著者
杉山 風輝子 岩田 彩香 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.367-377, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
11
被引用文献数
4

疼痛性障害を呈する患者に対し、マインドフルネスに力点を置いたAcceptance & Commitment Therapy(ACT)を導入したことにより、生活上の問題が大きく改善した事例を報告する。来院当初は、痛みを含む身体症状に対し、医療機関を頻回に受診するなどの援助希求を伴う回避行動をとっており、行動範囲の縮小、心配や反芻を繰り返すことによる抑うつ症状を呈していた。そこで、過去の失敗経験や未来の心配と距離をおく脱フュージョンや、自らの体験を回避せずに観察するアクセプタンスを導入したうえで、今を偏りなく観察するマインドフルネスの促進に力点を置いた。その結果、回避行動の随伴性をモニタリングし、習慣的行動をいったん停止するプロセスとしての自己および文脈としての自己の高まりや、身体症状をアクセプトしながら実生活の中で正の強化が得られやすい行動の拡大が認められ、特性不安や抑うつ感情も大幅に改善した。
著者
川島 一朔 灰谷 知純 杉山 風輝子 臼井 香 井上 ウィマラ 熊野 宏昭
出版者
日本マインドフルネス学会
雑誌
マインドフルネス研究 (ISSN:24360651)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.3-7, 2016 (Released:2022-02-22)
参考文献数
6

瞑想中に行われる注意制御と注意訓練(Attention training technique: ATT)実施中に行われる注意制御は類似していると推測されるが,これらが同質であるかは不明である。そこで,瞑想経験者がATT を実施している際の脳活動を明らかにし,先行研究との比較を試みた。瞑想の経験があり右利きである男女8 名に対し,開眼安静時およびATT 実施時の脳波が測定された。そして,sLORETA ソフトウェアで脳波の発生源を推定し,安静時とATT 実施時の間で比較がなされた。結果,安静時と比較し,注意転換時及び注意分割時に右背外側前頭前野におけるガンマ波の有意な増加が見られた。先行研究から,この結果は,瞑想時に見られる脳活動の一部と一致しており,特定の対象に対する注意維持を反映していると考えられる。今後も参加者数を増やし検討を続けるとともに,引き続き瞑想中の脳活動との比較を進める必要がある。