著者
深沢 力 岩附 正明 平出 正孝
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.634-639, 1976-09-10 (Released:2009-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

湿式定性分析を結晶化学的又は構造化学的な新しい立場から見直し,新しい知見を得ることを目的として,まず銀イオンと水銀(I)イオンの系統的定性分析で得られる沈殿の状態を光学顕微鏡とX線回折計により調べた.その結果,本来正八面体か立方体の結晶が析出すべきと思われる塩化銀が条件によっては六角(又は三角)板状結晶として析出すること,塩化水銀(I)沈殿に過剰のアンモニァ水を作用させると,いったん生成した塩化水銀(II)アミドが六方晶系又は等軸晶系の水酸化水銀アミド2水和物Hg2NOH・2H2Oに変化してしまうこと,塩化銀共存下で塩化水銀(I)沈殿にアンモニア水を作用させると銀アマルガムが生成する場合があることなどが分かった.
著者
京谷 智裕 岩附 正明
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.287-300, 2000-09-10
被引用文献数
2

大気浮遊粒子状物質濃度が高く,内陸部盆地に位置する甲府市において,健康影響が強く懸念される粒径2.5μm以下の大気中微小粒子(PM2.5)と,従来から測定されてきた10μm以下の粒子(PM_<10>)の質量濃度を,1997年7月から1998年8月まで測定するとともに,著者らが開発した簡便な蛍光X線法を適用して,両者に含まれる各種元素濃度の特徴と一年を通じた変化を明らかにした。PM_<2.5>の質量濃度は,PM_<10>の61〜90%(年平均75%)を占め,微小粒子が粗大粒子(2.5〜10μm)の平均3倍の寄与を示すとともに,その年平均値(27μgm^<-3>)は米国のPM_<2.5>に関する新基準(15μgm^<-3>)を大きく上まわった。PM_<2.5>質量濃度はPM_<10>とよい相関を示し,平均としてはPM_<10>から推定できると思われた。S,Cl,Zn,Br,Pbの5元素は微小粒子中に偏在し,V,Cu,Kも微小粒子中に多く,人為的寄与が高いと推定された。特に,PM_<2.5>中のCu,Zn,Br,Pbは,地殻基準の濃縮係数(EF値)が自動車排出粒子の値と同様に極めて大きく,それらの大小関係も一致したことから,自動車の高い寄与が示唆された。また,SとVは夏季に,その他の元素は晩秋から初冬に高値を示し,それぞれ高い相関があった。Mg,Al,Si,Ca,Ti,Feの6元素は粗大粒子に多く含まれ,主に土壌起源とされたが,Caは土壌以外の寄与も推定された。PM_<10>におけるこれらの元素濃度の増大から黄砂の寄与を確認できた。また,Na,Cr,Mnは粗大粒子と微小粒子に同程度含まれ,主に土壌起源が推定されたが,Naは光化学反応が,Cr,Mnは土壌以外の起源が推定される時期があった。
著者
伊藤 醇一 岩附 正明 深沢 力
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.445-459, 1993-08-05
被引用文献数
3 3

炭化ケイ素には多数のポリタイプが存在し,通常の炭化ケイ素製品はこれらの混合物である.一方,JCPDSカードその他に記載されている炭化ケイ素の結晶学的データやX線回折データには必ずしも一貫性がなく,実際試料との不一致も見られ,各ポリタイプの同定を困難にしている.そこで本研究では,従来の炭化ケイ素の格子定数データをできるだけ多く集めて比較し,本来変わらないはずの六方格子のα軸長を,著者らの実験結果や文献値を参考に一定値(3.081Å)にして整理統一した.更に,代表的ポリタイプについて,この格子定数と原子配列データを用いて,面間隔とX線回折強度を計算して実験値とも比較した.これによりポリタイプ間の回折図形の差が明確になり,ポリタイプの同定が容易になった.