著者
島田 博匡 野々田 稔郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.46-50, 2009 (Released:2009-03-24)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

シカの生息密度が高い地域内で強度間伐 (本数間伐率47.5∼71.2%) を行った針葉樹人工林に獣害防護柵を設置し, 間伐後の広葉樹侵入に及ぼすシカ採食の影響を調査した。獣害防護柵内では先駆種を中心とする多数の広葉樹が間伐後に侵入し, その生残率は高く, 樹高成長も良好であった。しかし, 柵外では柵内よりも広葉樹の侵入が少なく, 生残率も低かったため, 2年後まで生残した個体はわずかであった。このことから, 柵外ではシカの採食により間伐後の広葉樹侵入が強く阻害されていると考えられた。シカ生息密度が高い地域において, 人工林の針広混交林への誘導を目指すには, 強度間伐を行った場合にシカ採食が顕在化する生息密度の解明と施業地へのシカの集中を防ぐ簡便な手法の開発が必要である。
著者
恩田 裕一 辻村 真貴 野々田 稔郎 竹中 千里
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 = JOURNAL OF JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY & WATER RESOURCES (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.688-694, 2005-11-05
被引用文献数
9 18

近年,林業労働力の不足,材価の低迷のため,適切に管理されずに放置され荒廃した林分が年々増大している.従来の研究によれば,人工林,特にヒノキ一斉林では,樹冠の閉鎖が進むと下層植生が消失し,浸透能が低下することが知られていたが,従来の浸透能測定法では,裸地化した林床における浸透能を正確に表現していない恐れがある.そこで本研究では,冠水型浸透計,霧雨散水型浸透装置,樹幹上から散水をする大型の浸透計を用い林内における浸透能の把握をすることを目的に研究を行った.その結果,霧雨散水型が294-670 mm/h,冠水型浸透計での測定値は,210-456 mm/h程度とかなりばらつきが多く,また,非常に高い浸透能を示す.これに対し,降雨強度35-45 mm/hの人工降雨を4回,林冠上から散水した結果,浸透能は26-34 mm/hと一桁低い値で比較的安定した値を示した.人工降雨型の浸透試験器は,スプリンクラーにより樹冠上から散水されるために,雨滴径も大きく,林内雨を再現していると考えられるため,人工降雨型を用いた場合の値が,林床が裸地化したヒノキ林の浸透能を示すとするのが妥当であり,他の方法では過大な値を得る結果となる可能性が高い.