著者
市橋 則明 池添 冬芽 羽崎 完 白井 由美 浅川 康吉 森永 敏博 濱 弘道
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-83, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

本研究の目的は,健常男性12名を対象に,各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量を明確にし,さらに各筋のMMT3の筋活動と比較することである。測定筋は,大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大内転筋とし,各筋の整流平滑化筋電図を求めた。その結果,両脚ブリッジの筋活動量は20%以下の低い筋活動であった。一方,片脚ブリッジの筋活動量は,股伸展・外転筋で高い値を示し,両脚ブリッジと比較し,すべての筋において有意に増加した。MMT3の筋活動とブリッジ動作を比較すると,大内転筋を除いて片脚ブリッジの方が大きい筋活動を示した。本研究結果より,片脚ブリッジは大殿筋だけでなく中殿筋や大腿筋膜張筋の筋力トレーニングとして有効であることが示唆された。また,片脚ブリッジをするためには,MMT3以上の筋活動が必要であり,訓練処方の1つの基準となると考えられる。
著者
大沢 晴美 久留利 菜菜 浅川 康吉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.675-675, 2003

【目的】障害老人における閉じこもり現象は日常生活活動量を減少させ、心身の機能をより低下させるといった悪影響があると考えられている。しかし、障害老人の外出頻度とその満足度(以下、外出満足度)についての知見はきわめて少ない。本研究の目的は障害老人の外出頻度と外出満足度を明らかにし、その関連要因を検討することである。【対象】M市およびその隣接のT市にある訪問看護ステーション3ヶ所とデイケア施設1ヶ所の利用者に個別面接調査の依頼を行い70名の承諾を得た。このうち障害老人の日常生活自立度(J-ABCランク)がJランク(独力で外出する)の者と痴呆やコミュニケーションの障害がある者を除いた43名(男性16名、女性27名、平均年齢73.7±12.6歳)を対象とした。J-ABCランクの内訳はAランク15名、Bランク12名、Cランク16名であり、主な疾患名は脳血管疾患であった。なお、コミュニケーションの障害がある者のうち、その意思を主介護者が忖度して回答することが可能であった者は対象に含めた。【方法】調査は2000年と2001年の各10月から12月に行った。調査は基本属性として年齢、性別、世帯人数、J-ABCランクを、外出頻度と満足度に関する項目として外出頻度、外出満足度、主な外出先、外出不安の有無について行った。各調査項目と外出満足度との関連はカイ2乗検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】外出頻度は「毎日1回以上」が9.3%、「2_から_3日に1回程度」が39.5%、「1週間に1回程度」が7.0%、「ほとんど外出しない」が44.2%であった。外出満足度は「もっと外出したい」が48.8%、「今のままでよい」が51.2%、「もっと減らしたい」は0%であった。年齢、性別、世帯人数、J-ABCランク、外出頻度、主な外出先、外出不安の有無のいずれの項目についても外出満足度と有意な関連を認めなかった。【考察】障害老人の外出頻度は2_から_3日に1回程度かほとんど外出しないかの両極に分布する傾向を認めた。外出満足度は「もっと外出したい」と「今のままでよい」がそれぞれ半分程度を占めた。外出満足度は外出頻度とは関連を認めず、外出頻度の高いことが必ずしも高い満足度にはつながらないと考えられた。外出満足度はまたJ-ABCランク、主な外出先、外出不安の有無などとも関連を認めなかった。このことから、J-ABCランクが低い者でも外出に対して高い欲求を有する場合や、デイケア・デイサービスによる外出機会の提供があっても外出満足度の向上につながらない場合などが存在すると考えられた。外出満足度は今回の調査項目とは関連のない独立した要因として今後の検討が必要と考える。
著者
浅川 康吉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-40, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
23
被引用文献数
3 1

生活機能病の克服や介護予防といった目標を重視する立場から,高齢者の筋力の評価やトレーニングの研究を進める視点について検討した。筋力の評価については,体重比で示された筋力が高齢期における神経・筋の機能低下を反映した指標となる可能性を論じた。日常生活活動能力と筋力との関係については,筋力の水準によって両者の関連の強さが異なる可能性を述べた。筋力トレーニングについては,筋力増強の方法について自験例の検討結果を紹介するとともに,その目標やリスクの重要性についても言及した。
著者
浅川 康吉 遠藤 文雄 黒澤 光義
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101338-48101338, 2013

