著者
仁田 雄介 髙橋 徹 熊野 宏昭
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-12, 2019-11-30 (Released:2020-01-04)
参考文献数
40

【背景】イメージ書き直しとは,恐怖記憶のイメージをより安全なイメージに書き直す技法である。メカニズムには未だ不明な点が多いが,再固定化を利用して恐怖記憶を減弱すると考えられている。【方法】Web of Science, Science Directにて“imagery rescripting” and “reconsolidation”というタームを用いて検索した。【結果】現時点ではイメージ書き直しと再固定化の関係を示す研究は存在しない。【結論】今後の研究では(1)イメージ書き直しとイメージエクスポージャーの再発率の比較,(2)イメージ書き直しとイメージエクスポージャーに関与する脳部位の比較,(3)イメージ書き直しとイメージエクスポージャーによるトラウマの陳述内容の変化の比較,(4)記憶想起直後にイメージを挿入する条件と記憶想起10分後にイメージを挿入する条件の比較,が行われる必要がある。
著者
髙橋 徹也 近江 晃樹 豊島 拓 齋藤 博樹 桐林 伸幸 金子 一善 菅原 重生 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.734-740, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
8

患者は30歳代女性. 神経性食思不振症に伴うるい痩のため, 当院精神科に栄養管理目的に入院中であった. 入院後, 血圧の低下と肺野のうっ血を認めたため当科紹介となった. BNP値が3045pg/mLと上昇し, 低リン血症をはじめとした高度な電解質異常を認めた. 心電図では陰性T波が出現し, 心エコーではたこつぼ心筋症様の左室壁運動異常を認めた. うっ血性心不全として少量のカテコラミンおよび利尿薬を投与し, 致死性不整脈に注意しながら全身管理に努めた. また, 電解質を補正しながら緩徐に投与カロリーの増量を行った. その後, 電解質は補正され, 左室壁運動および心不全の改善を認めた. 低栄養状態にある患者の精神的ストレスや低血糖・疼痛による身体的ストレス, 低リン血症などの電解質異常が, たこつぼ心筋症とRefeeding症候群に伴う心不全の発症に関与している可能性が示唆された.
著者
仁田 雄介 髙橋 徹 熊野 宏昭
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.58-66, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
37

消去訓練を行うと消去学習が成立し,恐怖条件づけによる恐怖反応が抑制される。しかし,消去学習は恐怖記憶を改変しないため,恐怖反応の再発が起こる。消去学習を利用した技法はエクスポージャー療法と呼ばれており,不安症の治療に用いられている。エクスポージャー療法後にも不安症が再発する可能性が示唆されており,再発を防ぐ治療法が必要とされている。そこで,記憶再固定化というメカニズムが注目されている。記憶痕跡は固定化すると改変できないと従来は考えられていた。しかし近年,想起によって固定化された記憶痕跡が不安定になり,その後再固定化することが明らかになった。再固定化が進行している間は,想起した恐怖記憶を改変できることが示されている。そして,再固定化進行中の消去訓練は恐怖反応の再発を防ぐことが,近年の研究によって示唆されている。今後,不安症に対する再固定化を利用した介入の有効性の検討を進める必要がある。
著者
髙橋 徹 荻島 大凱
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.295-317, 2021 (Released:2023-02-10)
参考文献数
94

Mindfulness affects a variety of psychological problems, and many psychological concepts have been introduced to explain the mechanism of these effects. However, a unified understanding has not been attained. In this paper, we discuss the mechanism of mindfulness from the perspective of the predictive coding model, which has been attracting attention in recent years as a potential unified theory to explain various brain functions. Based on our review, we found that mindfulness is characterized by (1) predominantly minimizing prediction errors via perceptual inference, which updates predictions based on sensations rather than by active inference (which attempts to modify sensations to match predictions); (2) increasing the precision of sensory input by attention, and (3) decreasing the precision of prior predictions by not weighting past experiences. These features may lead to rapid minimization of prediction error and an accurate understanding of the inner and outer environment. By redefining mindfulness in the predictive coding model, we discuss the possibility of understanding the mechanisms of mindfulness from a unified perspective that explains human perception, behavior, cognition, and emotion.
著者
柴田 由紀枝 岩崎 雄一 竹村 紫苑 保高 徹生 髙橋 徹 松田 裕之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.183-188, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

