著者
岩下 武史 美舩健 島崎 眞昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.1-10, 2007-05-15
被引用文献数
5

マルチグリッド法において,スムージング,補間・制約演算を陽的に行わない新しい方法:陰的マルチグリッド法を提案する.同手法では,マルチグリッド法における各レベルの方程式を統合化し,1つの大きな連立一次方程式として主に前処理付きクリロフ部分空間反復法により解く.その結果,従来のマルチグリッド解法の応用範囲を広げ,様々な前処理手法との併用が可能となる.同手法の基礎概念,実装法を記述し,その有効性について電磁界解析における反復法の性質との類似性から説明する.さらに,差分解析による数値解析において,同手法がコースグリッドコレクションの効果を有し,グリッドサイズによらない収束性を実現していることを示す.This paper proposes a new multigrid method, which is called "Implicit correction multigrid method". In this method, linear systems of equations on all levels in a multigrid method are integrated into one large linear system of equations. When this integrated linear system is solved by using preconditioned iterative solvers, an effect of coarse grid correction is expected to be implicitly involved. Since any preconditioning techniques are used for the integrated linear system, the proposed method can extend application areas of conventional multigrid solvers. This paper describes the basic concept and the implementation way of the implicit correction multigrid method. Furthermore, we explain the effect of the proposed method by introducing a special characteristic of an iterative method observed in an electromagnetic field analysis. Finally, numerical tests based on a finite difference analysis confirm that the proposed method involves an effect of coarse grid correction and attains a convergence rate independent from the grid-size.
著者
古井 陽之助 島崎 眞昭
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.49-50, 1992-09-28

アプリケーション内部の並列性を活用しマルチプロセッサで実行することによって処理効率向上を図る並列処理技術は、現在最も盛んに研究されているテーマの一つである。本研究では特に共有メモリ型マルチプロセッサ・マルチユーザ・マルチジョブ環境に議論の焦点を絞る。マルチユーザ・マルチジョブ環境でプロセッサ間の負荷分散を図るにはOSによるスケジューリングが必要であり、オーバーヘッドが非常に大きい。逆に、負荷分散を犠牲にして処理の粒度を相対的に大きくすることによってオーバーヘッド削減を図ると、システム全体の効率は上がるがジョブごとの処理効率は逐次処理のそれに近づいてしまう。このような状況をある程度解消する方法として、マルチプロセッサをクラスタ化し、OSはクラスタ単位のスケジューリングのみ行なうようにして、クラスタ中にあるプロセッサのスケジューリングはアプリケーション自身に任せることでオーバーヘッドを抑える、という方式が考えられる。本稿では、クラスタ化された共有メモリ型マルチプロセッサでdoall型ループの並列処理を行なった場合の実行効率をシミュレーションによって評価し、クラスタ化方式の可能性を論じる。