著者
岩淵 せつ子
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.69-78, 2002-01-31

市販の代表的な食用油脂13点および人気商品の油菓子とフライ食品から12点を購入し,平成12年現在,日常摂取している油脂の特色・動向について考察した。内部標準法によるガスクロ分析を行い,脂肪酸組成と各脂肪酸の定量値を求め,その結果を解析して以下の知見を得た。 )脂肪酸組成の結果から,食用油脂は飽和脂肪酸型,オレイン酸型,リノール酸型,α-リノレン酸型の4つのタイプに分けられた。ショートニングやマーガリンにMとPの比率が高く,ソフト化が確認された。量的に多く出回っている調合油(サラダ油)を除くと,現在,高オレイン酸型の商品(べにばな油,オリーブ油,なたね油)が多数を占めていた。従来型の高リノール酸型べにばな油は店頭から消え,長い閲読いた「リノール酸ブーム」は終わり,「リノール酸リツヂオイルがプレミアム」として珍重される時代へと,今,移り変わっていることが分かった。 n-6/n-3 の適正比率の観点からα-リノレン酸の摂取をもっと推奨すべきとの研究成果を反映して,バランスオイルやしそ油商品が市場に出始めたが,使い勝手の点で問題も多く今後の動向が注目される。2)油脂利用食品の脂肪酸組成を解析した結果,飽和脂肪酸比率(30〜50%)とオレイン酸比率(40〜50%)の高い点が特色としてあげられた。これらの食品は加工食品としての性格を持つため飽和脂肪酸比率を変えるのが難しいものと推察した。3)油脂利用食品1単位当たりの脂肪酸量(g/単位)を算出してみた。マックナゲットとマックポテトをセットで食べたり,ピーナッツを2個食べることはよくあることだが,その程度で1日の飽和脂肪酸プラスー価不飽和脂肪酸を併せた推奨値36gの1/2以上に相当することが分かった。今回とり上げた油脂利用食品12点は身近にある食品で日常的に食されている。この点を考慮すると,1回に食べる適正量を考え,多量摂取を避ける習慣を身につけることが健康面から大切であると結論された。本研究テーマは,仙台白百合女子大学人間学部人間生活学科健康栄養専攻の当時4年生だった岡田典子さん,児珠昭子さんおよび田母神純子さんの卒業研究として共に行ったことを記します。
著者
大久保 一良 岩淵 せつ子 浅野 三夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

大豆サポニンはその薬理作用が明らかにされて以来、注目されている成分であり、我々のこれまでの研究結果、Aグル-プサポニンとしてAa〜Afの6種類、Bグル-プとしてBa、Bb'、Bc、Bc'の5種類、Eグル-プとしてBd、Beの2種類、計13種類のサポニンを明らかにすることができ、その遺伝性、植物体における分布等多くの知見を得、大豆の食品加工上考慮すべき重要な成分でることがわかった。最終年度である本年度は、大豆サポニン各成分の量的調製を試み、動物実験、物性実験、ウイルス実験等への試料の供給を行った。醤油粕と胚軸にサポニンが濃縮していることに着目し、宮城県醤油醸造共同組合の協力を得て、サポニン分離プラントを試作することができた。得られた。粗サポニンからのサポニン各成分を単離し、山口大・医・山本直樹教授の協力で、エイズの原因ウイルスであるHIVへの影響を調べた結果、いずれのサポニン画分でもHIV増殖抑制効果がみられ、特にBグル-プにその活性の強いことがわかった。さらに、コレステロ-ル食を与えたラットへの影響を調べた結果、血中トリグリセライドの低下、すなわち、抗脂肪血作用のことも追認できた。大豆食品は胃癌、大腸癌等の低リスク食品であることから、サポニン等の配糖体成分の生理作用を追求することは今後も重要な課題であることがはっきりした。また、サポニン組成と遺伝との関係が明らかにばったことから、植物の分類マ-カ-としても有効であり、さらに品種の改良と判別にも応用され、新たな展開が期待される。