著者
加茂 利男 阿部 昌樹 砂原 庸介 曽我 謙悟 玉井 亮子 徳久 恭子 待鳥 聡史 林 昌宏 矢作 弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、現代の先進諸国に共通してみられる「縮小都市」という現象に注目し、その政治的および政策的意味を解明することを目的とする。少子高齢化や経済のグローバル化により、先進国の多くの都市は縮小を余儀なくされているが、そのことが衰退を意味するとは限らない。むしろ、縮小は政治的アクターや政策提唱者にこれまでにない方法で都市を再構築する好機を提供する。そこで本研究は、日独仏米4カ国の港湾都市を対象にして、縮小に対する地方政府の政策対応に相違をもたらす要因の特定を試みた。その結果、選挙制度、執政制度、政府間関係、地理的な分節や機能的分節の程度が多様性をもたらすことを明らかにすることができた。
著者
矢作 弘
出版者
公益社団法人 都市住宅学会
雑誌
都市住宅学 (ISSN:13418157)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.60, pp.8-12, 2008-01-30 (Released:2012-08-01)
参考文献数
7
著者
矢作 弘 岡部 明子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)旧東独諸都市(ライプチヒ、ハレ、ドレスデン)、及び旧西独のかつての重厚長大産業都市(ザールランド州の都市)、旧港湾部の衰退したイタリア・トリエステでの現地調査、(2)東欧諸国の都市計画専攻の研究者との交流、(3)文献調査によるEUの都市・環境政策、英国の衰退都市の状況把握--を通して「都市規模の縮小政策」の現状を明らかにし、コンパクトシティ論や米国の成長管理政策などほかの都市形態を論じる都市論との違いを解明した(「「都市規模の創造的縮小」政策--その意味と都市論における位置」地域開発497号)。「都市規模の縮小」を都市論として理論研究する一方、政策応用の研究を遂行し、地域商業、地域金融のあり方を「都市規模の縮小」政策の視座から読み解くことを試みた。また、「都市規模の縮小」の考え方を、地方都市中心市街地活性化に活用することについても検討した(『中心市街地活性化3法改正とまちづくり』学芸出版社2006年)。欧州都市の中心市街地は、高密度・用途混在型の特徴を示し、「都市規模の縮小」を考えるヒントが潜んでいる。フランス、ドイツ、スペインなどではどのような市街地形成ルールが機能しているかの研究も行った(「集団規定に求められる2つの転換--欧州都市計画制度との比較から」都市問題第97巻8号)。EUの視点から縮小都市を考えるために、EUの都市・環境政策の基点となった「都市環境緑書」を精読し、その政策的意義、成果を明らかにする作業にも傾注した(「持続可能な都市社会の本質」公共研究2巻4号)。都市の持続可能性を多角的に考える契機となったのが「緑害」であった。社会科学と計画論の学際的な視点からの研究となり、「縮小都市」の研究としては、わが国において最も先端的な取り組みの1つとなった。縮小都市政策はドイツで最も先鋭的に展開されているが、郊外団地などの縮小・減築を住民がどのように受け止めているかなどの調査研究が課題として残った。
著者
小玉 徹 矢作 弘 北原 徹也 小長谷 一之 佐々木 雅幸 大場 茂明 桧谷 美恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表は、2007年3月、「大不況以来で最悪の10年間」と表現されるニューヨークの深刻なホームレス問題について調査(自費)した。そこで明らかになったことは、1996年の福祉改革によるワークフェアへの移行により、住宅への補助が削減されるとともにジェントリフィケーションの影響で家賃が上昇し、ワークファーストを強いられたワーキングプアとなった母子世帯がシェルターでの生活を余儀なくされている、という事態であった。これに対してローカルな福祉システムが作動しているドイツでは、高い失業率にもかかわらず、失業扶助、社会扶助、住宅手当によりソーシャル・ミックスが維持されてきた。しかしながら2005年以降、ハルツ改革によりワークフェアへと移行したことで、住宅手当、就労支援の両方にかかわる変更がなされ、都市での社会的分離の進行が危惧されていることが、最近、刊行された論考で指摘されている(Kafner S.,2007,"Housing allowances in Germany".in Kemp P.A.ed.Housing allowances in comparative perspective,The Policy Press).。なおドイツでは1999年以降、問題地域の対応プログラムとして社会的都市(soziale stadt、全国200カ所)がスタートしている。ニューディール・コミュニティ、都市再生会社によるイギリスのインナーシティ再生では、ニュー・エコノミーによる雇用の拡大、住宅、雇用、小売り、コミュニティ・サービスとレジャー施設のコンパクトな配置、さまざまな住宅テニュアの混合によるソーシャル・ミックスが意図されている。しかしながらこうした主張は、物理的な改変が社会問題の解決につながる、というニュー・アーバニズムに依拠している。