著者
岩崎 達也
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-14, 2014 (Released:2021-05-28)

個人の想いによってツアー行動が起動する感性主導のツーリズムが、近年盛んになっている。本論文では、憧れの人を追って日本中を駆け巡るツーリズムを観光社会学の概念を援用しながら、消費者行動論の枠組みにおいて検証した。対象となる女性たちは、憧れのグループを見るために何度も各地のコンサートに旅立ち、コンサート後に、一緒に行った友人や現地の仲間たちと情報交換をかねた食事会(「反省会」)を行う。そして翌日、周辺観光をして帰路につく。多くの時間と費用とエネルギーを要するが、そういった行動には、彼女たちの憧れの対象に対する熱い「ロマン主義的まなざし」が存在する。 検証の手段としては、実際にジャニーズのグループを追いかけている7名の20-40歳代の女性たちにインタビュー調査を行った。そこから得た行動や心の動きを分析することで、憧れの対象を追うツーリズムの行動形態と行動モデルの検証、提示を行った。 憧れを追うツーリズムの行動形態は、コンサートという目的に向かって出発地と目的地を往復する「ピストン型」と、そのコンサートの移動地を追いかけて巡るという行動が合体したものである。それを「サーキット型」と命名し、提示した。 そして、消費者行動理論に基づく検証としては、エイゼンとフィッシュバイン(の「期待と価値のモデル」が、本論文のテーマとするツーリズムに合致すると判断し、「サーキット型ツーリズム」の循環モデルの提示を行った。そこでは、ツアー後の評価、確信と仲間との情報交換が、個人の態度や主観的規範にフィードバックされ、次のツアーへの継続を促すことを付加するモデルとした。これまでのツーリズムのように「場所」を主たる目的として消費するのではなく、生きている「人」が主たる目的であり、場所は副次的なものとして消費されるツーリズムである。その検証・分析により、新たなツーリズムへの知見を示すとともに、観光実務へのインプリケーションとした。
著者
岩崎 達也 大方 優子 津村 将章
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.12-24, 2018 (Released:2021-09-01)

本研究は、アニメ聖地巡礼に見られる持続性に焦点をあて、巡礼者のその地へのリピート訪問行動という視点から消費者行動概念のフレームを用い分析を行った。熊本県人吉市におけるアニメ『夏目友人帳』の聖地巡礼者を対象とした調査から、聖地巡礼旅行者の行動メカニズムとして、彼らの行動はアニメ作品への興味、愛着により生起し、その行動の過程で関心の対象がアニメ作品から聖地が存在する地域そのものへと波及していき、その結果として再訪行動が引き起こされることが示された。このような旅行者一人一人のリピート訪問行動が、アニメ聖地巡礼による地域誘客の持続性につながっていると結論付けることができた。
著者
亀谷 由隆 佐藤 泰介 周 能法 泉 祐介 岩崎 達也
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.4_2-4_22, 2007 (Released:2007-12-31)

近年の人工知能分野においては,記号データ中に存在する不確実性をどう扱うかが大きな課題となっている.不確実性を扱うためには,まず確率モデルを構築し,その上で確率推論を行う方法が考えられる.更に近年では,記号列データや関係データベースなど,従来の単一の表データとしては表現できない,構造をもつデータの重要性が増しており,それらを扱うための一般的手法として,一階述語論理と確率の統合を目指す枠組みが数多く提案されている.その中の1つに確率論理プログラミング処理系PRISMがあるが,PRISMは宣言的な意味論,論理プログラムの高い記述力,効率的な組み込みの確率推論機構を備えており,確率モデリングに要する労力を大幅に省くことが期待される.本論文ではPRISM処理系のツールとしての側面に注目し,PRISMプログラムの記述例,処理系が提供する機能,処理速度に関するベンチマーク評価について述べる.