著者
嶋 大樹 井上 和哉 本田 暉 高橋 まどか
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.22-014, (Released:2023-04-18)
参考文献数
33

本研究では、外来臨床での標的行動選定プロセスの整理および標的行動の位置づけにおける特徴の記述を目的とし、うつ病もしくはうつ状態にある者への行動的支援に関する文献をレビューした。国内外の複数のデータベースにて関連論文を検索し、11件の研究を採択した。そのうち10件で複数の標的行動に関する記述が認められ、7件で標的行動の継続測定に関する記述が認められた。各文献における選定プロセスは、その要素から1)プログラムに基づくもの、2)希望に基づくもの、3)価値に基づくもの、4)日常生活アセスメントに基づくものとして大別可能であった。また、標的行動の主たる位置づけは、1)当該標的行動の増加自体が目的となっているもの、2)なんらかの目的達成の手段であるものに分類可能であった。しかし、標的行動選定に至る臨床判断プロセスについての記述が全般に少ないため、事例報告における当該情報の充実化が提案された。
著者
嶋 大樹 井上 和哉 本田 暉 高橋 まどか
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.63-74, 2023-05-31 (Released:2023-09-16)
参考文献数
33

本研究では、外来臨床での標的行動選定プロセスの整理および標的行動の位置づけにおける特徴の記述を目的とし、うつ病もしくはうつ状態にある者への行動的支援に関する文献をレビューした。国内外の複数のデータベースにて関連論文を検索し、11件の研究を採択した。そのうち10件で複数の標的行動に関する記述が認められ、7件で標的行動の継続測定に関する記述が認められた。各文献における選定プロセスは、その要素から1)プログラムに基づくもの、2)希望に基づくもの、3)価値に基づくもの、4)日常生活アセスメントに基づくものとして大別可能であった。また、標的行動の主たる位置づけは、1)当該標的行動の増加自体が目的となっているもの、2)なんらかの目的達成の手段であるものに分類可能であった。しかし、標的行動選定に至る臨床判断プロセスについての記述が全般に少ないため、事例報告における当該情報の充実化が提案された。
著者
富田 望 嶋 大樹 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.65-73, 2018 (Released:2018-01-01)
参考文献数
18

本研究では, 社交不安症における心的視点を測定する尺度を作成し, 信頼性と妥当性を確認することを目的とした. Field視点 (F視点), Observer視点 (O視点), Detached Mindfulness視点 (DM視点) の3因子構造を想定した17項目の尺度を作成し, 学生283名に対して質問紙調査を実施した. 因子分析によって項目を抽出し, 内的整合性を確認するためにα係数を算出した. また, 構成概念妥当性を検討するために, 3下位尺度と, それぞれに類似する概念もしくは異なる概念を測定する尺度との相関係数を算出した. さらに, 再検査信頼性を検証するために2週間の間隔をあけた再テスト法を用いた. その結果, F視点, O視点, DM視点の3因子13項目から構成される質問紙が作成された. また, 十分な内的整合性, 再検査信頼性, 構成概念妥当性が示された.
著者
井上 和哉 佐藤 健二 横光 健吾 嶋 大樹 齋藤 順一 竹林 由武 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-113, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
34
被引用文献数
2

本研究では、スピーチ場面に対するウィリングネスの生起には、価値の意識化のみで十分であるか、それとも、価値の意識化の前に創造的絶望を付加することが必要であるかを検討した。社交不安傾向者の学生22名を創造的絶望+価値の意識化群、価値の意識化のみ群、統制群の3群に割り当て、介入効果の比較を行った。価値の意識化のみ群、統制群には創造的絶望を実施せず、回避行動が一時的に有効であることを話し合った。介入から一週間後のスピーチ課題時に、創造的絶望+価値の意識化群、価値の意識化のみ群には価値を意識させ、統制群には価値を感じないものを意識させた。その結果、創造的絶望+価値の意識化群のスピーチ場面に対する前向き度が統制群より増加した可能性が示された。また、創造的絶望+価値の意識化群のスピーチ場面から回避したい度合いが他群より減少した可能性が示された。
著者
齋藤 順一 柳原 茉美佳 嶋 大樹 岩田 彩香 本田 暉 大内 佑子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-26, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究の目的は、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のコア・行動的プロセスである価値づけ、コミットされた行為を測定する尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1における探索的因子分析の結果、本尺度は【動機づけ】・【行動継続】・【強化の自覚】の3因子から構成された。本尺度は、十分な内的整合性、収束的および弁別的妥当性が確認された。研究2では、構成概念妥当性を、共分散構造分析により検討した。その結果、【強化の自覚】・【動機づけ】が高まることで【行動継続】が高まり、主観的幸福感が増加することで、結果的に体験の回避が減少する可能性が示唆された。今後は、臨床群、異なる年齢層などの幅広い属性を持つ被験者を対象として、信頼性と妥当性を検討していくことで、本尺度の有用性を確認する必要がある。
著者
川井 智理 嶋 大樹 柳原 茉美佳 齋藤 順一 岩田 彩香 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.399-411, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
25

