著者
吉川 裕之 岩坂 剛 八重樫 伸生 関谷 宗英 藤井 多久磨 金澤 浩二 神田 忠仁 星合 昊 平井 康夫 永田 知里
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

CINの癌への進展に関与する因子を解明するため、CINI/II症例のコホート研究を行っている。CIN IIIへの進展例が急増しており、平成16年度中の解析が期待できる。登録数は900例に達し、平成16年6月30日に登録を終了した。今回、厳しく適格規準を設定し、509例において中間解析を行った。進展しやすい因子は、単変量解析では、年齢(30歳代),CIN grade(I), HLA DR1302,sexual partners(多)、HPV16/18/33/52/58感染が有意な因子として抽出された。有意にならなかったがその傾向のあるものとしてCMV IgG陽性,Chlamydia IgG陽性があった。観察を続けることで有意になる可能性がある。HPVはHPV16/18/33/52/58では有意に進展に関連があった。多変量解析ではCIN grade(p<0.05), sexual partners(p<0.05), DR1302(p<0.05), HPV16/18/33/52/58(p<0.05)だけが有意な因子として残った。DR1302が進展に対してprotectiveに働くことをコホート研究で立証したのは、本研究が初めてである。消退しにくい(継続しやすい)因子は、単変量解析では、年齢(>30歳),CIN grade(I),HPV16/18/33/52/58,CMV IgG(陽性),Chlamydia IgG(陽性),smoking(喫煙),marital status(既婚),sexual partner number(>4)が有意なものとして抽出され、多変量解析では年齢(p<0.01)、HPV16/18/33/52/58(p<0.01)、sexual partners(p<0.01)、CIN grade(p=0.06marginal)が残った。
著者
松山 敏剛 松隈 敬太 塚本 直樹 柏村 正道 柏村 賀子 木寺 義郎 岩坂 剛 井上 功 杉森 甫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.196-202, 1982-02-01

1973年より1980年までの8年間に,広汎性子宮全摘術を施行した396症例中,術後摘出標本の子宮頚部亜連続切片の病理組織検索で,初期浸潤癌,あるいは,それより軽度の病巣しか認めなかった症例62例を発見した.これらの症例は術前,浸潤癌と診断して(Ib期54例,IIb期8例)手術を行なったにもかかわらず,実際は初期浸潤より軽度の病巣しか無かったわけで,術前の生検診断の誤りと考えざるを得ない.そこで術前の生検標本を再検討した結果,生検標本を誤まって真の浸潤癌と診断した原因として,1.腺管内侵襲を深い浸潤と間違った.2.標本がtangentialに切れているために浸潤と間違った.の二大原因が考えられた.さらに,生検の小切片のみでは,浸潤癌であることは診断できても,それが初期浸潤であるか,真の浸潤であるかの鑑別は困難であることが多いことも判った.そこで,同時に行なった細胞診,コルポ診の診断を調べてみると,いずれか一方が真の浸潤癌を否定した症例は44.2%,両者共真の浸潤癌を否定した症例は37.2%であった.少なくとも,コルポ診,細胞診共に真の浸潤癌を否定し,生検のみ真の浸潤癌と診断した場合は,円錐切除診を行在い,over diagnosisを防ぐべきであったと考えられた.癌の診断における生検診断のover diagnosisの可能性については過去にあまり注目されていないが,前述した様な可能性を考慮に入れて,臨床医は生検診断を鵜呑みにせずに,細胞診,コルポ診,臨床所見を総合して,疑問があったら積極的に円錐切除診を行なう態度が必要であろう.