著者
山岨 達也 越智 篤
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.52-62, 2014-02-28 (Released:2014-11-06)
参考文献数
46

要旨: 加齢に伴う聴覚障害では, 末梢聴覚, 中枢聴覚, 認知の三つの機能が複合的に障害されている。老人性難聴では聴力は高音域から閾値上昇し, 難聴の進行は年と共に加速し, 個人差が大きいことが知られる。語音明瞭度は聴覚レベルに応じて悪化するが, 高齢になるほど聴力レベルよりも悪化する傾向にある。耳音響放射や聴性脳幹反応は主に聴力レベルに応じて障害されるが, 年齢自体の影響も見られる。Gap detection などで評価できる時間分解能も加齢により悪化する。難聴のために日常生活上の会話に不自由を感じる場合には補聴器装用が治療の第一選択となる。補聴効果が無くなった場合は人工内耳が高齢者においても有用であるが, 装用開始年齢が高齢であるほど術後の聴取成績が悪い傾向にある。加齢に伴う聴覚障害に対しては不要な強大音曝露の回避や動脈硬化の予防や治療などが有用と考えられる。また聴覚に基づく認知訓練が時間分解能の改善に役立つ可能性も示唆されている。
著者
石浦 良平 飯田 拓也 柿木 章伸 安藤 瑞生 吉田 昌史 齊藤 祐毅 山岨 達也 光嶋 勲
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.76-78, 2017-04-25 (Released:2017-06-16)
参考文献数
7

外耳道癌は稀かつ予後不良な疾患である。その危険因子として過剰な耳かきが臨床上推測されているが,統計学的に検討した報告は少ない。今回,我々は当科で加療を行った外耳道癌患者14例を対象とし年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質,罹患側,病理組織について検討した。また,本研究に同意を得た健常人69名を対象とし,年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質について調査し患者群と比較検討した。その結果,50歳未満の若年群における患者群と健常人群間において,有意に耳かき頻度,および硬質素材を用いる率が高かった。今回の結果から,過剰な刺激の耳かきが外耳道癌発生を誘発する可能性が示唆された。
著者
藤枝 重治 坂下 雅文 徳永 貴広 岡野 光博 春名 威範 吉川 衛 鴻 信義 浅香 大也 春名 眞一 中山 次久 石戸谷 淳一 佐久間 康徳 平川 勝洋 竹野 幸夫 氷見 徹夫 関 伸彦 飯野 ゆき子 吉田 尚弘 小林 正佳 坂井田 寛 近藤 健二 山岨 達也 三輪 高喜 山田 奏子 河田 了 寺田 哲也 川内 秀之 森倉 一朗 池田 勝久 村田 潤子 池田 浩己 野口 恵美子 玉利 真由美 広田 朝光 意元 義政 高林 哲司 富田 かおり 二之宮 貴裕 森川 太洋 浦島 充佳
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.728-735, 2015-06-20 (Released:2015-07-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

これまで本邦における慢性副鼻腔炎は好中球浸潤が主体で, 内視鏡鼻副鼻腔手術とマクロライド少量長期投与にてかなり治療成績が向上してきた. しかし2000年頃からそれらの治療に抵抗性を示し, 易再発性の難治性副鼻腔炎が増加してきた. この副鼻腔炎は, 成人発症で, 嗅覚障害を伴い, 両側に鼻茸があり, 篩骨洞優位の陰影があった. 末梢好酸球も多く, 気管支喘息やアスピリン不耐症の合併もあった. このような副鼻腔炎の粘膜には多数の好酸球浸潤が認められていたため, 好酸球性副鼻腔炎と命名された. 好酸球性副鼻腔炎は, 徐々に増加傾向を示してきたが, 好酸球性副鼻腔炎の概念, 診断基準はあまり明確に普及していかなかった. そこで全国規模の疫学調査と診断ガイドライン作成を目的に多施設共同大規模疫学研究 (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study: JESREC Study) を行った. その結果, 両側病変, 鼻茸あり, CT 所見, 血中好酸球比率からなる臨床スコアによる簡便な診断基準を作成した. さらに臨床スコア, アスピリン不耐症, NSAIDs アレルギー, 気管支喘息の合併症, CT 所見, 血中好酸球比率による重症度分類も決定した. 4つに分類した重症度分類は, 術後の鼻茸再発と有意に相関し, 最も易再発性かつ難治性の重症好酸球性副鼻腔炎はおよそ全国に2万人いることが判明した. 治療法については経口コルチコステロイド以外まだ確立されておらず, 早急なる対応が急務と考えている.
著者
山岨 達也 菊地 茂 八木 昌人 菅沢 正 原田 勇彦
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.41-50, 1992
被引用文献数
18 1

