56 0 0 0 OA 風邪の鑑別診断

著者
島田 茉莉
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.172-175, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
7

風邪症候群は症状により「非特異的上気道炎型」,「急性鼻・副鼻腔炎型」,「急性咽頭・扁桃炎型」,「急性気管支炎型」の4つに分類される.非特異的上気道炎型は鼻・咽頭・咳症状が急性かつ同時に同程度現れる.急性鼻・副鼻腔炎型は鼻症状が主体であり,一旦軽快した症状が発症7~10日後に再増悪した場合は細菌性への移行を考慮し抗菌薬の使用を検討する.急性咽頭・扁桃炎型ではRed Flag疾患を見逃さないことが大切である.急性気管支炎型では,遷延する咳嗽の鑑別として感冒後咳嗽が多いが見逃しやすいものとして薬剤性,逆流性食道炎,咳喘息,マイコプラズマ肺炎,肺結核,百日咳などがある.その他,初期症状が風邪に類似する鑑別疾患として,悪性リンパ腫,膠原病,虚血性心疾患,大動脈解離,不明熱(感染性心内膜炎,腎盂腎炎)などが挙げられ,それぞれ丹念な問診や適切な追加検査を通じて確実な診断を心がける必要がある.
著者
上村 佐恵子 島田 茉莉 伊藤 真人 西野 宏
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-51, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
16

4 歳 8 カ月女児。夜間の息苦しさで頻回に覚醒するため,睡眠時無呼吸症候群の疑いで受診した。後鼻孔を閉塞する咽頭扁桃肥大,アレルギー性鼻炎の所見に合致する鼻粘膜所見がみられたが,気道閉塞をきたすような口蓋扁桃肥大はなかった。肥満と低身長を認め,易疲労感の訴えがあったため,小児科で精査を依頼した。低身長に対する検査の結果,橋本病と診断され,甲状腺ホルモン補充療法が開始された。治療 2 週間で夜間覚醒の消失を認め,治療 3 カ月で甲状腺ホルモン値は正常化,鼻閉の消失といびきの改善を認めた。簡易終夜睡眠検査上は,初回の無呼吸低呼吸指数(AHI:回/時)53.8,治療 5 カ月後21.9,治療10カ月後26.4,最終的に治療16カ月後に AHI 8.5まで改善した。睡眠時無呼吸症候群と甲状腺機能低下症の症状は類似点が多く,低身長や易疲労感などの甲状腺機能低下症の臨床症状にも留意することが必要である。