【はじめに、目的】介護予防事業の効果として医療費の伸びの抑制が期待されている。本研究の目的は運動器の機能向上プログラムを中心にした事業における参加者の医療費の変化を、非参加者との比較を通じて明らかにすることである。【方法】群馬県藤岡市は介護予防一般高齢者(一次予防)事業として住民主導型介護予防事業「鬼石モデル」を実施している。「鬼石モデル」は住民が自主グループ活動として公民館等で週に1回、1回1時間弱の「暮らしを拡げる10の筋力トレーニング」に取り組む事業である。本研究のフィールドは平成19年度から平成20年度にかけて事業に参加した同市内の4つの行政区で、対象者は65歳以上の事業参加者70名(鬼石モデル参加群)と、行政区、年齢、性別をマッチさせて選んだ住民140名(対照群)の計210名とした。いずれも国民健康保険、老人医療保険(平成18年度)、後期高齢者医療保険(平成20年度)の加入者で、医療費は事業参加前年度にあたる平成18年度分と事業参加期間の後半にあたる平成20年度分について医科、柔整、歯科、調剤の4項目の合計金額を算出した。分析は以下の通り行った。鬼石モデル参加者と対照群それぞれについて前期高齢者(65歳から74歳まで)と後期高齢者(75歳以上)を区分し4群を構成し、一人あたり医療費として平成18年度分と平成20年度分の単純平均を算出し、金額の変化を明らかにした。その後、医療費のヒストグラムを参考にして医療費25万円以下の低位グループ、25万円超から50万円以下の中位グループ、50万円超の高位グループの3グループを分類し、4群それぞれについて平成18年度医療費と平成20年度医療費を比較した。統計学的解析にはχ²独立性の検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守して実施した。鬼石モデル参加者については口頭による説明を行い、口頭による同意を得た。対照群については本研究者らが個人情報に接することがないように藤岡市から連結不可能匿名化されたデータの提供を受けた。【結果】一人あたり医療費は前期高齢者・鬼石モデル参加群(n=35、年齢71.3±2.3歳)では平成18年度は281,170円、平成20年度は359,526円であった。前期高齢者・対照群(n=68、年齢71.3±2.3歳)ではそれぞれ271,925円、370,836円であった。後期期高齢者・鬼石モデル参加群(n=35、年齢78.5±3.6歳)では平成18年度は453,246円、平成20年度は414,775円であった。後期期高齢者・対照群(n=72、年齢78.4±3.4歳)ではそれぞれ482,579円、500,136円であった。χ²独立性の検定は4群すべてで有意であった(p<0.01)。各群のヒストグラムと調整済み残差を踏まえて医療費の変化を分析したところ、前期高齢者に関しては、対照群では医療費低位グループと高位グループにおいてそれを維持する者が多く、医療費高位グループから低位グループへと変化する者が少なかった。これに対して、鬼石モデル参加群では医療費低位グループと中位グループを維持する者が多くみられた。後期高齢者に関しては、対照群と鬼石モデル参加群ともに医療費低位グループと高位グループにおいてそれを維持する者が多くみられたが、両群を比較すると、低位グループでは医療費増加の者が対照群に多く、高位グループでは医療費維持・減少の者が鬼石モデル参加群に多い傾向がみられた。【考察】行政の視点からみた地域の医療費は住民数×一人あたり医療費であり、一人あたり医療費は介護予防事業の効果をみるための重要な指標である。本研究の結果は、「鬼石モデル」が一人あたり医療費の伸びを抑制することを示し、特に後期高齢者についてはその効果が高いことを示した。その背景には、前期高齢者では、医療費50万円以内の者に対する医療費維持の効果があり、後期高齢者では医療費25万円以内の者に対する医療費維持の効果があると考えられる。後期高齢者では50万円超の者における医療費の維持・減少効果もあると思われ、一人あたり医療費の伸びの抑制が顕著に表れたと考えられる。本研究ではデータ収集時の制約から運動機能データを得ることができなかった。このため運動機能の変化が医療費にどのように影響するかは検討できなかった。この点は今後の課題である。【理学療法学研究としての意義】介護予防事業が医療費に与える影響を具体的に示した研究は少ない。本研究は、理学療法士が関わる介護予防事業によって医療費の伸びが抑制できる可能性を示した点で意義が高い。
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
矢嶋 昌英 浅川 康吉 山口 晴保
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.95-99, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

