- 著者
-
岡野 正
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.912, 1981-06-15
螢光眼底撮影の最近の進歩は実に目覚ましく,とくにhardwareの主体を構成する眼底カメラに関しては,本邦ではC社・K社・M社・N社・O社・T社など数多いメーカーの開発の努力もあって,容易に良質の螢光眼底写真が撮れるようになった。しかしsoftwareの面では,なお多くの混乱や試行錯誤がみられ,ことにフイルムの活用法については撮影器機の進歩にはるかにとり残されている感がつよい。 螢光眼底撮影では問題を臨床に限っただけでも,解像力の良いmicroangiography的な個々の毛細血管まで微細に写そうとする場合とrapid sequence angiographyとして眼底の血行動態の時間的造影諸相を記録する場合との二つの面がある。両者それぞれ意義があり,理想的な螢光眼底撮影のroutineでは,頻回にしかも良質の映像を記録したいというのが螢光眼底の専門家ならずとも眼科臨床一般のつよい要望である。だが,この二つの性格は手技上必ずしも両立しえないようである。例えば通常使われている36枚撮り白黒フイルム(例:トライX,ネナパン400,イルフォードPH5など)を使った場合,はじめから毎秒3駒などの高速度で使えば12秒でフイルムは終ってしまう。しかも,通常は36枚全部が螢光用に使われる訳ではない。我々の教室では,最初の1駒は患者の名前などのデータ記録用,次の2駒は検眼鏡所見の白黒写真とし,4駒目から螢光造影の記録をはしめる。