著者
佐伯 圭吾 車谷 典男 岡本 康幸 奥地 一夫
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.127-134, 2010-12-31

医療従事者が職場で経験する暴力被害は,精神的あるいは身体的に医療従事者に悪影響を及ぼし,医療の質を低下させる.医師が受ける暴力被害については,英国やオーストラリアのGeneralPractitionerや救急科医で調査されており,加害者側の危険因子としては飲酒や薬物中毒,精神疾患,被害者側の危険因子としては医療経験が短い,女性などが挙げられている.しかし,多くの調査は過去1年間の暴力被害の経験者割合を指標としており,その期間に繰り返し被害を受けた者のリスクが評価できていない.労働時間あたりの暴力被害発生率や発生率比を用いての危険因子の検討が今後の課題である.加えて,暴力による精神的被害としてPTSD症状やパーンアウト,職場満足度の低下が指摘されているが,妥当性が検証された質問票でそれらを定量化する研究が今後必要と考える.
著者
關 匡彦 福島 英賢 宮崎 敬太 北岡 寛教 川井 廉之 瓜園 泰之 奥地 一夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.819-822, 2015-09-30 (Released:2016-01-21)
参考文献数
11

症例は56歳,男性。自殺企図によりトイレ用洗浄剤(9.5%塩酸)500mLとアルコールを服用した。来院時の上部消化管内視鏡検査でRosenow分類Ⅲ度の腐食性食道炎を認め,胃は内視鏡が食道胃接合部を通過しなかったため,観察不能であった。腹部CTでは胃壁の肥厚を認めたが,腹水やfree airは認めなかったため保存的治療としたが,第2病日の腹部CTで腹水貯留,free airを認め,消化管穿孔の診断のもと緊急開腹術を施行した。開腹下に下部食道から幽門輪にかけて腐食壊死しており菲薄化していた。可能な範囲で壊死した胃を摘出したが,術後7日目の気管支鏡検査で食道からの腐食の深達と思われる気管の潰瘍を認め,突然の気道出血で死亡した。酸誤飲により高度のアシドーシス,Rosenow分類Ⅲ度の食道腐食に至り,多臓器不全,腹膜炎から死亡に至りうる症例では早期の手術療法を検討する必要があると考えられる。
著者
鶴田 啓亮 關 匡彦 井上 剛 至田 洋一 淺井 英樹 倉 知彦 中野 健一 川井 廉之 前川 尚宜 福島 英賢 奥地 一夫
出版者
日本神経救急学会
雑誌
日本神経救急学会雑誌 (ISSN:16193067)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.35-39, 2016-06-11 (Released:2016-09-01)
参考文献数
10

Cerebral Fat Embolism (CFE) is known as potentially fatal complication of bone fracture. Patients with CFE develop variable and nonspecific clinical manifestations like a headache and disturbance of consciousness. Brain MRI has been reported to be the most sensitive method for diagnosing CFE, but conventional MR sequence is not sufficient for detecting CFE because some kind of pathological changes shows similar findings. We report a 74-year-old female with unstable pelvic fractures and diffuse axonal injury from traffic accident subsequently associated with cerebral fat embolism successfully diagnosed using susceptibility-weighted imaging (SWI). Brain MRI performed on day 6 revealed multiple high intensity lesions on diffusion-weighted imaging (DWI) in gray-white matter interface which may indicate cytotoxic edema due to DAI. We confirmed the diagnosis of CFE to find the presence of numerous petechial hemorrhages located predominantly in the white matter on SWI.
著者
関 匡彦 瓜園 泰之 川井 廉之 福島 英賢 畑 倫明 奥地 一夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.714-718, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は77歳,女性.転倒による大腿骨骨折で近医の整形外科に入院加療中であった.入院翌日より腹痛が出現し,入院5日目の腹部CT検査で腹腔内に遊離ガス像を認めたため,消化管穿孔と診断され当院へ転院となった.来院時はショック状態であり,緊急手術を施行した.Treitz靱帯より200cmの回腸に穿孔部を認め,小腸部分切除を施行した.穿孔部のやや肛側の粘膜に2カ所の輪状潰瘍を認め,病理組織学的検査で,全層性に高度な炎症細胞の浸潤とともに,Langhans巨細胞と乾酪壊死を伴う肉芽腫を認めたため,腸結核による小腸穿孔と診断した.近年,結核菌感染症は増加傾向にあるため,高齢者の小腸穿孔の原因として腸結核も鑑別すべき疾患の一つとして考える必要があると思われた.