〔目的〕高齢者の「楽しさ」を構成する因子を明らかにすることを目的とした。〔対象〕群馬県前橋市敷島及び吉岡町老人福祉センターの利用者165名とした。〔方法〕独自に作成した調査票を用い,性別,年齢,「楽しみ」の有無,「楽しい理由」について個別面接により聴取した。「楽しみ」の有無を尋ね,「有る」と回答された方には,その内容および「楽しい理由」を聴取した。「楽しい理由」はTaxonomy of Human Goals(人間が持つ目標の分類)を参照し,「はい」と「いいえ」の2件法で回答を得た。「楽しい理由」としてあげられた項目について探索的因子分析を行い,「楽しさ」を構成する項目を抽出した。〔結果〕楽しみがある人は159名(96.4%)であった。主な内容はカラオケ,センターに来ること,会話,温泉,手芸であった。「楽しい理由」として抽出されたのは3因子11項目であった。それぞれ,第1因子は探究・理解・知的創造性・熟達・課題創造性であり「認知-課題」,第2因子は個性・自己決定・優越であり「自己主張的社会関係」,第3因子は平穏・幸福・身体的健康であり「情動」と命名した。なお,11項目のCronbach α係数は0.73であった。〔結語〕地域在住高齢者の「楽しさ」は,「認知-課題」,「自己主張的社会関係」,「情動」の3因子構造を示し,抽出された11項目で評価できることが示唆された。
著者
池添 冬芽 浅川 康吉 島 浩人 市橋 則明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.232-238, 2007-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
38
被引用文献数
14

加齢に伴い,ヒト骨格筋においては筋張力が低下するだけでなく,筋厚,羽状角など筋の形態的特徴も変化する。近年では超音波法により簡便に筋の形態的特徴を調べたり,固有筋力を推定することが可能になったものの,高齢者を対象とした研究は少ない。本研究では大腿四頭筋の形態的特徴や筋力の加齢による変化について明らかにすること,ならびに高齢者の筋力低下に影響を及ぼす因子について検討を行うことを目的とした。超音波診断装置を用いて,外側広筋部での大腿四頭筋の筋厚および羽状角の測定を行った。また,大腿四頭筋の筋厚と大腿周径から筋横断面積の推定値を求め,さらに膝伸展筋力をこの筋横断面積で除した固有筋力指数を求めた。その結果,高齢女性では若年女性と比較して大腿筋厚や筋横断面積で約1/2,膝伸展筋力では約1/3に有意に減少することが確認された。また高齢女性において,膝伸展筋力と年齢との間に有意な相関がみられ,筋厚や筋横断面積と年齢との問には相関がみられなかった。これらのことから,大腿四頭筋では筋量よりも筋力の方が相対的に加齢による低下の程度が大きいことが示された。固有筋力指数も高齢者では若年者より有意に低い値を示し,加齢による筋力低下は筋量以外に神経性因子の変化が関与していることが推察された。さらに,高齢者の固有筋力指数は変動係数が56%と高く,筋力発揮に関わる神経性因子は,高齢者では個人差が拡大することが示唆された。
著者
山路 雄彦 渡邉 純 浅川 康吉 臼田 滋 遠藤 文雄 坂本 雅昭 内山 靖
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0540, 2005

【目的】<BR>2002年度より理学療法における客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination)(以下、理学療法版OSCE)を開発・実施し、その有用性を報告してきた。理学療法版OSCEは評価を中心としたものであるが、運動療法、物理療法、ADL指導など治療を含めた内容でのOSCEも必要である。本研究では、治療場面を含めた理学療法版advanced OSCEの基本的構築および学外評価者の試行の妥当性を検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR>課題は大腿骨頸部骨折と左片麻痺を有する対象者の4課題とした。課題1は徒手筋力テストと筋力増強運動、課題2はトランスファーと物理療法、課題3は立位評価と平行棒内歩行練習、課題4はトランスファーと更衣動作(上衣)として、評価と治療を組み合わせて構成した。評価者は学内評価者(本専攻教員)8名と学外評価者(本学以外養成校の教員)3名、模擬患者は4名で実施した。学外評価者3名は、ステーション1、ステーション3、ステーション4に配置し、学内評価者と共に同一学生を評価した。対象は、総合臨床実習直前の本専攻4年生23名とし、平成15年7月24日に実施した。運営はマニュアルを用いて行った。なお、学外評価者とは事前の打ち合わせは行わず、当日にマニュアルを配布して簡単な説明を実施して試験に加わった。平均点、課題別一致率、同一ステーション・同一課題における一致率を算出し比較、検討を行った。<BR>【結果および考察】<BR>総合点の平均は、400点満点中300.7点であり、評価を中心とした前年度の313.7点と有意な差は認めなかった。課題別一致率は、課題1:66.6%、課題2:55.7%、課題3:60.9%、課題4:60.2%であった。同一ステーション・同一課題別一致率では3ステーション4課題で59.0%、52.0%、54.9%、55.6%であった。これは理学療法版advanced OSCEの難易度は従来のものと変わらないものの、評価者個人の治療感の相違から評価が一致しない可能性が高いことによるものと考えられる。今後、評価基準の見直しとともに個々の治療感の相違を緩衝することが必要であると考える。また、同一ステーション・同一課題別一致率では学外評価者の配置された3ステーション中2ステーションで、学内評価者、学外評価者に有意な差を認めなかった。このことは、理学療法版advanced OSCEにおいても準備を整えれば学外の複数の評価者でも学生を客観的に評価することができることを示唆していた。
著者
浅川 康吉 遠藤 文雄 山口 晴保 岩本 光一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1129-E1129, 2006

