著者
矢作 弘 岡部 明子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)旧東独諸都市(ライプチヒ、ハレ、ドレスデン)、及び旧西独のかつての重厚長大産業都市(ザールランド州の都市)、旧港湾部の衰退したイタリア・トリエステでの現地調査、(2)東欧諸国の都市計画専攻の研究者との交流、(3)文献調査によるEUの都市・環境政策、英国の衰退都市の状況把握--を通して「都市規模の縮小政策」の現状を明らかにし、コンパクトシティ論や米国の成長管理政策などほかの都市形態を論じる都市論との違いを解明した(「「都市規模の創造的縮小」政策--その意味と都市論における位置」地域開発497号)。「都市規模の縮小」を都市論として理論研究する一方、政策応用の研究を遂行し、地域商業、地域金融のあり方を「都市規模の縮小」政策の視座から読み解くことを試みた。また、「都市規模の縮小」の考え方を、地方都市中心市街地活性化に活用することについても検討した(『中心市街地活性化3法改正とまちづくり』学芸出版社2006年)。欧州都市の中心市街地は、高密度・用途混在型の特徴を示し、「都市規模の縮小」を考えるヒントが潜んでいる。フランス、ドイツ、スペインなどではどのような市街地形成ルールが機能しているかの研究も行った(「集団規定に求められる2つの転換--欧州都市計画制度との比較から」都市問題第97巻8号)。EUの視点から縮小都市を考えるために、EUの都市・環境政策の基点となった「都市環境緑書」を精読し、その政策的意義、成果を明らかにする作業にも傾注した(「持続可能な都市社会の本質」公共研究2巻4号)。都市の持続可能性を多角的に考える契機となったのが「緑害」であった。社会科学と計画論の学際的な視点からの研究となり、「縮小都市」の研究としては、わが国において最も先端的な取り組みの1つとなった。縮小都市政策はドイツで最も先鋭的に展開されているが、郊外団地などの縮小・減築を住民がどのように受け止めているかなどの調査研究が課題として残った。
著者
内山 愉太 岡部 明子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.883-888, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
13

一般にメガシティは人口規模によって定義されるが、人口規模は都市の一属性にすぎない。既往の研究において、人口規模が同規模のメガシティであっても、抱える問題は大きく異なることが示されている。それには、人口規模以外に多様な要因が考えられるが、都市が空間的な広がりを持っていることと関係があると思われる。メガシティの異なる空間特性を客観的に把握し、メガシティを空間特性により類型化することは、各都市の特性を把握し、その抱える問題や潜在的な可能性を考察する上で有用であると考えられる。本研究では、空間的な人口分布が都市の空間特性を一定程度示していると考え、人口分布特性によりメガシティの類型化を行った。その結果、対象35都市について、人口の特定の人口密度の地域への偏在傾向に関して四類型化でき、人口密度の異なる地域の空間的分布状況によっても四類型化できることがわかった。特に、最も複雑な人口分布特性を持つメガシティがアジアに集中していることが明らかとなった。各都市の空間特性を生かした将来に向けた再編を検討するにあたり、本研究の空間特性によるメガシティ類型を活用できると考えられる。