We studied 50 patients with acute low-tone sensorineural hearing loss (ALHL) who were examined at the Department of Otolaryngology, University of Tokyo, and followed up for 18 months or more. We investigated the prognosis of hearing loss within 3 months after onset, rate of recurrence during long-term follow-up, interval between the first and the second episodes of hearing loss or between onset and the time when the diagnosis of Meniere's disease was made, and factors affecting prognosis.<br>The results were as follows.<br>1. Within the initial 3 months of follow-up, hearing loss continued to fluctuate in 5 patients. In the remaining 45, hearing returned to normal in 34, improved without returning to normal in 6, showed no marked change in 4, and became worse in one.<br>2. In long-term follow-up, the recurrence of hearing loss without vertigo occurred in 16 patients, and 5 others were eventually diagnosed as having Meniere's disease. The average interval between the first and second episodes of hearing loss was 9.2 months, and the diagnosis of Meniere's desease was made an average of 27 months after onset.<br>3. Recurrence was not significantly related to the initial prognosis of hearing loss.<br>4. Within the initial 3 months of follow-up, the prognosis of hearing loss was significantly better in patients whose hearing loss at 1kHz was within 20dB, and tended to be better in females and in patients attending within one week of onset. Long-term follow-up showed that the rate of recurrence was significantly lower in patients aged 40 years or more, and tended to be lower in patients who visited the hospital within one week of onset or whose hearing loss at 1kHz was within 20dB.<br>5. There were no significant differences between patients with single and recurrent attacks with respect to sex, subjective symptoms, and results of the glycerol test and electrocochleography.<br>ALHL tends to recur without any relationship to the initial prognosis of hearing loss. Since it is still difficult to predict whether or not hearing loss will recur, long-term follow-up is necessary even in patients with good initial prognosis.
著者
樫尾 明憲 山岨 達也
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.191-196, 2010 (Released:2011-11-30)
参考文献数
16

酸化ストレス、ミトコンドリア遺伝子障害と老化の関連が示唆されている。我々はPolgおよびゲルマニウム慢性摂取マウスという2つのミトコンドリア障害モデルで、聴覚系の変化を検討し、加齢に伴う有意な聴力閾値上昇・蝸牛組織の変性を確認した。ゲルマニウム摂取モデルでは蝸牛でミトコンドリア関連遺伝子発現低下を認め、その機能低下が蝸牛組織変性・難聴につながると考えられた。次に抗酸化剤であるビタミンC合成能欠損マウス(SMP30/GNL KOマウス)を用い、ビタミンCの投与量による聴覚系の変化を検討した。ビタミンC制限は蝸牛内ビタミンC濃度低下、聴力閾値上昇とラセン神経節細胞の減少を来たした。しかし、ビタミンC補充は野生型マウスでも蝸牛内ビタミンC 濃度の上昇はなく、聴力・ラセン神経節の保護効果はなかった。ビタミンCの欠乏は老化に伴う難聴を加速させるが、補充は難聴の進行を予防できないことが示唆された。
著者
加我 君孝 狩野 章太郎 伊藤 健 山岨 達也
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

(1)対象の選定東京芸術大学音楽部の学生のうち絶対音感を持つ学生と東京大学医学部の絶対音感を持たない学生を対象とした。被験者の聴覚中枢のどこが関係するかを解剖学的に明らかにすべく、脳のMEGで調べた。(2)方法音源定位については聴覚心理学的には、a.頭蓋内の音像が正中よりのずれの程度の認知を調べる音源定位法と、b.左右45度づつの範囲内にスピーカーを10度おきに配置して調べる音源定位法、c.バイオーラルステレオ録音を行い、音像移動法の3つについて改良を加えて用いた。aについてはリオン社製の旧式モデルを改良した。bとcについてはコンピュータ処理する方法を開発した。すでに脳磁図は東大病院検査部にあるフィンランド製のWhole head型を用いて、双極子の位置を調べた。脳の解剖と機能の両方から調べた。(3)結果1)絶対音感を持つ被験者の方向感も音源定位も非絶対音感者に比べ有意に域値が低いことがわかった。2)MEGでは絶対音感者は左右の側頭平面のより限局した部分に聴覚中枢が限局していることがわかった。