著者
入口 陽介 小田 丈二 冨野 泰弘 依光 展和 園田 隆賀 岸 大輔 橋本 真紀子 中河原 亜希子 霧生 信明 清水 孝悦 水谷 勝 山里 哲郎 並木 伸 長濱 正亞 山村 彰彦 細井 董三
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.779-793, 2020-05-25

要旨●スキルスとは,病理組織学的に癌組織の間質に線維性組織増生が顕著な状態の総称であり,スキルス胃癌は臨床的に「胃癌取扱い規約」の肉眼型の4型を指すことが多い.そこで,本邦における4型胃癌の経時的な発生頻度,形態学的・病理組織学的特徴を検討した.全国集計による進行胃癌の肉眼型別・年次推移をみると,4型胃癌は,1984年度13.8%から2014年度6.5%に減少していた.また,当センターにおいて過去29年間に経験した4型胃癌93例を対象として,原発巣(粘膜内進展部)の部位と背景粘膜から,①胃底腺型,②腺境界型,③幽門腺型の3型に分類し,2007年度を境に前期45例,後期48例に分けて検討した.後期では胃底腺型が特に減少し,腺境界型,幽門腺型の割合が増加していた.胃底腺型は,前後期ともに原発巣の大きさが25cm2以下で陥凹は深く組織型は未分化型腺癌が多かった.一方,腺境界型は,前後期ともに原発巣の大きさが50cm2以上で陥凹は浅かったが,後期では組織混在型の割合が増加していた.幽門腺型は原発巣の大きさに比較して粘膜下層以深の面積は大きくなく,前後期ともに組織混在型が約30%に認められた.H. pylori感染状態の検討では,前期はすべて現感染であったが,後期では現感染42例,未感染2例(胃底腺型2例),除菌後4例(胃底腺型1例,腺境界型2例,幽門腺型1例)であった.以上から,スキルス胃癌,4型進行胃癌の正確な診断のためには,原発巣の部位・背景粘膜の相違による形態学的・病理組織学的特徴を十分に理解して,スクリーニング,精密検査を行うことが重要である.