂肪酸量を増加させ、特に酪酸の総短鎖脂肪酸に対する比率の上昇は消化を刺激して、糞便重量を増加させることが明らかであり、酪酸の好材料であることが確認された。また、チコリ由来のイヌリンについても、十勝イヌリンがin vivoおよびin vitro研究で盲腸内微生物叢、特にLactobacillusおよびBifidobacteriumレベルを上昇させ、総短鎖脂肪酸濃度も増加させることが明らかとなり、従来の報告と一致していた。以上の結果より、豆類およびジャガイモのデンプンにはレジスタントスターチの作用を有しており、また十勝で新規に栽培したチコリ由来のイヌリンにも腸内改善効果が認められ、機能性糖質としてプレバイオティクス作用を持つことが明らかとなった。This report describes our recent studies evaluating the prebiotic effects of indigestible sugar separated fromtraditionally cultivated beans and potatoes as well as newly developed chicory harvested in the Tokachi area,Hokkaido,Japan. The results indicated that the structure of starches in beans can be categorized as resistant starch type 2 (RS2). Rats were found to have reduced digestibility of beans,probably due to the conversion ofRS2 to resistant starch type 3(RS3,retrograded starch) as well as interaction with denatured protein formed during the heating process. The study also found that intake of beans facilitated cecal acid-fermentation in rats,increased short chain fatty acid levels,and lowered pH. Consequently,intake of beans was found to beeffective in improving the balance of intestinal flora. Potatoes contain starch composed of esterified phosphorusas well as RS2,which is likely converted to RS3 during the heating process. Administration of potato starch also increased cecal short chain fatty acid levels,particularly lactic acid. Theincreased production of lactic acid was found to facilitate digestion,resulting in increased amounts of fecal matter. Inulin derived from chicory harvested in Tokachi area was also found to be effective in improving fecal fermentation,especiallyby increasing Lactobacillus and Bifidobacterium levels,along with increasing total short chain fatty acidconcentrations. These results are in agreement with previous findings. Overall,it was found that beans and potatoes contain resistant starch with distinct properties,and that these foods,along with chicory-derived inulin demonstrated a health-promoting prebiotic effect through improvement of intestinal flora.http://www.jsdaa.org/kaishi/backnumber.html
著者
佐々井 敬祐 岡田 朋子
出版者
新潟歯学会
雑誌
新潟歯学会雑誌 = 新潟歯学会雑誌 (ISSN:03850153)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.45-48, 1994-06

DBSとExpansion-Screw付き床副子にて整復固定を行った上顎骨縦骨折の1例を報告する。上顎骨縦骨折は,主として上顎正中部にみられ,前歯部歯槽突起の骨折線が梨状口に達するもので,鼻腔底,口蓋骨の骨折を伴い,歯列が開大して咬合不全を示すことが多い。治療は,上下顎にDBSを装着して顎間ゴムにて牽引整復を試みたが,整復が困難なため,上顎にExpansion-Screw付き床副子を装着して,このレンジ床副子を収縮させて,非観血的に整復を行った。この床副子を用いた上顎骨縦骨折の整復は,非常に容易で,患者に不要な疼痛を与えることなく,短時間に整復が可能であった。また,整復後にDBSとこの床副子にて顎内固定を行い,顎間固定は,まったく行わなかった。顎内固定期間は,92日間で,咬合状態は非常に改善され,予後は良好であった。
著者
益本 貴之 尾形 理江 森本 規之 岡田 朋子 三浦 徹
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.265-268, 2007

今回われわれは子宮内外同時妊娠の1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.症例は35歳既婚.0経妊0経産.平成○年2月3日を最終月経の開始日とした無月経を主訴に,当院を平成○年3月22日初診となった.既往歴,家族歴に特記事項なし.排卵誘発等の不妊治療歴はなし.初診時の腟鏡診,内診では異常所見を認めず,経腟超音波検査にて子宮内に胎嚢と思われるエコーフリースペースを認めた.平成○年4月4日,性器出血を主訴に再診.腟鏡診にて外子宮口からの少量の性器出血を認め,内診では右付属器領域に圧痛を認めた.経腟超音波検査にて子宮内にエコーフリースペースと,右付属器領域に胎児心拍を伴うエコーフリースペースを認めた.子宮内外同時妊娠(右卵管妊娠および稽留流産)を疑い,本人および家族に十分なインフォームドコンセントを行ったうえで,同日腹腔鏡下手術を施行とした.腹腔内には凝血塊を含む約200gの血液が貯留していた.右卵管は腫大しており,同部位の妊娠が疑われた.右卵管切除術を行い,同時に経腟的に流産手術を施行した.患者の術後経過は良好にて,術後3日目に退院とした.摘出組織の病理組織検査にて,右卵管は右卵管妊娠組織,子宮内組織は流産組織であることが確認された.近年のARTのめまぐるしい進歩に伴い,子宮内外同時妊娠の頻度は増加していると考えられる.本症例では初診時に超音波検査にて子宮内に胎嚢を確認したが,右付属器の異常所見を確認するには至らなかった.再診時に内診にて右付属器領域の圧痛を認め,初めて超音波検査にて右卵管妊娠の存在を確認できた.日常診療において子宮内に胎嚢が確認できたとしても,子宮内外同時妊娠の存在を念頭に置き,付属器領域等を注意深く超音波や内診により診察する習慣をつけることの重要性を再認識した.〔産婦の進歩59(4):265-268,2007(平成19年11月)〕<br>