【目的】デイサービス施設は通所リハビリテーション施設のひとつとして介護予防機能を担っている。本研究の目的はデイサービス利用者への簡易運動プログラム提供が利用者の要介護度の維持あるいは改善に与える効果を明らかにすることである。<BR>【対象】群馬県鬼石町デイサービスセンター利用者のうち、簡易運動プログラム参加のためのコミュニケーション能力などを勘案して34名に本研究への参加を呼びかけた。このうちデイサービス利用時にほぼ毎回簡易運動プログラムに参加した者22名を簡易運動プログラム参加群、中断あるいはほとんど参加しなかった者12名を対照群とした。中断や不参加の理由が明確な者は5名で認知症の悪化などであった。簡易運動プログラム参加群の構成は男3名、女19名で、研究開始時における年齢は84.4±8.0歳であった。対照群は男4名、女8名で、年齢は86.3±7.1歳であった。要介護となった主要な原因疾患は両群ともに運動器疾患がおよそ半数を占め、他に脳梗塞や認知症が多くみられた。<BR>【方法】平成14年7月から平成16年5月までの約2年間にわたりデイサービス利用時に簡易運動プログラムを提供した。簡易運動プログラムの内容は坐位での膝伸展と上肢挙上および立位での足底屈(背伸び)と股外転の4つの種目を15分程度かけて行うものであった。運動指導はデイサービススタッフが行い、運動が困難な参加者には適宜介助を行った。簡易運動プログラム提供の効果は提供開始時(平成14年7月)と提供終了時(平成16年5月)との2時点間における要介護度の変化により判定した。統計学的検定にはカイ二乗検定を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】簡易運動プログラム参加群における提供開始時の要介護度は要支援が8名、要介護度1が11名、要介護2が3名であり、提供終了時はそれぞれ5名、15名、2名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は18名で、悪化は4名であった。対照群における提供開始時の要介護度は要支援が4名、要介護度1が3名、要介護2が2名、要介護3と4が計3名であり、提供終了時には要支援はゼロ、要介護1が5名、要介護2が2名、要介護3と4が計5名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は4名で、悪化は8名であった。カイ二乗検定の結果、運動プログラム参加群は対照群に比べて維持あるいは改善された者が有意に多かった(P=0.01)。<BR>【まとめ】デイサービス利用者に簡易運動プログラムを提供することは、利用者の要介護度を維持あるいは改善する効果があると考えられる。
著者
池添 冬芽 浅川 康吉 島 浩人 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.232-238, 2007
参考文献数
38
被引用文献数
10

加齢に伴い,ヒト骨格筋においては筋張力が低下するだけでなく,筋厚,羽状角など筋の形態的特徴も変化する。近年では超音波法により簡便に筋の形態的特徴を調べたり,固有筋力を推定することが可能になったものの,高齢者を対象とした研究は少ない。本研究では大腿四頭筋の形態的特徴や筋力の加齢による変化について明らかにすること,ならびに高齢者の筋力低下に影響を及ぼす因子について検討を行うことを目的とした。超音波診断装置を用いて,外側広筋部での大腿四頭筋の筋厚および羽状角の測定を行った。また,大腿四頭筋の筋厚と大腿周径から筋横断面積の推定値を求め,さらに膝伸展筋力をこの筋横断面積で除した固有筋力指数を求めた。その結果,高齢女性では若年女性と比較して大腿筋厚や筋横断面積で約1/2,膝伸展筋力では約1/3に有意に減少することが確認された。また高齢女性において,膝伸展筋力と年齢との間に有意な相関がみられ,筋厚や筋横断面積と年齢との問には相関がみられなかった。これらのことから,大腿四頭筋では筋量よりも筋力の方が相対的に加齢による低下の程度が大きいことが示された。固有筋力指数も高齢者では若年者より有意に低い値を示し,加齢による筋力低下は筋量以外に神経性因子の変化が関与していることが推察された。さらに,高齢者の固有筋力指数は変動係数が56%と高く,筋力発揮に関わる神経性因子は,高齢者では個人差が拡大することが示唆された。