著者
河野 孝幸 内山 幹男 岸本 俊夫 河田 正興 仲本 博 太田 茂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.79-84, 2009

本研究の目的は,触知覚モールスを盲聾者の新たなコミュニケーション手段として利用することの有用性を検証することである.耳介に密着させた振動子と触知覚信号発生装置を用いて12人の健常者を対象に実験した.モールス符号は,短点と長点の組み合わせで構成されている.触知覚モールスも同様に振動時間に長短の差がある2種類の振動信号(短点,長点)のいずれかを出力することを1〜4回繰り返し,一つの文字を表現する.各点の長さや点相互の間隔は短点提示時間の整数倍に設定している.基本となる短点提示時間を200msに設定して英字26文字を提示し,触知覚モールスと前回の実験で検証した触知覚点字との比較,また,文字間の間隔をモールス通信の基準値(短点提示時間の\3倍の600ms)の2倍,3倍と長くした場合との比較実験を行った.その結果,正解率は触知覚モールス:32.1±6.9%,触知覚点字:100%で,触知覚点字の方が有意に高かった(P<0.01).また,文字間の間隔を基準値の2倍にした場合は97.1±3.7%,3倍にした場合は100%となり,長く間隔を空けた方が有意に高かった(P<0.01).結論として,触覚が正常なら振動でモールス情報が伝達できること,また,モールス符号の初心者については,文字間の間隔を長くすることにより正確さの向上が期待できることがわかった.この結果は,触知覚モールスが盲聾者の新たな通信手段となり得る可能性を示唆している.実験で得た知見を携帯電話に応用すれば,盲聾者が単独で使用できる携帯電話が実現でき,新たなコミュニケーション手段になることが期待できる.
著者
"品川 佳満 岸本 俊夫 太田 茂"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.553-563, 2006
被引用文献数
2

"赤外線センサを利用した高齢者見守りシステムに応用可能な自動緊急通報を行うためのアルゴリズムを開発した.本研究で考案した自動緊急通報アルゴリズムは,センサの無応答(全センサがOFF状態)時間をリアルタイムにモニタするものである.クラスタ分析により求めた過去の行動パターン別センサ応答分布と現時刻の無応答時間とを比較し,平素よりセンサの無応答時間が長いと判断した場合,通報を行う.独居高齢者4名の長期計測データを用いてシミュレーションを行った結果,1ヶ月あたり1〜3回程度の通報が認められた.また,無応答状態になってから通報に至るまでの時間は,日中では平均120〜240分程度要することが分かった.シミュレーションで検知した異常は,必ずしも被験者の健康の異常を示してはいなかったが,本研究は,動けなくなるなどの事態発生から,平均2〜4時間程度で異常検出ができることを明らかにした."