著者
齋藤 順一 柳原 茉美佳 嶋 大樹 岩田 彩香 本田 暉 大内 佑子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-26, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究の目的は、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のコア・行動的プロセスである価値づけ、コミットされた行為を測定する尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1における探索的因子分析の結果、本尺度は【動機づけ】・【行動継続】・【強化の自覚】の3因子から構成された。本尺度は、十分な内的整合性、収束的および弁別的妥当性が確認された。研究2では、構成概念妥当性を、共分散構造分析により検討した。その結果、【強化の自覚】・【動機づけ】が高まることで【行動継続】が高まり、主観的幸福感が増加することで、結果的に体験の回避が減少する可能性が示唆された。今後は、臨床群、異なる年齢層などの幅広い属性を持つ被験者を対象として、信頼性と妥当性を検討していくことで、本尺度の有用性を確認する必要がある。
著者
川井 智理 嶋 大樹 柳原 茉美佳 齋藤 順一 岩田 彩香 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.399-411, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
25

本研究は、Acceptance and Commitment Therapy(ACT)が注目する脱フュージョンという行動的プロセスを測定する尺度の作成、その信頼性と妥当性の検討、脱フュージョンに含まれるさまざまな行動の機能の重なりや相違点に基づいた妥当性の高い行動クラスを見いだすことを目的とした。40項目からなる尺度の原案を作成し、首都圏の学生を対象に横断調査を行った。探索的因子分析の結果、本尺度は【自分の自覚】・【選択と行動】・【現在との接触】の3因子18項目から構成されることが示され、脱フュージョンは三つの“機能”を含む可能性が明らかになった。また、それぞれを下位尺度とした場合、十分な内的整合性、収束的妥当性が確認された。今後は、本尺度を用いてACTが介入対象とするほかの行動的プロセスや臨床症状との関連性を検討し、精神的苦痛を緩和する脱フュージョンについての理解をより深めていく必要がある。
著者
杉山 風輝子 岩田 彩香 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.367-377, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
11
被引用文献数
4

疼痛性障害を呈する患者に対し、マインドフルネスに力点を置いたAcceptance & Commitment Therapy(ACT)を導入したことにより、生活上の問題が大きく改善した事例を報告する。来院当初は、痛みを含む身体症状に対し、医療機関を頻回に受診するなどの援助希求を伴う回避行動をとっており、行動範囲の縮小、心配や反芻を繰り返すことによる抑うつ症状を呈していた。そこで、過去の失敗経験や未来の心配と距離をおく脱フュージョンや、自らの体験を回避せずに観察するアクセプタンスを導入したうえで、今を偏りなく観察するマインドフルネスの促進に力点を置いた。その結果、回避行動の随伴性をモニタリングし、習慣的行動をいったん停止するプロセスとしての自己および文脈としての自己の高まりや、身体症状をアクセプトしながら実生活の中で正の強化が得られやすい行動の拡大が認められ、特性不安や抑うつ感情も大幅に改善した。
著者
嶋 大樹 川井 智理 柳原 茉美佳 大内 佑子 齋藤 順一 岩田 彩香 本田 暉 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-13, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では、第三世代の認知・行動療法で重視される行動的プロセスである“アクセプタンス”を測定するAcceptance Process Questionnaire(APQ)を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。学生を対象に調査を実施し、因子分析を実行した結果、APQはアクセプタンスの中長期的結果を測定する【行動レパートリーの拡大】と【現実の感受】、行動内容を測定する【私的出来事から回避しない選択】と【リアクションの停止】の4因子パタンをもつ、13項目で構成された。APQは、十分な構造的妥当性、内的整合性を有し、全体でアクセプタンスを測定すると判断されたが、収束的妥当性、再検査信頼性に課題を残した。今後、再検査信頼性についてはサンプルサイズを増やして検討を進めるともに、日常生活下での行動傾向とAPQの尺度得点の関係性を検討し、その有効性を確認する必要がある。