著者
岩﨑 真一
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.216-223, 2023-06-30 (Released:2023-08-01)
参考文献数
18

Dizziness and imbalance are the most common complaints in older people, and are a growing public health concern. Although the causes of dizziness in older people are multifactorial, peripheral vestibular dysfunction is one of the most frequent causes. Every factor associated with the maintenance of postural stability deteriorates with aging. Age-related deterioration of peripheral vestibular function has been demonstrated through quantitative measurements in the vide head impulse test and evaluation of the vestibulo-collic reflex by testing of vestibular evoked myogenic potentials. Age-related decline of vestibular function has been shown to be correlated with the age-related decrease in the number of vestibular hair cells and neurons. Other factors associated with postural stability, such as somatosensation, visual acuity, cerebellar function, and muscle strength also decline with age. In examining older patients with dizziness or imbalance, it is important to assess each factor associated with postural stability. To improve postural stability, it is recommended that strategies be devised to improve the impaired functions based on the results of the above assessments.
著者
岩﨑 真一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.14-21, 2018-01-20 (Released:2018-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1

一側の前庭障害であれば, いわゆる前庭代償によりめまい感や平衡障害は徐々に軽快するが, 両側の前庭障害では前庭代償が働かず, 慢性のふらつきや動揺視が持続する. この両側前庭障害に対する治療を目指して, さまざまな基礎研究や臨床研究が進められている. 本稿では, 両側前庭障害に対して現在進められている研究のうち, 1) 人工前庭, 2) ノイズ前庭電気刺激, 3) 内耳再生の研究について概説する. 両側前庭障害に対する治療の一つとして, 人工前庭の開発が進められている. 人工前庭は, 3つの半規管の膨大部に電極を埋込み, 頭部に装着した加速度計によって解析した頭部の動きを基に, 各々の半規管の刺激を行うものである. 2000年頃より開発が開始され, 現在はヒトを対象とした臨床試験が欧米で進められるところまで来ている. 残存する前庭機能を底上げする治療の一つとして経皮的ノイズ前庭電気刺激 (ノイズ GVS) を利用した治療の開発を進めている. ノイズ GVS は, 耳後部に貼付した電極より微弱なノイズ様の電流を流すことで前庭神経を刺激する方法である. これまでの研究で, ノイズ GVS の短期刺激 (30秒間) では, 両側前庭障害患者の約9割において体平衡機能の改善を認めており, 長期刺激 (30分間, 3時間) では, 刺激終了後少なくとも数時間は体平衡機能改善効果が持続することが判明している. 内耳の再生医療を目指した研究では, 既に ES 細胞, iPS 細胞から有毛細胞の作成が可能となっており, 再生医療研究は目覚ましく進展しているが, 臨床応用にあたっては, 内耳への到達手段が問題となっている. 前庭上皮の特徴としては, 蝸牛有毛細胞とは異なり, 成熟した哺乳類の動物においてもある程度の再生能を有することが挙げられる. この自発再生を促進する目的で, さまざまな薬剤の投与が試みられており, 複数の栄養因子が再生を促進する効果があることが判明している.
著者
小池 毬子 樫尾 明憲 尾形 エリカ 赤松 裕介 小山 一 浦中 司 星 雄二郎 岩﨑 真一 山岨 達也
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.195-203, 2021-04-28 (Released:2021-05-19)
参考文献数
29

要旨: 当科で経験した人工内耳埋込術を行った蝸牛神経低形成または欠損を認めない小児内耳奇形例23例を Sennaroglu 分類による内耳奇形に分類し, 就学期の聴取能や語彙理解能力及び就学状況について報告した。内耳奇形の内訳は, incomplete partition type I (IP-I) が7例, IP-II が7例, IP-III が1例, cochlear hypoplasia III (CH-III) が1例, cochlear hypoplasia IV (CH-IV) が4例, common cavity (CC) が3例であった。IP-II 症例では聴取能, 語彙理解能力ともに良好な症例を多く認めた。IP-I, CC 症例では症例間での差はあるものの, 聴取能, 語彙理解能力ともに良好という症例も存在した。一方, CH-IV 症例では聴取能が良好であっても, 語彙理解能力はいずれも不良であった。就学時普通学級選択状況については他の内耳奇形を伴わない症例の報告と大きな違いはなかった。予後の不確実性はあるが, 内耳奇形の種類に関わらず良好な成績をおさめる症例は存在し, 人工内耳手術は選択肢の一つとして考慮されるべきと思われた。