和賀川の清流を守る会 (以下, 守る会) は, 岩手県を流れる和賀川を公害から守り, 清流を保護することを目的として多様な利害関係者によって1972年に結成された。上流域に存在する休廃止鉱山の水質監視を主要な活動の1つとして, 守る会は, 会発足時から河川での水質調査, 1976年からは鉱山での水質調査を開始し, 測定結果を会報で報告している。排水基準を超過した場合も含むすべての測定結果が, 会報で公開・議論されている点は情報公開のあり方の点からも興味深い。また, 会報のテキスト分析によって, 1972年から2019年までの間に, ①公害への危惧, ②休廃止鉱山での水質監視や鉱害防止対策, ③水生生物など自然環境全体の保全, と会報の話題が変化していることが示された。守る会の活動を分析・整理した本研究の成果は, 排水基準の遵守のみに依拠しない休廃止鉱山における柔軟な坑廃水管理を検討する上で貴重な基礎資料となると考えられる。
著者
大野 智子 山田 節子 三森 一司 髙山 裕子 熊谷 昌則 髙橋 徹 逸見 洋子 駒場 千佳子 長沼 誠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して,秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理を析出すると共に、その地域特性を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】調査地域は,行政区分に準じた鹿角,北秋田,山本,秋田,由利,仙北,平鹿,雄勝の8地域とし,昭和35~45年頃までに郷土料理として定着した次世代に伝え継ぎたい家庭料理の聞き書き調査を実施した。調査対象者は,当時の調理担当者である年代の19名とした。聞き書きにより得られた料理を地域区分に従って,ごはんもの,そば・うどん他麺類,おかず,汁もの・鍋もの,漬物,おやつ・お茶うけ,正月(年越し)料理/祭り・行事の料理の項目に分類した。<br>【結果】全体として得られた料理は110(ごはんもの7,おかず37,汁もの・鍋もの17,漬物13,おやつ19,行事の料理17)であった。全地域において挙げられた料理は,日常食の山菜料理,かやき料理であった。県の花として制定されているふきのとうを始め春の山菜を利用した保存食や,季節の魚や山菜等を合わせて煮た「かやき(貝焼き)」は,山と海の幸豊かな秋田県の食の特徴を表しているものとも言える。漁業が盛んな山本地域では,ハタハタに食塩を加え長期間発酵させた「しょっつる」,乾燥したエゴノリを煮溶かし冷やし固めた「えご」等,魚や海藻を主とした料理が並んだ。年神に供えた鏡餅を夏季まで保存し,長寿を祈願して6月1日に食べる「凍み餅(歯固め餅)」が,雄勝地域ではハレ食として食されていた。また,豊富な米と雪深い秋田の象徴とも言える「いぶりがっこ」,「ふかしなす漬け」等の発酵食が日常食に挙げられた。
著者
髙橋 徹 熊谷 昌則 髙山 裕子 大野 智子 山田 節子 三森 一司 逸見 洋子 駒場 千佳子 長沼 誠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究平成24〜25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して,秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理を抽出し,「副菜」に着目してその特徴と調理特性について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】秋田県内8調査地域(鹿角・北秋田・山本・秋田・由利・仙北・平鹿・雄勝)において,昭和35〜45年頃に調理を担当していた対象者19名(女性,74.2±7.8歳)に聞き書き調査を実施した。調査から得られた110の料理のうち,副菜に該当した料理の特徴および調理特性について検討した。</p><p>【結果および考察】副菜に該当した36の料理のうち,漬物が13と約1/3を占めていた。有名となった「いぶりがっこ」の他に,「ふかしなす漬け」や「平良かぶの漬物」等,米麹を使用する漬物も見られた。漬物の原料となるダイコン,カブ,ナスには伝統野菜も用いられている。また,山菜やキノコ料理も豊富で,「ぜんまいの一本煮」,「カタクリの花のクルミ和え」,「ばっけみそ」,「なめこと大根おろしの酢の物」,「なっつ」などが挙げられた。「なっつ」は,漬物の原型ともいわれ,野菜やキノコをだし汁や塩辛で和えたものである。「てん(ところてん)」,「えご」,「寒天料理」に代表される,寒天(海藻)を利用した料理は県内全域で食されており,その種類も豊富であった。他県では日常的に食されている「煮しめ」が,正月(年越し)や行事の料理として継承されている地域もあった。</p>