著者
島田 博匡
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.122-127, 2007 (Released:2008-02-12)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

三重県尾鷲地域のウラジロに覆われた再造林放棄地を森林再生するために,低コストで更新木に対するシカ食害を防止する手法の確立が求められている。再造林放棄地内でウラジロを坪刈してヒノキ苗木を植栽し,坪刈地内へのシカの侵入と植栽木の成長を2~3年間調査した。シカの坪刈地内への侵入頻度は斜面傾斜が急であるほど低い傾向があり,植栽木の樹高成長は植栽初年度の食害程度や2年目以降の頂枝食害頻度が低いほど大きい傾向が認められた。そのため,急傾斜の斜面部では,この手法によりシカ食害を防ぎつつ植栽木を育成できると考えられた。
著者
島田 博匡
出版者
三重県林業研究所
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-49, 2010 (Released:2011-07-20)

三重県林業研究所実習林のヒノキ人工林と広葉樹二次林において、自動撮影カメラを用いて中大型哺乳類相を調査した。調査期間は2006年8月から2007年11月までの約15ヶ月間で、総カメラ稼働日数は695日であった。その結果、ニホンリス、ニホンノウサギ、タヌキ、イタチ属の1種、ホンドテン、ニホンアナグマ、イエネコ、ニホンジカ、イノシシの9種が確認された。近年の目撃情報があるニホンザル、アカギツネは撮影されなかった。
著者
島田 博匡 野々田 稔郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.46-50, 2009 (Released:2009-03-24)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

シカの生息密度が高い地域内で強度間伐 (本数間伐率47.5∼71.2%) を行った針葉樹人工林に獣害防護柵を設置し, 間伐後の広葉樹侵入に及ぼすシカ採食の影響を調査した。獣害防護柵内では先駆種を中心とする多数の広葉樹が間伐後に侵入し, その生残率は高く, 樹高成長も良好であった。しかし, 柵外では柵内よりも広葉樹の侵入が少なく, 生残率も低かったため, 2年後まで生残した個体はわずかであった。このことから, 柵外ではシカの採食により間伐後の広葉樹侵入が強く阻害されていると考えられた。シカ生息密度が高い地域において, 人工林の針広混交林への誘導を目指すには, 強度間伐を行った場合にシカ採食が顕在化する生息密度の解明と施業地へのシカの集中を防ぐ簡便な手法の開発が必要である。
著者
島田 博匡
出版者
三重県科学技術振興センター林業研究部
雑誌
三重県科学技術振興センター林業研究部研究報告 (ISSN:13480510)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-12, 2006-03
被引用文献数
1

強度間伐後の人工林への高木性広葉樹の侵入や成長,それらに影響を与える要因を明らかにする目的で,46~50年生ヒノキ人工林において本数率50%程度の間伐を行う間伐区と行わない無間伐区をそれぞれ2箇所ずつ設け,間伐前,間伐後2年間に林床に出現する木本種の生残,成長を調査した。間伐後に間伐区での木本種本数は大幅に増加したが,針広混交化を考える上で重要な高木性広葉樹の本数はごくわずかであった。間伐2年後になって新たに出現した実生も多数みられたが,前年までに出現した実生の消失も多いために木本種本数は1年目とほとんど変わらず,樹高成長もごくわずかであった。これら要因として種子供給や林床の光環境,土壌状態などが更新,定着に十分ではなかったことが考えられた。シカの影響については調査期間中に新たに出現した個体に対する食害率は高くないため,現段階では踏みつけに起因する土壌攪乱により更新促進と実生死亡の両方に影響している可能性があると考えられた。