著者
門 利恵 椎原 啓太 島田 謙一郎 韓 圭鎬 福島 道広 長田 正宏
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.5-17, 2018-03-31 (Released:2018-04-16)
参考文献数
35

プレバイオティクス効果を有する難消化性オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖,ラフィノース,フラクトオリゴ糖)と,チーズホエイパウダーの発酵特性について,発酵培養装置(ジャーファーメンター)を使用し,それぞれ比較検討を行った。難消化性オリゴ糖とチーズホエイパウダーは,善玉菌および有益物質の増加を促進し,悪玉菌および有害物質の生成を抑制することが示唆された。各種オリゴ糖による発酵特性は,全てにおいて類似した傾向が認められ,その効果は難消化性の炭素源によるものと考えられる。また,チーズホエイパウダーに関しても腸内環境に良好な影響をもたらすことが確認された。これらの結果は,副産物とされるチーズホエイについて機能性食品としての新たな有効性を見出す可能性が期待できる。様々な生活習慣病を日常の食生活で予防することの重要性が広く知られてきているが,今後in vivo試験での検討が必要と思われる。
著者
福島 道広 中村 有美 李 スルギ 土平 洋彰 小林 由佳 川上 秋桜 岡田 朋子 島田 謙一郎 韓 圭鎬 Fukushima Michihiro Nakamura Yumi Lee Seulki Tsuchihira Hiroaki Kobayashi Yuka Kawakami Sakura Okada Tomoko Shirmada Ken-ichiro Han Kyu-Ho
出版者
日本消化吸収学会
雑誌
消化と吸収
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.202-215, 2011-03-31

今回、我々は北海道十勝で生産された豆類やジャガイモ、新規作物として栽培開発を行っているチコリから難消化性糖質を分離、そのプレバイオティクス効果について検証した。豆類では、澱粉の構造がレジスタントスターチタイプ2であり、この澱粉が加熱調理加工過程でタイプ3の老化澱粉とタンパク質の被膜が形成されることにより、消化性が低下する可能性が見い出された。その結果、ラットの盲腸内で酸発酵が増進し、短鎖脂肪酸の上昇とpHの低下が認められ、腸内環境を改善させることが明らかとなった。さらに、十勝の特産物であるジャガイモもエステル結合したリン酸基を持つ澱粉であり、レジスタントスターチタイプ2に分類される。この澱粉も加熱調理加工することによりタイプ3の老化澱粉が増加する可能性がある。このジャガイモ澱粉がラット盲腸内で短鎖脂肪酸量を増加させ、特に酪酸の総短鎖脂肪酸に対する比率の上昇は消化を刺激して、糞便重量を増加させることが明らかであり、酪酸の好材料であることが確認された。また、チコリ由来のイヌリンについても、十勝イヌリンがin vivoおよびin vitro研究で盲腸内微生物叢、特にLactobacillusおよびBifidobacteriumレベルを上昇させ、総短鎖脂肪酸濃度も増加させることが明らかとなり、従来の報告と一致していた。以上の結果より、豆類およびジャガイモのデンプンにはレジスタントスターチの作用を有しており、また十勝で新規に栽培したチコリ由来のイヌリンにも腸内改善効果が認められ、機能性糖質としてプレバイオティクス作用を持つことが明らかとなった。This report describes our recent studies evaluating the prebiotic effects of indigestible sugar separated fromtraditionally cultivated beans and potatoes as well as newly developed chicory harvested in the Tokachi area,Hokkaido,Japan. The results indicated that the structure of starches in beans can be categorized as resistant starch type 2 (RS2). Rats were found to have reduced digestibility of beans,probably due to the conversion ofRS2 to resistant starch type 3(RS3,retrograded starch) as well as interaction with denatured protein formed during the heating process. The study also found that intake of beans facilitated cecal acid-fermentation in rats,increased short chain fatty acid levels,and lowered pH. Consequently,intake of beans was found to beeffective in improving the balance of intestinal flora. Potatoes contain starch composed of esterified phosphorusas well as RS2,which is likely converted to RS3 during the heating process. Administration of potato starch also increased cecal short chain fatty acid levels,particularly lactic acid. Theincreased production of lactic acid was found to facilitate digestion,resulting in increased amounts of fecal matter. Inulin derived from chicory harvested in Tokachi area was also found to be effective in improving fecal fermentation,especiallyby increasing Lactobacillus and Bifidobacterium levels,along with increasing total short chain fatty acidconcentrations. These results are in agreement with previous findings. Overall,it was found that beans and potatoes contain resistant starch with distinct properties,and that these foods,along with chicory-derived inulin demonstrated a health-promoting prebiotic effect through improvement of intestinal flora.http://www.jsdaa.org/kaishi/backnumber.html
著者
門 利恵 石田 翼 島田 謙一郎 韓 圭鎬 福島 道広
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.11-25, 2020-03-31 (Released:2020-04-09)
参考文献数
54

生ジャガイモデンプンおよびその加工品のひとつであるドラムドライ加工デンプンフレークについて,ラットを用いたin vivo試験により脂質代謝および腸内環境に与える影響を比較検討した。生ジャガイモデンプン投与群では,血清中の総コレステロール濃度,non-HDL-コレステロール濃度,中性脂肪濃度が低下し,脂質代謝に有用な効果を持つ可能性が示唆された。また,腸内環境では有害菌の抑制や盲腸内短鎖脂肪酸濃度の有意な増加がみられ,盲腸内有害細菌の増殖を抑制して,盲腸内環境が改善された可能性が示唆された。これらの効果はジャガイモに含まれるレジスタントスターチ(RS)によるものと考えられる。生ジャガイモデンプンにはRSによるものと考えられる脂質代謝および腸内発酵への良好な影響が確認された。しかし,生ジャガイモデンプンを加熱・糊化し,ドラムドライ加工により得られたデンプンフレークには同様の効果が見られず,生理特性の違いが明らかとなった。
著者
佐藤 駿 永田 龍次 福間 直希 島田 謙一郎 田宮 大雅 中山 保典 韓 圭鎬 福島 道広
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.81-91, 2020 (Released:2020-06-18)
参考文献数
38
被引用文献数
1

大麦品種BARLEYmax (BM) は一般品種の大麦より食物繊維やレジスタントスターチを豊富に含む。本研究では一般大麦品種であるハインドマーシュならびに対照区であるセルロースと比較してBMのin vitroにおける腸内発酵特性を検討した。実験1では2種の大麦を同等に使用し, 実験2ではBMに難消化性画分が多く含まれることを考慮して検討した。大麦試料を消化酵素により加水分解してその残渣物をin vitro培養槽に供試し, 48時間の培養試験を行った。実験1において, BM添加区はハインドマーシュ添加区より培養後期での高い短鎖脂肪酸産生を示した。実験2ではそれに加えて, BM添加区は培養期間を通して短鎖脂肪酸産生の増加およびアンモニア態窒素の低下を示した。以上の結果から, BMは短鎖脂肪酸を持続的に産生し, さらにその多量な難消化性成分により, 有効な腸内発酵特性を示す可能性が示唆された。