著者
島津 和彦 清水 健 金戸 善之 坂本 滋 入山 正 岩波 洋 会田 博 伊藤 芳和 加藤 茂雄
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.1298-1301, 1985

体気中の0圧でわずかな隙間を有する閉鎖位をとる様固定されているMitroflow&reg;牛心膜弁の臨床的機能評価を行う目的で術中有効弁口面積計測, 術後心房ペーシング負荷心拍出量計測, および弁口造影を施行した。対象は4例, 6弁(大動脈弁位2, 僧帽弁位4)である。<br>有効弁口面積測定の結果, 21A弁2.28cm<sup>2</sup>, 23A弁277cm<sup>2</sup>, 27M弁3.12cm<sup>2</sup>, 29M弁でそれぞれ3.24, 3.52, 3.6cm<sup>2</sup>であった。この有効弁口面積測定結果は梅津(2)のIn Vitroのデーターと近似していた。<br>術後心房ペーシング負荷では毎分170心拍まで心拍出量の増加を認めた。<br>術後弁口造影では3弁尖の均等な開放, 閉鎖運動を認め, 開放中期では最大開放位までの弁尖の開放を認めた。<br>以上より本弁は3葉が均等に開閉し, 比較的大きい有効弁口面積を有し, 頻脈追従性が比較的良好な弁である事が結論された。
著者
岩波 洋造
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.892, pp.371-376, 1962
被引用文献数
2

マツバボタンの花の雄ずいの運動に関する研究の一部として, 花糸の内部構造について調査を行なった.<br>マツバボタンの花糸は, 周囲が厚い膜にかこまれているにもかかわらず, 全体がたいへん柔らかい感 じで, たとえば, ピスにはさんで切片を作ると, 花糸がつぶれてしまう. したがって, パラフィン法, 凍 結法によって切片を作り, その横断面, 縦断面を観察したところ, マツバボタンの花糸は, 表皮, 柔組織 および管東組織の3つの部分からなっていることがわかった.<br>表皮の細胞は縦に長く(10×30×100μ<sup>3</sup>), 外側の膜だけが大へん厚くなり, その一部が突起となってい た. 柔組織の細胞も縦長で, 表皮細胞よりはかなり小型であるが, その大きさは大小さまざまで, ここに は細胞間げきが多くみられた. このような柔組織中の細胞間げきは, とくに花糸の基部において多くみら れ, そのため, ときには個々の柔細胞が細胞間げきのなかに浮いている状態にちかいところもあった. 花 糸の中央部にある管束の部分には, 3~4本の道管と, これを囲んで多くの師管が存在していた.<br>マツバボタンと花の形や葉の形はたいへんちがうが, これと同属であるスベリヒユにおいても雄ずいの 運動がみられる (後報). このスベリヒユの花糸の内部構造は, 全体にマツバボタンのそれより小型である が, 細胞の並び方や細胞間げきがあることなど, ほぼマツバボタンと同様であった.<br>マツバボタンの花糸を水で封じ, これを凍結させ (炭酸ガスの噴出による) て切片を作ったとき, 組織 が凍っているときはパラフィン切片と同様のことが観察されたが, 氷が溶けるにしたがってその切片は強 く収縮した. この収縮の過程において, 表皮の大きな細胞は, 突起の部分から内側に折れ曲るようにして 収縮してきた. したがって, 花糸の表皮細胞は, 本来そのように曲る膜の性質をもっていて, 自然状態に おいては, これが吸収による内圧によって押し拡げられていると考えられる. 生体のまま切片を作ると, 花糸の横断切片はすべてつぶれた状態になることや, 花糸が厚い膜につつまれていながら全体としてはご く柔らかい感じがするのは, そのためであろう. この表皮細胞の膜のうちがわに曲る物理的な性質は, 雄 ずいの運動の機構にある程度関与していると想像される. (横浜市立大学生物学教室)