著者
岸本 良美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.121-126, 2021 (Released:2021-06-14)
参考文献数
14

食品に含まれる機能性成分の疾病予防効果を解明するためには, 基礎研究, 臨床研究, 疫学研究を含めた多面的な検討が必要である。筆者は主にポリフェノールとカロテノイドに着目し, 低比重リポタンパク質 (LDL) の酸化や炎症の抑制, 血管機能改善など多様な機能により動脈硬化性疾患の予防につながる可能性を検討してきた。また, 日本におけるこれらの摂取量や摂取源についてはほとんど知見がなかったことから, 日本でよく食される食品の総ポリフェノール量を測定, データベースを構築し, いくつかの集団においてポリフェノール摂取量を推定した。さらに, 健康診断受診者や冠動脈造影検査受診者を対象にした横断研究や, 地域住民を対象とした前向きコホート研究において, ポリフェノール摂取量が酸化ストレス指標や, 冠動脈疾患リスクと負に関連することを報告した。これらの知見は, 機能性食品成分による動脈硬化予防作用の解明に資するとともに, 日本人における食と健康に関するエビデンスとしても重要であると考えられる。
著者
近藤 和雄 飯田 薫子 谷 真理子 岸本 良美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

健常成人を対象に、高脂質食、高糖質食を摂取させた試験において、血清脂質、血糖値の変動とともに、一過性の血管内皮機能の低下や、高感度CRP等の炎症指標の上昇が認められた。果実由来のポリフェノールを同時摂取させた場合、いくつかの指標において改善が認められた。培養細胞を用いて、脂肪酸やグルコース、LPS刺激下でポリフェノールを作用させた場合、炎症性サイトカイン等の発現が抑制され、NF-κBやPKC経路の関与が示唆された。本研究より、食後の血糖や血清脂質の増加により惹起される炎症に関して、食品に含まれるポリフェノールが予防的に働く可能性が示された。