本研究は、Acceptance and Commitment Therapy(ACT)が注目する脱フュージョンという行動的プロセスを測定する尺度の作成、その信頼性と妥当性の検討、脱フュージョンに含まれるさまざまな行動の機能の重なりや相違点に基づいた妥当性の高い行動クラスを見いだすことを目的とした。40項目からなる尺度の原案を作成し、首都圏の学生を対象に横断調査を行った。探索的因子分析の結果、本尺度は【自分の自覚】・【選択と行動】・【現在との接触】の3因子18項目から構成されることが示され、脱フュージョンは三つの“機能”を含む可能性が明らかになった。また、それぞれを下位尺度とした場合、十分な内的整合性、収束的妥当性が確認された。今後は、本尺度を用いてACTが介入対象とするほかの行動的プロセスや臨床症状との関連性を検討し、精神的苦痛を緩和する脱フュージョンについての理解をより深めていく必要がある。
著者
嶋 大樹 Taiki Shima
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.39-52, 2020-12-15

本稿の目的は,関係フレーム理論の観点からメタファーを分析し,臨床場面での使用法を整理することであった。まず,関係フレーム理論と,メタファーと関連の深いアナロジーについて解説した。続いて,メタファーとは既有の知識と未知の出来事を関係づけることであり,それによる後者の機能変容が核心であることを解説した。最後に,臨床場面においてメタファーを使いこなすための留意点について整理した。その他
著者
嶋 大樹 川井 智理 柳原 茉美佳 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.73-83, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)
被引用文献数
1

本研究は、思考内容と現実を混同する「認知的フュージョン」を測定する質問紙である、改訂CFQ13項目版および7項目版の信頼性と妥当性の検討を目的とした。大学生対象の調査の結果、13項目版は改定前同様に2因子構造を示し、7項目版は原版同様に1因子構造を示した。項目分析の結果、各下位尺度は個別に扱うことが適切であると判断された。これまでは第1下位尺度が認知的フュージョン、第2下位尺度が認知的フュージョンから抜け出す「脱フュージョン」に相当するとされてきたが、本研究の結果、第2下位尺度は脱フュージョンの機能の一部に相当する可能性が示唆されたため、第1下位尺度および7項目版を「認知的フュージョン」、第2下位尺度を脱フュージョンの機能の一部としての「自己と思考の弁別」とみなすことが適切である。そして今後は、外顕的な行動指標との関連も検討することで、別の側面から妥当性の有無を確認する方法も必要であると考えられる。
著者
嶋 大樹 川井 智理 柳原 茉美佳 大内 佑子 齋藤 順一 岩田 彩香 本田 暉 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-13, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では、第三世代の認知・行動療法で重視される行動的プロセスである“アクセプタンス”を測定するAcceptance Process Questionnaire(APQ)を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。学生を対象に調査を実施し、因子分析を実行した結果、APQはアクセプタンスの中長期的結果を測定する【行動レパートリーの拡大】と【現実の感受】、行動内容を測定する【私的出来事から回避しない選択】と【リアクションの停止】の4因子パタンをもつ、13項目で構成された。APQは、十分な構造的妥当性、内的整合性を有し、全体でアクセプタンスを測定すると判断されたが、収束的妥当性、再検査信頼性に課題を残した。今後、再検査信頼性についてはサンプルサイズを増やして検討を進めるともに、日常生活下での行動傾向とAPQの尺度得点の関係性を検討し、その有効性を確認する必要がある。
著者
齊藤 早苗 嶋 大樹 富田 望 対馬 ルリ子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.339-348, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
23

過敏性腸症候群 (IBS) では, 腹部症状に関連する思考, 感情, 身体感覚などを回避する患者が多いことから, アクセプタンス & コミットメント・セラピー (ACT) の有用性が示唆されている. そこで, ACTの治療標的である体験の回避が, 消化器症状に関連した不安や腹痛頻度および腹満感頻度に及ぼす影響について検討する. 方法 : 便秘を自覚する女性244名 (IBSのRome Ⅲ診断基準を満たした128名を含む) に対して, 腹痛頻度および腹満感頻度, 体験の回避 (AAQ-Ⅱ), 消化器症状に関連した不安 (VSI-J), 抑うつ気分・不安気分 (DAMS) に関する質問紙調査を実施した. 結果 : 構造方程式モデリングの結果, 体験の回避が消化器症状に関連した不安に対して正の影響 (0.30) を示した. さらに, 消化器症状に関連した不安と腹痛頻度および腹満感頻度には有意な正のパス係数 (0.55) が示された (Χ2=1.13, df=2, p=0.57, GFI=0.998, AGFI=0.988, RMSEA=0.000). 結論 : 体験の回避は消化器症状に関連した不安を介して, 腹痛頻度および腹満感頻度に影響を及ぼすことが示された.
著者
柳原 茉美佳 嶋 大樹 齋藤 順一 川井 智理 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.225-238, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、ACTが注目する三つの自己の体験を測定する尺度を作成し、探索的因子分析と共分散構造分析を行うことで、その尺度の信頼性と妥当性を検討すること、そして、三つの自己に含まれるさまざまな行動の機能の重なりや相違点に基づいてより妥当性の高い行動クラスを見いだすことであった。33項目からなる尺度の原案を作成し、首都圏の大学生を対象に調査を行った。探索的因子分析の結果、本尺度は【アクティブ】・【概念化】・【視点取り】・【今この瞬間】の4因子20項目から構成されることが示され、さらに共分散構造分析の結果も踏まえて、三つの自己の体験は二つの行動クラスを含むことが明らかになった。また、それぞれを下位尺度とした場合、十分な内的整合性と収束的妥当性が確認された。今後は、本尺度を用いてACTが介入対象とするほかの行動的プロセスや臨床症状との関連性を検討し、精神的苦痛を促進・緩和する自己の体験についての理解をより深めていく必要がある。