著者
關 匡彦 福島 英賢 宮崎 敬太 北岡 寛教 川井 廉之 瓜園 泰之 奥地 一夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.819-822, 2015-09-30 (Released:2016-01-21)
参考文献数
11

症例は56歳,男性。自殺企図によりトイレ用洗浄剤(9.5%塩酸)500mLとアルコールを服用した。来院時の上部消化管内視鏡検査でRosenow分類Ⅲ度の腐食性食道炎を認め,胃は内視鏡が食道胃接合部を通過しなかったため,観察不能であった。腹部CTでは胃壁の肥厚を認めたが,腹水やfree airは認めなかったため保存的治療としたが,第2病日の腹部CTで腹水貯留,free airを認め,消化管穿孔の診断のもと緊急開腹術を施行した。開腹下に下部食道から幽門輪にかけて腐食壊死しており菲薄化していた。可能な範囲で壊死した胃を摘出したが,術後7日目の気管支鏡検査で食道からの腐食の深達と思われる気管の潰瘍を認め,突然の気道出血で死亡した。酸誤飲により高度のアシドーシス,Rosenow分類Ⅲ度の食道腐食に至り,多臓器不全,腹膜炎から死亡に至りうる症例では早期の手術療法を検討する必要があると考えられる。
著者
川井 廉之 星 永進 高橋 伸政 池谷 朋彦 村井 克己
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1978-1981, 2011

症例は30歳,男性.前医にて緊張性気胸に対する胸腔ドレナージ後に血胸を呈し,医原性の血胸が疑われ当センターへ緊急搬送された.胸部X線写真にて右胸腔に大量胸水貯留を認め,ドレーンからの出血が続いていたため,血気胸の診断で胸腔鏡下緊急止血術を施行した.出血は肺尖部対側の胸壁の断裂した血管からであり,自然血気胸と診断した.術後,再膨張性肺水腫を発症したが,その後の経過は良好で,術後第7病日に軽快退院となった.自然血気胸の中には本例のように初回胸部X線写真で胸水貯留が認められない症例があり,早期の診断と治療のためには,ドレナージ後の注意深い経過観察が重要である.
著者
多田 祐介 小嶌 彩乃 高野 啓佑 淺井 英樹 川井 廉之 瓜園 泰之 福島 英賢
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.761-765, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
18

症例は57歳,男性。陰茎に金属リングを装着し,抜けなくなったが放置していた。Day 10に陰茎痛が増悪したため,近医受診し,同院での対応が困難なため奈良県立医科大学附属病院高度救命救急センターに紹介となった。陰茎根部にステンレス製の幅15mm,厚さ7mmの金属リングが装着されていた。リング周囲の皮膚は潰瘍形成し,陰茎・陰囊はうっ血様で,両鼠径部に疼痛・熱感を伴う発赤を認めた。通常の工具やリングカッターでは切断不可能であったため,院内駐留型救急隊(ワークステーション)経由で救助隊を要請した。装備の空気鋸で絞扼物を切断し,所要時間8分で絞扼を解除できた。創治癒および鼠径部の蜂窩織炎の加療目的に入院し,Day 43に勃起障害・排尿障害を残すことなく自宅退院となった。硬性陰茎絞扼症に対しては救助隊との連携により迅速に切断が可能であると考えられる。
著者
鶴田 啓亮 關 匡彦 井上 剛 至田 洋一 淺井 英樹 倉 知彦 中野 健一 川井 廉之 前川 尚宜 福島 英賢 奥地 一夫
出版者
日本神経救急学会
雑誌
日本神経救急学会雑誌 (ISSN:16193067)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.35-39, 2016-06-11 (Released:2016-09-01)
参考文献数
10

Cerebral Fat Embolism (CFE) is known as potentially fatal complication of bone fracture. Patients with CFE develop variable and nonspecific clinical manifestations like a headache and disturbance of consciousness. Brain MRI has been reported to be the most sensitive method for diagnosing CFE, but conventional MR sequence is not sufficient for detecting CFE because some kind of pathological changes shows similar findings. We report a 74-year-old female with unstable pelvic fractures and diffuse axonal injury from traffic accident subsequently associated with cerebral fat embolism successfully diagnosed using susceptibility-weighted imaging (SWI). Brain MRI performed on day 6 revealed multiple high intensity lesions on diffusion-weighted imaging (DWI) in gray-white matter interface which may indicate cytotoxic edema due to DAI. We confirmed the diagnosis of CFE to find the presence of numerous petechial hemorrhages located predominantly in the white matter on SWI.
著者
関 匡彦 瓜園 泰之 川井 廉之 福島 英賢 畑 倫明 奥地 一夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.714-718, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は77歳,女性.転倒による大腿骨骨折で近医の整形外科に入院加療中であった.入院翌日より腹痛が出現し,入院5日目の腹部CT検査で腹腔内に遊離ガス像を認めたため,消化管穿孔と診断され当院へ転院となった.来院時はショック状態であり,緊急手術を施行した.Treitz靱帯より200cmの回腸に穿孔部を認め,小腸部分切除を施行した.穿孔部のやや肛側の粘膜に2カ所の輪状潰瘍を認め,病理組織学的検査で,全層性に高度な炎症細胞の浸潤とともに,Langhans巨細胞と乾酪壊死を伴う肉芽腫を認めたため,腸結核による小腸穿孔と診断した.近年,結核菌感染症は増加傾向にあるため,高齢者の小腸穿孔の原因として腸結核も鑑別すべき疾患の一つとして考える必要があると思われた.