著者
浅野 三夫 大久保 一良 山内 文男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.375-379, 1990-05-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

温水浸漬による不快臭味成分低減効果をより詳しく検討するため,大豆を種皮,胚軸および子葉の各部位別に分け,それぞれ温水浸漬しん出物中の配糖体成分をTLCおよびHPLC分析を行って検討した. (1) 温水浸漬によってしん出した各重量あたりの配糖体成分含量は胚軸が最も多く,その量は対照(70%エタノール抽出から調製された配糖体成分)の53%であった. (2) 温水浸漬による不快味成分低減効果は,豆類などのアク抜き剤として用いられているNaHCO3 (1~5%)添加とほぼ同じ効果であった. (3) 温水浸漬によってしん出した配糖体成分のTLC分析の結果は対照に比べて,イソフラボノイド系のバンドが少なく,サポニン系のバンド,特に不快味の強い,サポニンAグループ成分が主体であり,それは胚軸で顕著であった. (4) 同上配糖体成分のHPLC分析からAグループ成分中でも不快味の強いAaおよびAb成分が胚軸に顕著に検出され,また胚軸にはU1 U2を含む未確認成分も多かった. (5) 温水浸漬から調製した胚軸配糖体成分をセファデックスLH-20で分画し, TLCとHPLCで分析した.さらに標品との同定を試みた結果,未確認成分のU1およびU2は,それぞれ不快味を持つグリシティン7-β-Oグルコシドとダイジンであることが明らかになった.
著者
佐々木 千恵 寺本 祐之 杉野 智美 伊藤 幸彦 水口 彩 喜瀬 光男 青砥 弘道 吉城 由美子 大久保 一良
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2003 (Released:2003-09-04)

【目的】健康指向の高まりにより、野菜飲料の消費量が伸長してきている。その中でも栄養価が高い野菜のケールを搾汁した冷凍青汁が注目されている。冷凍青汁は、鮮度と栄養価を長期に保持するためには優れた形態であるが、飲用時の解凍方法によっては、青汁の栄養価、機能性が損失される懸念がある。今回は、簡便な解凍方法である電子レンジを冷凍青汁の解凍に使用した場合の栄養価、抗酸化力に及ぼす影響の有無を検討した。【方法】試料は、愛媛県JAで栽培されたケールを搾汁して製造された冷凍青汁(ファンケル社製)を用いた。解凍方法は、スタンダードな手法として用いられている流水に浸した解凍(流水解凍;20_から_23℃水道水、4分30秒)をコントロールとして、電子レンジによる解凍(500W、1分30秒)後の栄養価、抗酸化力を評価した。栄養価はβ‐カロテン、ビタミン類、葉緑素(クロロフィルa、クロロフィルb)、抗酸化力はESRによるSOD様活性(SOSA)、XYZ系活性酸素消去発光法によるH2O2消去活性の分析を行った。また、解凍後の沈殿凝集の程度を粒度分布計で測定し、喉越しなどの官能試験と合わせて評価を行った。【結果】電子レンジによる解凍は、流水解凍と比較して、沈殿凝集物の粒子径が小さくなり、喉越しが良くなることが分かった。β‐カロテン、ビタミン類、葉緑素については、解凍方法による差は認められなかった。抗酸化力の指標となるESRによるSOSA及びXYZ系活性酸素消去発光によるH2O2消去活性は、電子レンジ解凍の方が高い傾向を示した。【結論】冷凍青汁の電子レンジ解凍は、簡便であるだけでなく、栄養価を損なわず、飲用時の品質も優れていると評価した。
著者
大久保 一良 岩淵 せつ子 浅野 三夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

大豆サポニンはその薬理作用が明らかにされて以来、注目されている成分であり、我々のこれまでの研究結果、Aグル-プサポニンとしてAa〜Afの6種類、Bグル-プとしてBa、Bb'、Bc、Bc'の5種類、Eグル-プとしてBd、Beの2種類、計13種類のサポニンを明らかにすることができ、その遺伝性、植物体における分布等多くの知見を得、大豆の食品加工上考慮すべき重要な成分でることがわかった。最終年度である本年度は、大豆サポニン各成分の量的調製を試み、動物実験、物性実験、ウイルス実験等への試料の供給を行った。醤油粕と胚軸にサポニンが濃縮していることに着目し、宮城県醤油醸造共同組合の協力を得て、サポニン分離プラントを試作することができた。得られた。粗サポニンからのサポニン各成分を単離し、山口大・医・山本直樹教授の協力で、エイズの原因ウイルスであるHIVへの影響を調べた結果、いずれのサポニン画分でもHIV増殖抑制効果がみられ、特にBグル-プにその活性の強いことがわかった。さらに、コレステロ-ル食を与えたラットへの影響を調べた結果、血中トリグリセライドの低下、すなわち、抗脂肪血作用のことも追認できた。大豆食品は胃癌、大腸癌等の低リスク食品であることから、サポニン等の配糖体成分の生理作用を追求することは今後も重要な課題であることがはっきりした。また、サポニン組成と遺伝との関係が明らかにばったことから、植物の分類マ-カ-としても有効であり、さらに品種の改良と判別にも応用され、新たな展開が期待される。
著者
荒 勝俊 吉松 正 小島 みゆき 川合 修次 大久保 一良
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.377-387, 2002-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
38
被引用文献数
1 3

(1) 日本の伝統的発酵食品である醤油から豆乳発酵食品の呈味性改善効果の高い乳酸菌としてS85-4株を見出した. (2) 豆乳の呈味性改善効果の高いS85-4株の同定を行ったところ,Streptococcus thermophilus又はStr.mitis近縁の株である事が判ったが,糖の分解性が若干異なる事から新規の乳酸菌としてStr. sp. S85-4株と命名した. (3) 各種乳酸菌(標準菌)を用いて豆乳発酵を行ったところ,Str. cremoris, Str. lactis, Str. diace. tilactisに改善効果を見出した. (4) 各種乳酸菌を用いて乳酸発酵を行い,得られた発酵液のHPLCによる分析を行ったところ,豆乳発酵において呈味性改善効果の高かった分離乳酸菌Str. sp. S 85-4株及び標準菌のStr. cremoris, Str. lactis, Str. diacetilactis共に大豆の不快味成分であるダイジン及びゲニスチンといった大豆イソフラボン類に変化は認められなかった.また,呈味性が改善されなかったLactobaeillus caseiなどの発酵液では,ダイジン及びゲニスチンが分解されてアグリコンであるダイゼイン及びゲニスティンに変化する事を見出した. (5) 分離乳酸菌Str. sp. S85-4株で製造した豆乳発酵食品をTLCで解析したところ,新たな糖の生成が認あられた.また新たな糖を含む画分を豆乳に加える事で大豆特有の収斂味が低減し,呈味性が大幅に改善する事が明らかとなった.