著者
浅川 康吉 遠藤 文雄 山口 晴保 岩本 光一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1129-E1129, 2006

【目的】デイサービス施設は通所リハビリテーション施設のひとつとして介護予防機能を担っている。本研究の目的はデイサービス利用者への簡易運動プログラム提供が利用者の要介護度の維持あるいは改善に与える効果を明らかにすることである。<BR>【対象】群馬県鬼石町デイサービスセンター利用者のうち、簡易運動プログラム参加のためのコミュニケーション能力などを勘案して34名に本研究への参加を呼びかけた。このうちデイサービス利用時にほぼ毎回簡易運動プログラムに参加した者22名を簡易運動プログラム参加群、中断あるいはほとんど参加しなかった者12名を対照群とした。中断や不参加の理由が明確な者は5名で認知症の悪化などであった。簡易運動プログラム参加群の構成は男3名、女19名で、研究開始時における年齢は84.4±8.0歳であった。対照群は男4名、女8名で、年齢は86.3±7.1歳であった。要介護となった主要な原因疾患は両群ともに運動器疾患がおよそ半数を占め、他に脳梗塞や認知症が多くみられた。<BR>【方法】平成14年7月から平成16年5月までの約2年間にわたりデイサービス利用時に簡易運動プログラムを提供した。簡易運動プログラムの内容は坐位での膝伸展と上肢挙上および立位での足底屈(背伸び)と股外転の4つの種目を15分程度かけて行うものであった。運動指導はデイサービススタッフが行い、運動が困難な参加者には適宜介助を行った。簡易運動プログラム提供の効果は提供開始時(平成14年7月)と提供終了時(平成16年5月)との2時点間における要介護度の変化により判定した。統計学的検定にはカイ二乗検定を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】簡易運動プログラム参加群における提供開始時の要介護度は要支援が8名、要介護度1が11名、要介護2が3名であり、提供終了時はそれぞれ5名、15名、2名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は18名で、悪化は4名であった。対照群における提供開始時の要介護度は要支援が4名、要介護度1が3名、要介護2が2名、要介護3と4が計3名であり、提供終了時には要支援はゼロ、要介護1が5名、要介護2が2名、要介護3と4が計5名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は4名で、悪化は8名であった。カイ二乗検定の結果、運動プログラム参加群は対照群に比べて維持あるいは改善された者が有意に多かった(P=0.01)。<BR>【まとめ】デイサービス利用者に簡易運動プログラムを提供することは、利用者の要介護度を維持あるいは改善する効果があると考えられる。
著者
堀 雅博 岩本 光一郎
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.132-146, 2013-04

本稿では,大相撲興行におけるいわゆる「八百長」の経済学的誘因構造を明らかにすることを目的に,簡単な理論モデルを提示し,Duggan and Levitt(2002)に倣った幾つかの実証分析を行った.「星の買取り」,及び「星交換」の成立要件を考察した理論分析からは,「八百長」行為には力士が置かれた環境下での誘因構造が大きく影響しており,上位看板力士が「八百長」を行うとすれば星の買取りを,平幕/十両の力士は星交換を,それぞれ選択する可能性が大きいと考えられる一方,幕下以下の力士養成員には「八百長」の誘因があまりないことが示された.一方,Duggan and Levitt(2002)のデータ期間を約2倍に延長し,また力士養成員も含めて行った実証分析の結果,①勝越しの可能性が懸かった力士の勝率が不自然に高いという意味での「八百長」は,2000年代に入り減少していたものの,近年迄一貫して続いていたこと,②力士養成員レベルでは,統計的に検出できる程の「八百長」は行われていないこと,③2011年2月の携帯メール八百長スキャンダル以降では,関取レベルでも,統計的に検出可能な形での「八百長」は無くなっていること,④「八百長」問題で処分対象となった力士とその他の力士を比較すると,すくなくとも平均的レベルにおいて,処分対象力士の方が「八百長」に強く関与していた可能性が高いこと,等が明らかになった.本稿の分析結果は,大相撲興行の取組結果から読み取れる力士の選択(「八百長」)が経済学的な誘因構造と極めて整合的であること,また,その誘因構造の設計次第で,力士の選択は全く異なったものになり得る可能性を示唆している.This paper first develops a simple model to show that incentives for match-rigging in professional sumo differ depending on the rank to which a wrestler belongs. While incentives for match-rigging can arise for wrestlers in the top divisions (sekitori), few incentives arise for wrestlers-in-training (makushita and below). We then report the results of our empirical analysis, which show that match-rigging in the top divisions has declined in the post-Duggan and Levitt (2002) period, and that at the wrestler-in-training level there was no statistically detectable match-rigging during any period. We find further that match-rigging in professional sumo has stabilized at statistically undetectable levels following the mobile phone text message match-rigging scandal, and that on average the wrestlers selected for sanctions following the scandal were in fact those most involved in match-rigging.

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著者
岩本 光一 叶木 彦治
出版者
[栃木県水産試験場]
雑誌
栃木県水産試験場研究報告 (ISSN:13408585)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-16, 1983-01 (Released:2013-10-08)
著者
堀 雅博 岩本 光一郎
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.132-146, 2013-04

本稿では,大相撲興行におけるいわゆる「八百長」の経済学的誘因構造を明らかにすることを目的に,簡単な理論モデルを提示し,Duggan and Levitt(2002)に倣った幾つかの実証分析を行った.「星の買取り」,及び「星交換」の成立要件を考察した理論分析からは,「八百長」行為には力士が置かれた環境下での誘因構造が大きく影響しており,上位看板力士が「八百長」を行うとすれば星の買取りを,平幕/十両の力士は星交換を,それぞれ選択する可能性が大きいと考えられる一方,幕下以下の力士養成員には「八百長」の誘因があまりないことが示された.一方,Duggan and Levitt(2002)のデータ期間を約2倍に延長し,また力士養成員も含めて行った実証分析の結果,①勝越しの可能性が懸かった力士の勝率が不自然に高いという意味での「八百長」は,2000年代に入り減少していたものの,近年迄一貫して続いていたこと,②力士養成員レベルでは,統計的に検出できる程の「八百長」は行われていないこと,③2011年2月の携帯メール八百長スキャンダル以降では,関取レベルでも,統計的に検出可能な形での「八百長」は無くなっていること,④「八百長」問題で処分対象となった力士とその他の力士を比較すると,すくなくとも平均的レベルにおいて,処分対象力士の方が「八百長」に強く関与していた可能性が高いこと,等が明らかになった.本稿の分析結果は,大相撲興行の取組結果から読み取れる力士の選択(「八百長」)が経済学的な誘因構造と極めて整合的であること,また,その誘因構造の設計次第で,力士の選択は全く異なったものになり得る可能性を示唆している.This paper first develops a simple model to show that incentives for match-rigging in professional sumo differ depending on the rank to which a wrestler belongs. While incentives for match-rigging can arise for wrestlers in the top divisions (sekitori), few incentives arise for wrestlers-in-training (makushita and below). We then report the results of our empirical analysis, which show that match-rigging in the top divisions has declined in the post-Duggan and Levitt (2002) period, and that at the wrestler-in-training level there was no statistically detectable match-rigging during any period. We find further that match-rigging in professional sumo has stabilized at statistically undetectable levels following the mobile phone text message match-rigging scandal, and that on average the wrestlers selected for sanctions following the scandal were in fact those most involved in match-rigging.