著者
岩原 真代
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.46-55, 2011

<p>京極邸再興の意義を住環境の表現から検証する。仲忠は通常、為政者達の政治的バランスを保つ仲媒者として働き、他者のために「しつらふ」ことで整備調整を図る。これは、京極邸再興の賛意を取り付ける社会的環境や土壌を築くために不可欠であり、秘琴伝授が持つ公共性をも浮き彫りにする。また、宮邸としての京極邸の住環境整備は、いぬ宮の系譜を皇統との接点まで遡及・回帰させた上で、現皇統との融和を祈念するという、俊蔭一族の志向性を示している。</p>
著者
岩原 真代
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.46, pp.17-27, 2010-12

要旨:「楼の上」巻では、仲忠の京極邸再興といぬ宮への秘琴伝授、そして二院行幸が行われる。庭園には「唐傘の柄さしたるやう」な滝と、嵯峨院ゆかりの桜や子の日の老松があり、院の共感体として京極邸の歴史をもの語る。いぬ宮関連の儀礼歌には、「姫松」の喩が繰り返され、百日の祝いは嵯峨院大后の六十賀と同じ正月乙子の日に当たる。賢く長命な大后の造型は、嵯峨院同様、秘琴伝授を見定める視点人物であり、いぬ宮の一将来像としてある。また、物語には大樹の下に「円居」する君臣和楽の情景が繰り返し語られる。京極邸の庭園造詣も、大滝、楼閣、大樹群を縦軸に、枝を大きく張る樹形を横軸にとる立体構造をなし、これは、いぬ宮成長後、京極邸に展開するであろう君臣関係の理想型を具現化、予祝したものと考えられる。また、仲忠の二院への忠勤ぶりは、公式行事化した京極邸再興と秘琴伝授が脅威性を孕むことを示している。 キーワード:京極邸庭園, 子の日の松, いぬ宮造型, 嵯峨院, 嵯峨院大后造型