著者
桝谷 奎太 岩澤 佳太 吉田 栄介
出版者
公益財団法人 牧誠財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.3-20, 2022 (Released:2023-03-07)
参考文献数
39

本研究の目的は,日本企業における業績管理実践と効果の変化に加え,その背後にある考え方に関する変容の有無や内容,要因について探究することにある。本研究の特徴は,10年分の実態調査データに基づく経時的な分析の実施,得られたデータの深掘り,他の実態調査を参照した統合的解釈にある。分析の結果,2009年から2019年の10年間での業績管理の変化は,資本効率性や貸借対照表を重視した管理への変革というよりも,伝統的な損益計算書中心の管理を計数管理の強化により漸進的に改善するものである可能性や,中長期的な企業価値の向上というよりも短期的な財務業績の向上を目指したものである可能性が示唆された。一部の企業群における変容の兆候も示唆されたが,平均的な調査対象企業においては,業績管理の革新的な変容というよりも,従来の実践の延長線上での漸進的な改善に留まっている可能性がある。本研究は,仮説導出的研究と位置付けられ,実態の説明と将来の研究課題の析出に役立つ。
著者
岩澤 佳太 桝谷 奎太 吉田 栄介
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.37-53, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
36

本研究の目的は,近年の日本の製造業におけるコストマネジメントの変容について,コンティンジェンシー要因との関係およびコストマネジメント活動と効果の関係に着目して解明することである.とりわけ原価企画に注目した上で,2009年,2014年,2019年と郵送質問票調査を実施した.多母集団同時分析の結果,原価企画活動,効果・逆機能の平均値および原価企画活動と効果の関係性は,概ね一貫していたのに対し,原価企画活動と逆機能の関係性および組織コンテクストと原価企画活動の関係性については,調査時点間で統計的に有意な差を確認した.このことは,日本企業の原価企画について,従来の活動の一貫した有用性を示す一方で,経営環境やビジネスモデルの変化に対応する新たな仕組みの必要性を示唆していた.
著者
岩澤 佳太
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.74-87, 2022 (Released:2022-09-03)
参考文献数
30

本研究の目的は,工場経理部門の提供するサービスが,製造部門のコストマネジメント活動におよぼす影響の解明にある。インタビューおよび社内アンケート調査を実施した結果,工場経理部門の高いサービス品質が,製造部門の原価情報の活用を進めると共に,インタラクションを活性化させ,ひいては生産パフォーマンスを向上させることを示した。
著者
山木 梨沙 岩澤 佳太 藤田 志保
出版者
慶應義塾大学大学院商学研究科『慶應商学論集』編集委員会
雑誌
慶応商学論集 (ISSN:09175229)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.37-50, 2021-03

本研究の目的は、組織市民行動が、組織内の他の成員へ与える影響を経験的に解明することで、なぜ・どのように組織市民行動がポジティブな影響をもたらすのかを明らかにすることである。この目的を達成するため、芸能事務所の所属メンバーを対象とした質問票調査を行った。その結果、ある成員の積極的な組織市民行動が、同グループ内の他のメンバーの内発的モチベーションを高め、バーンアウトを軽減させるといった効果があること等を示した。この結果は、組織市民行動は組織にとって有効であるという先行研究が暗黙においていた仮定を経験的に確認した。論文