著者
岩泉 正和 三浦 真弘 片桐 智之 吉岡 寿 大池 航史 杉本 博之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.162-169, 2022-06-01 (Released:2022-07-20)
参考文献数
30

抵抗性採種園産種苗のマツノザイセンチュウ抵抗性を効果的に高める上では,これまで指摘されてきた採種園の性能に関わる諸要因を同時に評価し,その相対的な影響度を把握することが重要である。本研究では,造成年や構成系統の異なる抵抗性アカマツの6採種園を対象に,既往の抵抗性の評価値(抵抗性ランキング)の異なる22系統64母樹から得られた実生苗の抵抗性評価を行った。母樹ごとに実生家系を2カ年で育成し,線虫の接種試験を実施した結果,実生家系の健全個体率(健全率)は,多くの採種園で母樹系統の抵抗性ランキングと高い正の相関が認められた。一部の実生家系についてSSRマーカーによるDNA親子解析を行い,花粉親構成を評価した結果,特に10年生未満の園齢で採種された実生家系では園外花粉親率が高く,健全率は低かった。一般化線形混合モデルの結果では,母樹系統や花粉親の抵抗性ランキング,園齢や園内花粉親率の増加による健全率への正の効果が認められた。これらのことから抵抗性種苗の抵抗性を高める上では,①遺伝的性能の高い系統への構成木の改植,②園齢15年生以上での採種または採種園の部分的な順次更新,等の方策が重要と考えられた。
著者
大谷 雅人 岩泉 正和 佐藤 新一 宮本 尚子 矢野 慶介 平岡 宏一 那須 仁弥 高橋 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

林木遺伝資源の生息域内保存を進めるにあたっては、集団内の遺伝的変異の維持機構を明らかにすることが重要である。本研究では、中間温帯林の主要な遷移後期樹種であるモミを対象として、花粉及び種子を介した遺伝的流動の様態を分析した。福島県いわき市の固定試験地(約1 ha)の7地点において2002年、2005年、2010年に採取された自然散布種子のうち約650粒の胚と雌性配偶体、および試験地内の成木327個体について、SSR12遺伝子座における遺伝子型を決定した。種子散布量には豊作年と並作年の間で約5倍の差が認められたが(125.2~652.9粒/m<sup>2</sup>)、試験地外からの遺伝子流動の割合は調査した3繁殖年次間でほぼ一定であった(種子経由:約13~15%、花粉経由:53~57%)。種子親・花粉親として寄与した試験地内の成木の個体数や多様性についても、繁殖年次による差異は認められなかった。ただし、複数年にわたって種子親・花粉親として寄与した個体は3繁殖年次の寄与個体ののべ数のそれぞれ60.3%、42.4%にすぎなかったことから、各成木個体の雄性・雌性繁殖成功は年次ごとに大きく異なることが示唆された。