著者
松本 伊左尾 中沢 信吉 岩渕 坦 石原 和夫 今井 誠一 本間 伸夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.549-554, 1989-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

A.sojaeNo.9株とA.oryzaeS-03株の種麹(いずれも(株)樋口松之助商店製)を使用して, 9工場による醤油の比較試験を行ったところ,A.sojaeNo.9を使用した場合はA.oryzaeS-03使用に比べ, 次の特徴が認められた。1. 麹は水分が多く, pHが高く, また酵素活性はプロテアーゼ(pH5.7), 飴アミラーゼ,酸性カルボキシペプチダーゼが低く, グルタミナーゼ, エンド・ポリガラクチュロナーゼが高かった。2.熟成60日の諸味液汁は色が淡く, pHが低く, アルコールが少なかった。3.熟成180日の諸味液汁(生醤油)は色が淡く, 全窒素,ホルモール窒素が少なく, 蛋白分解率(FN/TN×100)が低く,還元糖が多く,火入逅が少なかった。有機酸は乳酸,酢酸が多く, コハク酸, ピログルタミン酸が少なかった。遊離アミノ酸はグルタミン酸のみ多く, その他はいずれも少ない傾向であった。4。官能的には約90%のパネルが両者を識別でき, そのうち約60%のパネルがA.sojaeNo.9の生醤油及び火入醤油を好んだ。終りにのぞみ,A.sojaeNo.9株とA.oryzaeS-03株の種麹をご提供いただいた(株)樋口松之助商店に深謝致します。なお, 本報告の要旨は(社)日本食品工業学会第35回大会(1988年3月, 東京)にて発表した。