著者
深沢 力 岩附 正明 平出 正孝
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.634-639, 1976-09-10 (Released:2009-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

湿式定性分析を結晶化学的又は構造化学的な新しい立場から見直し,新しい知見を得ることを目的として,まず銀イオンと水銀(I)イオンの系統的定性分析で得られる沈殿の状態を光学顕微鏡とX線回折計により調べた.その結果,本来正八面体か立方体の結晶が析出すべきと思われる塩化銀が条件によっては六角(又は三角)板状結晶として析出すること,塩化水銀(I)沈殿に過剰のアンモニァ水を作用させると,いったん生成した塩化水銀(II)アミドが六方晶系又は等軸晶系の水酸化水銀アミド2水和物Hg2NOH・2H2Oに変化してしまうこと,塩化銀共存下で塩化水銀(I)沈殿にアンモニア水を作用させると銀アマルガムが生成する場合があることなどが分かった.
著者
武内 次夫 深沢 力 小田 昭午
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.86-92, 1961

バネ鋼(SUP6)製造の際その鋼塊に生ずる砂カミ(鋼塊表面および表面近くに生ずる非金属成分)の組成を明らかにするため,化学分析,X線回折,螢光X線分析など行ない,かつバネ鋼砂カミの生成原因について検討した。<BR>バネ鋼砂カミ成分は石英が極めて多く, その他クリストバライト, ムライトなどからなり造塊用耐火物の組成に似ていた。従来は鋼塊製造の際石英の生成は起りえないとし,このような場合砂カミは耐火物から来たものと判断されていた。しかしながら著者らの研究の結果,砂カミ成分中には耐火物に含まれていないマンガン,ストロンチウムなども含まれており,また石英:クリストバライトの比を考えると耐火物にくらべ極めて石英態ケイ酸分が多く,平均80:20で,最も多い場には92:8にも達した。一方,同じ方法により製造した炭素鋼に生じる砂カミは脱酸剤から生成したことが分析の結果明らかになった。<BR>以上の結果従来砂カミは鋼塊製造時耐火物その他から来たものと考えられていた見解に対し,砂カミ成分は大部分脱酸剤(フェロシリコンとシリコマンガンを用いた)の酸化生成物に由来するものと判断する。もしこの見解が正しいとすると脱酸過程において脱酸剤として用いたフェロシリコン,シリコマンガンなどから石英が生成するという新しい実験結果がえられる。
著者
深沢 力
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.454-456, 1959

著者は微量のバナジウムの定量にジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを用いよい結果をえ,諸種の試料に応用した.しかるに著者がこれらの研究に用いた呈色試薬ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムはE..Merck社の製品であり,国産品はいずれも使用できなかったことはすでに報告した.すなわち国産品は純度がわるく,また不純物の影響もあるのではないかと思われるが,これを用いた場合呈色溶液の色もうすく,多量の試薬を用いても本法に使用できるようなバナジウム量-吸光度関係曲線はえられなかった.またMerck製品を用いた場合でも試薬の使用量が多いほど呈色溶液の色は濃くなるが,あまり多いと呈色は不安定になり,吸光度のバラツキも大きくなった.また他の外国品については手許になく検討できなかった.その後G. Frederick Smith社(米国)製品および国産東京化成製品についてバナジウム定量に応用しうるかどうかを検討するために,バナジウム量-吸光度関係曲線を作成し,また呈色溶液の可視部の吸収曲線および試薬の赤外部の吸収曲線などを測定して試験した線果, G. Frederick Smith社製品および最近の東京化成品はMerck品と同様に本法に使用できることがわかった.
著者
伊藤 醇一 岩附 正明 深沢 力
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.445-459, 1993-08-05
被引用文献数
3 3

炭化ケイ素には多数のポリタイプが存在し,通常の炭化ケイ素製品はこれらの混合物である.一方,JCPDSカードその他に記載されている炭化ケイ素の結晶学的データやX線回折データには必ずしも一貫性がなく,実際試料との不一致も見られ,各ポリタイプの同定を困難にしている.そこで本研究では,従来の炭化ケイ素の格子定数データをできるだけ多く集めて比較し,本来変わらないはずの六方格子のα軸長を,著者らの実験結果や文献値を参考に一定値(3.081Å)にして整理統一した.更に,代表的ポリタイプについて,この格子定数と原子配列データを用いて,面間隔とX線回折強度を計算して実験値とも比較した.これによりポリタイプ間の回折図形の差が明確になり,ポリタイプの同定が容易になった.