著者
渡壁 奈央 河野 知歩 石橋 ちなみ 岡田 玄也 杉山 寿美
出版者
一般社団法人 日本家政学会 食文化研究部会
雑誌
会誌食文化研究 (ISSN:18804403)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.27-38, 2022-12-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
48

本研究は、『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された饗応献立の再現の過程と、再現した饗応献立の活用事例を報告するものである。『元就公山口御下向之節饗応次第』には、1549年に毛利元就が大内義隆を訪問した際の6回分の饗応献立が、用いた食器具とともに記されている。6回の饗応献立の料理は類似しており、料理の提供順序に規則性が認められた。料理の再現は、毛利氏の家臣、玉木吉保が記した『身自鏡』や、同時期の史料の調理法に従った。調味料は、醤油、砂糖は用いず、味噌、塩、酢、酒、蜂蜜、水飴を用いた。獺(かわうそ)、白鳥等の入手が不可能な食材は、類似した食材で代用した。再現した饗応献立は“サムライゴゼン~毛利食~”として商品化され、また、COVID-19感染症拡大により中止となったが、学校給食での提供が予定されていた。今後、観光面、教育面での活用が期待される。
著者
渡部 真子 鈴木 彩日 松村 知歩 水 梨恵 石橋 ちなみ 岡田 玄也 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.36, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】戦国期毛利氏の食に関しては,1549年に毛利元就が元春,隆景を伴い大内義隆を訪問した際に毛利氏が用意した6回の饗応献立が「元就公山口御下向の節饗応次第(以下,饗応次第)」に記されている。また,毛利氏の家臣,玉木吉保が当時の食材や調理法を「身自鏡」に記している。我々はこれまでに「饗応次第」において,雁や雉に加え,白鳥や鶴,獺が供されていたこと,「身自鏡」において調理法のみでなく,青黄赤白黒の視点が記されていること等を報告している。本研究では,「饗応次第」の献立再現を通して,当時の食について考察した。【方法】「饗応次第」の献立再現では,料理のレシピ(食材量,調理法,盛り付け,器等)の決定が必須である。そこで「饗応次第」「身自鏡」をさらに読み解くとともに,吉川元春館跡発掘調査(記録,出土遺物),同時期の料理書である「大草家料理書」,「明応九年三月五日将軍様御成雑掌注文」からの再現事例等を確認し,「饗応次第」に記された6回の饗応食のうち折敷や器が記された三月五日の饗宴献立の再現を試みた。【結果および考察】「饗応次第」には十二文あしうち,三度入り,小中等と記され,上記発掘調査において側板0.5cm程度の足付折敷,6〜8cmの土師器皿が多く出土されていることから,食材量は器の大きさに併せて決定した。また,当時の饗宴は食さないとの解釈もあるが,白鳥や鶴等の渡り鳥や,鷹のものと思われる獺等,極めて貴重な多様多種の食材が30〜35人分が用意されていることから食されたと解釈した。再現した献立にはぞうに等の儀礼的な料理がある一方,料理の組み合わせや順序への配慮がうかがえた。今後,当時の人々の食への価値観等も含め,検討したい。