著者
見上 彪 松浦 善治 川喜田 正夫 児玉 洋 喜田 宏 永井 美之 小沼 操
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究はニュ-カッスル病ウイルス(NDV)の生態と病原性を総合的に解明することを目的とする。そこで病原性に深く関るNDVのヘモアグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN)ならびに膜融合蛋白(F)をコ-ドする遺伝子をリコンビナントワクチニアウイルス(rVV),リコビナント鶏痘ウイルス(rFPV)あるいはバキュロウイルス(BV)に捜入し,発現HNあるいはFの生物性状、免疫原性などの検討し,以下の成績を得た。1)。NDVのHNを発現するrVVを作出し,NDV感染防御におけるHNの役割を検討した。8×10^6PFUの生rVVを接種した鶏は,すべて強毒NDVによる致死的に耐過した。一方同量の不活化rVVを接種した鶏は,同様の攻撃により死亡した。攻撃耐過鶏はHNに対する抗体産生が攻撃前あるいは攻撃前あるいは攻撃後に認められたのに対して,非耐過鶏では認められなかった。2)。FPVのチミジンキナ-ゼ遺伝子内にVV由来のプロモ-タ-P.7.5制御下にNDVのHNを発現するrFPVを作出した。このrFPVはNDVのHNに特異的なウイルス中和活性のある単クロ-ン性抗体と反応し,SDSーPAGE上でNDV HNとほぼ同じ移動度を示すHNを産生した。3)。NDV宮寺株のHNをコ-ドする _cDNAを組みこんだBVは感染細胞表面にHNを発現した。このrHNはSDSーPAGE上でNDV感染細胞で発現するHNと同じ移動度を示し,ツニカマイシ処理により,そのアミノ酸配列から予想される分子量とほぼ同じ大きさとなった。4)。NDV F蛋白の全長あるいはC端のアンカ-部位を除いた遺伝子を組み込んだ。これらのうち強毒株由来の全長の遺伝子を発現したもののみ下蛋白の前駆体がF_1F_2サブユニットに解裂し,これらはジスルフィド結合でヘテロダイマ-を形成していた。