著者
加藤 大智 Jochim Ryan 佐古田 良 岩田 祐之 Gomez Eduardo Valenzuela Jesus 橋口 義久
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第61回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2009 (Released:2009-06-19)

吸血性節足動物の唾液は、抗凝固、血管拡張、発痛抑制、抗炎症などの作用をもつ“生理活性物質のカクテル”で、これを宿主に注入することにより効率よく吸血行為を行っている。本研究では、中米から南米北部におけるシャーガス病の主要なベクターであるサシガメTriatoma (T.) dimidiataの唾液腺遺伝子転写産物の網羅的解析により、新規生理活性物質の探索を行った。T. dimidiata唾液腺からmRNAを抽出、それを鋳型にcDNAライブラリーを作製し、無作為に464クローンの遺伝子転写産物の塩基配列を決定した。その結果、361クローン(77.8 %)が分泌タンパクをコードしており、このうち、89.2 %が低分子輸送タンパクであるリポカリンのファミリーに属するタンパクをコードしていた。特徴的なことに、分泌タンパクのうち、52.1 %がT. protracta唾液の主要なアレルゲンとして同定されているprocalinに相同性を示しており、このタンパクが吸血の際に重要な役割を果たしていることが示唆された。この他に、T. dimidiataの主な唾液成分として、コラーゲンおよびADP誘発性の血小板凝集阻害物質、トロンビン活性阻害物質、カリクレイン・キニン系の阻害物質、セリンプロテアーゼ阻害物質などと相同性を持つタンパクを同定することができた。本研究で得られた結果は、吸血性節足動物のユニークな吸血戦略を理解する上で有用な知見をもたらすものと考えられた。また、得られた遺伝子クローンから作製することができる組換えタンパクは、研究・検査試薬および新薬の素材分子として活用できるものと考えられた。
著者
加藤 大智 Jochim Ryan 佐古田 良 岩田 祐之 Gomez Eduardo Valenzuela Jesus 橋口 義久
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.26, 2009

吸血性節足動物の唾液は、抗凝固、血管拡張、発痛抑制、抗炎症などの作用をもつ"生理活性物質のカクテル"で、これを宿主に注入することにより効率よく吸血行為を行っている。本研究では、中米から南米北部におけるシャーガス病の主要なベクターであるサシガメ<I>Triatoma (T.) dimidiata</I>の唾液腺遺伝子転写産物の網羅的解析により、新規生理活性物質の探索を行った。<I>T. dimidiata</I>唾液腺からmRNAを抽出、それを鋳型にcDNAライブラリーを作製し、無作為に464クローンの遺伝子転写産物の塩基配列を決定した。その結果、361クローン(77.8 %)が分泌タンパクをコードしており、このうち、89.2 %が低分子輸送タンパクであるリポカリンのファミリーに属するタンパクをコードしていた。特徴的なことに、分泌タンパクのうち、52.1 %が<I>T. protracta</I>唾液の主要なアレルゲンとして同定されているprocalinに相同性を示しており、このタンパクが吸血の際に重要な役割を果たしていることが示唆された。この他に、<I>T. dimidiata</I>の主な唾液成分として、コラーゲンおよびADP誘発性の血小板凝集阻害物質、トロンビン活性阻害物質、カリクレイン・キニン系の阻害物質、セリンプロテアーゼ阻害物質などと相同性を持つタンパクを同定することができた。本研究で得られた結果は、吸血性節足動物のユニークな吸血戦略を理解する上で有用な知見をもたらすものと考えられた。また、得られた遺伝子クローンから作製することができる組換えタンパクは、研究・検査試薬および新薬の素材分子として活用できるものと考えられた。
著者
木曽 康郎 森本 将弘 岩田 祐之 山本 芳美 奥田 優 本道 栄一 前田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、受胎産物と子宮内膜との相互作用の解析を行い、(i)免疫担当細胞の特異性、(ii)子宮内サイトカインネットワーク、(iii)MHC発現の特殊性、(iv)補体調節因子、等の4点の変化を中心に複雑な母子境界領域の免疫応答機構と胎盤特異的情報との関連を総括的に捉え、胎盤の免疫抑制機構への環境因子の毒性的影響を明らかにし、適切なモデル動物を見いだすことであった。目的達成のため、生殖能力に多少なりとも問題が見られた多種多様なマウスモデルを使用した。これらと内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスと比較検討の結果、胎盤形成期に流産が誘起されたものは、両者の間で驚くべき相似性を見せた。すなわち、胎盤迷路部の発達不全、脱落膜の異常、ラセン動脈の異常、間膜腺の発達不全である。特に、迷路部の非化膿性炎症(胎子間葉組織肥大)、栄養膜巨細胞の分化異常、脱落膜細胞のアポトーシス不全、ラセン動脈血管内皮および中膜の肥厚、子宮NK細胞の異常、であった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果と考えられた。一方、サイトカインや成長因子およびそれらのmRNA発現は、むしろ内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスで上昇するなど、まったく異なった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果、母子境界領域で重要な免疫応答を担当する細胞(特に子宮NK細胞)にサブセットの変化を含めて、質的変化が誘導されたことを示唆した。今後の課題として、これまでの成果を基に絞り込んだ各因子を、胎盤および子宮内膜の各構成細胞株から作成した再構築組織様塊(オルガノイド)に導入し、これに生理活性を与え、妊娠現象を母子間免疫と胎盤特異情報との相互関連からブレークスルーさせたい。