著者
中尾 聡志 西上 智彦 岡田 知也 明崎 禎輝 村山 大樹 中平 智 岩崎 洋子 松田 芳郎
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Fe0103, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに】 関節可動域(ROM)運動時の強い痛みに対して,傷害部位へのアイシングが中心に行われてきたが,十分な除痛が認められないことも多い.我々は膝関節炎による強い痛みによりROM運動が実施困難であった症例に対して,患部ではなく手部にアイシングを行うことで痛みが著明に改善し,ROM運動が円滑に行なうことが可能となった症例を経験し,第39回四国理学療法士学会にて報告した.このような現象の報告はこれまでになく,複数例にて効果が認められるかについて未だ明らかではない.そこで,本研究では,まず,人工膝関節全置換術(TKA)後症例に対して,患部へのアイシングと手部へのアイシングの痛みの抑制効果について検討した.さらに,どのような症例に対して,手部へのアイシングがより効果的かについて,手部のアイシング変化率と個体要因(器質的側面・心理的側面)の相関関係を求めて検討した.【方法】 対象はTKA症例(平均年齢76.5±5.6歳・術後平均日数13.1±6.5日)16名16膝とした.連続した2日間にて患部へのアイシング及び術側と同側の手部へのアイシングをそれぞれ,1日ずつ10分間実施し,アイシング前の膝関節最大屈曲(膝屈曲)時の膝関節における疼痛をVisual analogue scale(VAS)にて測定した.アイシング前後の膝屈曲において,アイシング前の屈曲角度を参考にアイシング後も同一角度を再現した後にVASの測定を実施し,アイシング後のVASから前のVASの数値を引いたものをアイシング変化率として求めた.他の評価項目として,術後最大CRP値・現状の経過に対する不安度・アイシング時の自覚的快楽の有無・膝屈曲角度を求め,不安度は痛みと同様にVASにて数値化した.なお,アイシングの実施順は各症例のID番号末尾の数字を参考に,偶数である者を手部アイシングより,奇数である者を患部アイシングより開始した.統計処理として,アイシング前後のVASの値を患部・手部それぞれにおいてt検定にて比較し,アイシング効果の有無を検討した.また,患部・手部へのアイシングの変化率と各評価項目に対する関連性をSpearmanの順位相関係数にて求めた.なお,有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,事前に本研究目的と内容を十分に説明し,同意の得られた症例のみを対象とした.【結果】 各評価項目における平均値は,患部アイシング前VAS52.2±16.4mm・患部アイシング後VAS47.6±19.6mm・手部アイシング前VAS66.2・手部アイシング後VAS42.8±28.3・患部アイシング変化率-4.6±15.4mm・手部アイシング変化率-23.4±27.5mm・術後最大CRP値6.7±4.5mg/dl・現状の経過に対する不安度30.0±29.7mm・膝屈曲角度100.3±20.1°であった.また,16名中14名が手部のアイシング中に「気持ち良い」と答えた. アイシングの効果について,患部アイシング前後のVAS(前:52.2±16.4 mm,後:47.6±19.6 mm)においては有意な差を認めなかったが,手部アイシング前後のVAS(前:66.2±10.9 mm,後42.8±28.3 mm)では有意な差を認めた(p<0.01).アイシング後のVAS変化率において,患部へのアイシング変化率に相関性を認める評価項目は認められなかったが,手部へのアイシング変化率は不安度(r=-0.51,p<0.05),膝屈曲角度(r=-0.51,p<0.05)と負の相関関係をそれぞれ認めた.【考察】 本研究はTKA後症例に対して患部よりも遠隔部位へのアイシングが効果的であることを示したはじめての報告である.Nielsen(Pain,2008)らは健常者の膝関節部位への圧痛閾値は手への寒冷刺激によって上昇し,その要因として下行性疼痛抑制系の賦活を挙げている.本研究において,患部周辺は持続した炎症によって,末梢からの刺激伝達系に異常が生じており,同部位にアイシングを行っても下行性疼痛抑制系が賦活する正常な神経反応が生じなかったのかもしれない.また,手部へのアイシング後にVASがより軽減していた症例では,現状の経過に対する不安度が高い傾向にあった.不安は痛みをより増強させることが報告されており,その増強された痛みが下行性疼痛系の賦活によって減少されたため,不安が強い人ほどより痛み抑制効果が高かった可能性がある.膝屈曲角度が低下している症例ほど手部へのアイシングによる痛み変化率は低かった.これは膝屈曲角度が低い症例では,軟部組織の伸張性などの器質的問題が痛みにより関与するため,手部へのアイシングの効果が低かったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より,術後不安が強いTKA後症例に対する疼痛の管理方法として手部のアイシングが有効であることが明らかとなり,新しい物理療法手法としての可能性が示唆された.
著者
三輪 正人 中島 規幸 廣瀬 壮 岩崎 洋子 村上 敦史 松永 真由美 渡辺 建介
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1337-1339, 2006-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

【背景】老人にみられる鼻の乾燥感あるいは乾燥性鼻炎の存在は知られているが,その詳細な基礎的メカニズムは不明である.その理由の一つとして,客観的な診断法が確立されていないことがあげられる.本研究では,鼻粘膜水分蒸散量の年齢変化について焦点を当て検討した.【方法】対象は,10〜75歳の88名のボランティアで,Tewameter TM300(Courage+Khazaka electric, Germany,日本総代理店:インテグラル)により,水分蒸散量の測定をおこなった.【結果】鼻粘膜水分蒸散量は,年齢により増加する傾向が認められた.【結語】老人にみられる鼻の乾燥感あるいは乾燥性鼻炎の発症機序に,鼻粘膜上皮水分蒸散量の増加が関与する可能性が示唆された.